コタローは1人暮らしとは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『コタローは1人暮らし』とは、アパートで1人暮らしを始めた4歳の少年さとうコタローとその周囲の人々の交流を描いた作品。津村マミによる漫画を原作に、ドラマやアニメなどメディアミックスを果たしている。
マンガ家の狩野進が暮らすアパートに、ある日さとうコタローという4歳の男の子が引っ越してくる。コタローが1人暮らしをしていることに気付いた狩野は、さすがに放っておけずにそれとなく彼を見守るようになっていく。アパートの住人たちもここに加わり、コタローを中心とした人々の奇妙で暖かい日常は続いていく。

『コタローは1人暮らし』の概要

『コタローは1人暮らし』とは、アパートで1人暮らしを始めた4歳の少年さとうコタローとその周囲の人々の交流を描いた、津村マミによる漫画作品。
「ビッグコミックスペリオール」の2015年第7号から連載をスタートし、その独特な世界観の中で淡々と積み重ねられていくキャラクター同士の関係性が高く評価され、「電子コミック大賞 2018」を受賞。2021年には実写ドラマ化され、その翌年の2022年にはアニメ化されるなど様々なメディアミックスを果たしている。

マンガ家の狩野進(かりの しん)が暮らすアパートに、ある日さとうコタローという4歳の男の子が越してくる。どういうわけか親が一緒にいる様子もなく、コタローが1人暮らしをしていることに気付いた狩野は、さすがに放っておけず、「らしくない」と知人に指摘されながらも彼を見守るようになっていく。
アパートの住人たちも同様にコタローを気遣い、彼を中心とした心優しい人々のどこか奇妙で暖かい日常は続いていく。年の離れた友人としてコタローと接するようになった狩野は、やがて彼がDVを繰り返す父親から身を隠すために1人暮らしを強いられていることを知るのだった。

『コタローは1人暮らし』のあらすじ・ストーリー

隣人は4歳児

狩野進は、新人賞を取って以来鳴かず飛ばずが続いている売れないマンガ家。半ば惰性で描き続けたマンガも編集からダメ出しを食らうばかりで、筆を折ろうか折るまいか悩んでいた彼のアパートの隣の部屋に、ある日さとうコタローという男の子が引っ越してくる。
聞けば彼はまだ4歳で、驚いたことに親が一緒にいる様子もない。コタローが1人暮らしをしていることを知った狩野は、さすがにこれを放っておけず、「らしくない」と知人から指摘されつつも見守るようになる。

コタローは4歳にしてはしっかりした受け答えができる賢い子で、毎週弁護士の小林綾乃(こばやし あやの)が届けてくれる“優しい人からの寄付”を頼りに生活していた。一方で「とのさまん」というアニメが大好きで、そのアニメのキャラクターを真似た口調で話し、腰には常にオモチャの刀を差しているなど、歳相応の子供っぽいところもあった。

コタローの部屋とは反対側の狩野の隣人でキャバ嬢の秋友美月(あきとも みづき)。
強面だが子供好きで、コタローに気に入られたい一心で狩野とも張り合う田丸勇(たまる いさむ)。
アパートに暮らす人々もコタローのことを案じ、どうしてこの歳で1人暮らししているのか首を傾げながらも、それぞれの距離感で彼を気遣うようになっていく。

コタローの家庭事情

狩野たちがコタローを見守るようになってからしばらくして、青田学(あおた まなぶ)という男が1ヶ月限定でアパートに引っ越してくる。青田はコタローに妙に馴れ馴れしく接し、彼が普段どのように過ごしているのかを詳しく聞きたがる。
不審なものを感じて青田を警戒する狩野たちは、やがて彼が探偵であること、コタローの父親から「息子の居場所を突き止めてほしい」と頼まれて動いていたことを知る。コタローの父親はDVを繰り返し、ついに妻子に逃げられ、しかしそれでも彼らを自分の手の届くところに置こうと人と金を使ってしつこく追い回していたのだった。コタローが1人暮らしを強いられているのも、父親の執拗な追跡から身を隠すのが目的だったのだ。

これを知った狩野たちは、「いくら探偵として請け負った仕事とはいえ、コタローの今の居場所をそんなひどい父親に教えるつもりなのか」と青田を糾弾。すると青田は意外にもそれを否定し、コタローが無事に生活していることだけ伝えて居場所については誤魔化すつもりだと答える。青田もまたかつては親からのDVに苦しんだ過去を持ち、コタローに自分の姿を重ね合わせていた。
青田自身が壮絶な過去を打ち明けたことで、狩野たちは彼の言葉を信じることにする。やがて別れの日、青田が父親に頼まれてやってきたことを悟っていたコタローは、彼に1枚の手紙を託す。父に宛てたそれには、「父親を“悪者”にしてしまったのは自分が弱かったからだ」と反省の言葉が記されていた。コタローは今も再び両親と暮らすことを夢見ており、とのさまんの真似をしているのも「父親が暴力を振るおうとしても、今度は自分が止められるようになろう」と幼いながらに強さを求めた結果だった。

コタローが両親と再会できるかどうか、部外者である狩野たちにはなんとも言えなかったが、せめて彼がアパートにいる間は見守り続けようと彼らは想いを新たにする。

新たな出会いと別離

コタローが幼稚園に入園する日がやってきた。強くありたいと願うコタローは、他人に頼ることを良しとできず、1人で準備を進めて狩野たちには黙って入園式に望む。
しかし街行く人の姿で入園式があることを悟った狩野たちは、頼まれもしないのに幼稚園に押し掛け、自分たちはコタローの保護者の代理だと言い張って彼の姿を見守る。幼稚園で新たな友達を得て、様々に交流していく中で、コタローは「時に誰かに頼るのは決して弱さではない」ことを学んでいく。

一方、美月の近辺にもかつてない異変が起き始めていた。DV気質の過去の恋人が、復縁を求めて美月の周囲に現れるようになったのである。
これをどう解決すべきか、あるいは逃げてしまう方がいいのか悩む美月に、コタローは後者の道を選ぶよう助言する。美月がアパートに留まることにこだわる理由の中には「コタローを見捨てていけない」との想いもあったが、ただ困難に立ち向かうことだけが常に正解ではないと学んだコタローから諭されたことで、彼女は考えを改めてアパートを引っ越していく。

残酷で優しい大人の嘘

美月が引っ越してからしばらくして、彼女の暮らしていた部屋に武井すみれ(たけい すみれ)という女性がやってくる。武井はごく良識的な人物で、狩野はこれを“委員長的”と評する。一方で子供が苦手で、コタローを前にすると硬直する妙な癖があり、美月が去ってからどこか沈んでいたアパートに再び活気が戻ることとなる。
そんなある日、狩野はコタローから「行きたいところがある」と誘われる。向かった先は墓地で、コタローはそこにある和宮家と彫られた墓石の前で足を止める。これはコタローの家が代々受け継いでいる墓で、今日は自分が1人でもしっかりやっていることをご先祖に報告するために来たのだという。そうやってがんばっていれば、いつか母親とも再会できると、コタローは信じていた。

しかし狩野は、その墓に「和宮小夜梨」という真新しい文字が彫られていることに気付いてしまう。それが母親の名前であることをコタローに確認した狩野は、墓石の側面に立ち尽くしてそこに彫られた文字を彼に見せまいとする。コタローが毎週弁護士から受け取っている“優しい人からの寄付”も、実際は母親の残した保険金なのだった。
墓参りに来た仲のよさそうな親子を見たコタローから、「いつか自分は母親と会えるだろうか」と問われた狩野は、それが残酷な嘘でしかないことを理解した上で「会えるよ」と言葉を返す。

アパートに引っ越して以来、誰よりも親身になってくれた狩野が言うのなら間違いない、自分はその言葉を信じると喜ぶコタロー。次に墓参りする時も必ず自分に声をかけるよう約束させると、狩野はコタローと連れ立ってアパートに戻っていく。
アパートの住人に見守られながら、コタローの日常は続いていく。彼が狩野の嘘に気付くのがいつになるのかは、今はまだ誰にも分からない。

『コタローは1人暮らし』の登場人物・キャラクター

さとうコタロー

CV:釘宮理恵
演:川原瑛都

「アパートの清水」に引っ越してきた4歳の男の子。ドラマ版のみ5歳という設定になっている。203号室で1人暮らしをしており、「とのさまん」というアニメの大ファン。その主人公の「わらわ」や「おぬし」といった独特の口調を真似し、腰には常にオモチャの刀を差している。
料理や買い物など、基本的な家事は一通りこなせる。ティッシュの成分にはこだわりがあり、多少高くても良いものを選ぶようにしているが、これは「いざという時に食べられる」ことを想定しているため。

父親のDVから逃げるために名字を変えている。夫との関係の悪化が原因なのか、母親も決してコタローの味方というわけではなく、彼の記憶の中の姿によれば育児放棄状態だったようで、ティッシュを食べて飢えを凌いだのもこの頃のこと。
母親はすでに死去しており、“優しい人からの寄付”の正体も弁護士に預けられた彼女の保険金だが、その事実はまったく知らない。

狩野進(かりの しん)

CV:増田俊樹
演:横山裕、田中温人(中学生時代)

「アパートの清水」202号室の住人。マンガ版、アニメ版は31歳だが、ドラマ版では35歳の設定となっている。
面倒くさがりでズボラな性格。何人もの女性と交際しては別れることを繰り返しており、真人間とは言いがたい。一方で根はかなりの善人で、隣の部屋に引っ越してきたコタローを放っておけず、何かと面倒を見るようになる。

数年前に新人賞を取ってデビューしたマンガ家だが、その後は作品のことごとくにボツを食らい、鳴かず飛ばずの状態が続いている。編集者によれば、「ネタはおもしろいが絵柄が古いので、そこを改善してほしい」とのことなのだが、なかなかうまくいっていない。
コタローと交流する中で、次第に互いを年の離れた友人として認識していく。一方、コタローの母親がすでに死んでいることと、コタローがそれを知らないことを理解した時は、いつか真実が明らかになった時に憎悪を向けられることも覚悟で「いつか母親に会える」と嘘をつくなど時に大人としての責任を果たすこともある。

秋友美月(あきとも みづき)

CV:早見沙織
演:山本舞香

「アパートの清水」の201号室を借りている女性。職業はキャバ嬢。ドラマ版では25歳という設定になっている。
物語開始当初、コタローが1人暮らしをしていることを知って誰よりもそれを案じる。自分が仕事の都合でアパートに居られない時は代わりにコタローを見守るよう狩野を焚きつけることが多く、後に2人が年の離れた友人となっていくきっかけを作った。

異性関係では押しに弱く、DVを繰り返す元カレからなかなか縁が切れずにいる。一度"見守る"と決めたコタローとの縁が切れてしまうこともあって、元カレと決別するためにアパートを出ていくことには否定的なスタンスを取る。しかし幼稚園などで新しい友人と交流して様々な学びを得たコタローから、「時に正面から問題に立ち向かうことがベストの方法ではない」と諭されて考えを改め、後のことを狩野たちに託して引っ越していった。

田丸勇(たまる いさむ)

CV:諏訪部順一
演:生瀬勝久

「アパートの清水」の102号室の住人。ドラマ版では52歳となっている。職業は自由業だと自称しているが詳細は不明。
その強面と荒っぽい言動もあって一見怖そうに見えるが、中身は大の子供好きで、コタローのことも「1人暮らしを心配して」という以上に単純に「仲良くしたい」と考えてあれこれと面倒を見る。アパートの中でコタローから一番信頼されている狩野に対してはストレートに羨ましがり、隣人というアドバンテージを自分に譲るようたびたび要求している。

離婚歴があり、自分の息子と自由に会えない状況にある。子供好きなのはその寂しさを紛らわせたいという思いもあるようだが、裁判所の指示には素直に従っており、息子が勝手に会いに来た時は「それはルール違反だ」とあえて厳しく伝えて元妻の下に帰るよう諭している。

YAMAKUZIRA
YAMAKUZIRA
@YAMAKUZIRA

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