来世ではちゃんとします(来世ちゃん)のネタバレ解説・考察まとめ

『来世ではちゃんとします』とは、漫画家・いつまちゃんが『グランドジャンプ』にて2018年2月7日より連載を開始した、CG製作会社に勤める性的に拗らせた5人の男女の日々を赤裸々に描く4コマコメディ漫画である。5人だけでなく様々な事情、性指向を持った人々が登場し、共感できる面も多々あるのが作品の魅力となっている。同社の『グランドジャンプめちゃ』『グランドジャンプむちゃ』にも掲載されている。2020年1月9日から23月26日の間にテレビドラマが放映され、2021年8月12日より2期も放送された。

『来世ではちゃんとします』の概要

『来世ではちゃんとします』とは、漫画家・いつまちゃんが『グランドジャンプ』にて2018年2月7日より連載を開始した、CG製作会社に勤める性的に拗らせた5人の男女の日々を赤裸々に描く4コマコメディ漫画である。略称は「来世ちゃん」。2020年1月9日から2020年3月26日の間にテレビドラマが放映され、NETFLIXの国内総合デイリーランキングで3位に入った。2021年8月12日よりドラマ2期も放送された。
承認欲求と寂しさに振り回されて5人のセフレを抱える性依存気味の大森桃枝、恋愛や結婚について周囲からかけられる圧力が辛いアセクシャルBL好き美人ギャルの高杉梅、ヒモの素質があるメンヘラ製造機なイケメン松田健、彼女を寝取られたトラウマから処女しか愛せなくなったセカンド童貞の林勝、風俗嬢にガチ恋してしまった檜山トヲル。同じCG製作会社に勤める5人のそれぞれが性的に拗らせた日常を描いているが、彼ら以外にも様々な事情、性指向を持った人々が登場するため、共感できる面も多々あるのが作品の魅力となっている。

『来世ではちゃんとします』のあらすじ・ストーリー

スタジオデルタの面々の日常

スタジオデルタの面々(左から大森桃枝、高杉梅、檜山トヲル、林勝、松田健)

都内の小さな映像プロダクション・スタジオデルタには、セフレ五人を抱える性依存気味の大森桃枝(おおもり ももえ)、恋愛や結婚についての周囲からの圧力が辛いアセクシャルBL好きの高杉梅(たかすぎ うめ)。そしてメンヘラ製造機なイケメン松田健(まつだ けん)、処女しか愛せなくなったセカンド童貞の林勝(はやし まさる)、ソープ嬢にガチ恋してしまった檜山トヲル(ひやま トヲル)の五人が働いていた。

ある日、梅は桃枝を連れてレズビアン系のイベントに赴く。男性との恋愛は無理でも、女性になら恋愛感情を抱けるだろうかと思ったのだ。結果梅は女性でも無理との結論に達したが、女性に口説かれて興奮した桃枝は、逆に性的な目で見られたら男女なく興奮するとの結論に達するのだった。

彼女が欲しい林は、マッチングアプリで栗山凪(くりやま なぎ)という女の子とマッチングする。可愛いうえに優しく、異性と付き合ったこともないという理想通りの相手だったが、彼女は女装した男だった。
会う前にその事実を知らされ悩むも、結局林は凪に会う事にする。

実際に会った凪は理想通りの可愛い女の子にしか見えなかったが、男であるという事実に林は心がついていかない。それでも流されるままに家に連れ込まれ、強引にフェラチオされてしまう。楽しかった時間を過ごした林は、悩みつつも凪に「来週会える?」とLINEを送る。林の顔と身体がドタイプだった凪はガッツポーズを決めるのだった。

本命のセフレは彼女持ち、自分はセフレ止まり、そんな状況に桃枝は疲れていた。彼氏どころか好きな人ができたことがなく、同人仲間が家庭を持ち始めて焦燥感は覚えるものの、どうすればいいのかわからず梅は疲れていた。意気投合した二人は突然富士山に登ろうと計画を立てる。

ツアーの山小屋で修学旅行のような夜を過ごす。将来の事を考えず楽しいまま現状維持できたらいいのにと言う桃枝に、梅は同意するのだった。翌朝、酸素の薄さに苦しみつつ急斜面を登っていく。ようやく辿り着いた山頂から見える朝日はとても美しかった。二人は「多少の挫折や失敗より登山の方が辛いと知れて良かった」などと、身も蓋もないことを言い合うのだった。

真夏の休日出勤中、桃枝と松田はエレベーターで一緒になる。
すると、エレベーターが停電で止まってしまう。スマホは圏外、休日でビル内に人もほとんどいなく、二人は助けを待つことになった。4時間経っても助けは来ず、あまりの暑さに危険を感じる桃枝だったが、何故かその状況で彼女はムラムラしていた。そして、松田もおっぱいでかいなと考えていた。

危うく二人は事に及びかけるもぎりぎりで理性を保った桃枝は、松田を引き剥がした。電気が復旧し、松田が助けを呼んで二人は無事に助かる。互いに「あれはヤレたな」と思いつつ、職場の同僚だしこれでよかったと思い直すのだった。

再び林は凪に会う。会うなり林は悪気なく、凪という名前は本名ではないだろうと言い出した。家に行ったときに見えた卒業アルバムの情報などをヒントに、SNSのリア垢を割り出したのだ。
本名は雄次郎だよなと聞く林に、凪はキレる。林は必死に弁解するものの、会うのが二回目の相手に対して非常識だと凪は怒る。その様子が元カノに似ており、林は妙に照れてしまうのだった。

それぞれのクリスマスと年末年始への向き合い方

クリスマスがやってくる。
檜山は年間最も性行為を行う人が多いとされる、クリスマスイブの21~27時にガチ恋中のソープ嬢、心に会えるよう予約を取っていた。

一方、他の面々は憂鬱さを抱えていた。梅は予定があるのが当然の空気に苦痛を感じ、桃枝はセカンド女の哀切を突き付けられる。林は結局彼女ができなかったと嘆き、松田はこの時期に女の子に会うのはだるいから、急に仕事が入ってほしいとぼやいていた。

すると、当日本当に急な仕事が入ってしまう。予定もなく気楽な檜山以外の四人だったが、檜山には予定があると知り、結束して全速力で仕事を終わらせた。結局予定が空いた林は凪に会いに行き、梅と桃枝は二人で楽しくクリスマスを過ごすのだった。

松田は合コンの人数合わせのため、もう一人誘って来てくれないかとセフレに頼まれる。断ろうとしたが、林が一度は合コンをやってみたかったと言ったので、林を誘って参加することにした。

松田は合コンに不慣れな林を積極的に女の子にアピールする。松田が自分を立ててくれることに感動する林だったが、女の子の関心は何故か松田に向いてしまう。後日、結局合コンに実りがなかったとぼやく林は、松田が合コンにいた女の子と名前で呼び合う現場を目撃する。「…もしかして、ヤッた?」と聞く林に、松田は無言を貫き通すのだった。

年末、梅は焦っていた。冬コミに参加するのだが、売り子が確保できないのだ。ダメもとで桃枝に売り子を手伝ってくれないかと頼む。快諾した桃枝は当日、様々な人やコスプレの様子を見て楽しむ。
無事にコミケも終了したその夜、帰宅した桃枝はバニーガールのコスプレでセフレのBくんと姫納めに励んだ。
一方、梅は結婚をせかされる明日からの帰省のことはひとまず忘れて自分の新刊の感想のエゴサをしつつ、購入した同人誌を読み漁るのだった。

同じ頃、林は実家に帰省していた。結婚はまだかと家族に言われ、孫を抱けるまで長生きできればという祖母の言葉に、林は今すぐモテたいと心で嘆くのだった。
年明け、その話をされた松田は「結婚なんて自由だ」と林に同情するが、林は「家族だから期待も心配もするだろう」とさらりと言い切る。
松田は林がどれだけ愛されて育ってきたかを痛感させられるのだった。

一方、檜山は『別冊少年ギャンギャン』から漫画執筆のオファーを受けていた。漫画家になるのは夢だったが、現在描いている広告漫画は収入もよく拘束時間も短い。連載となれば心に会いに行く時間も金もなくなるかもしれないと、檜山は悩む。
松田や林にも相談しつつ、結局心にもその話をしてしまう。後で後悔されても困るが本指名が減っても困る心は、結局檜山をおだてて全部を両立させる覚悟を決めさせた。

残業上がりの深夜、松田と桃枝は一緒に帰宅していた。雑談をする中で互いにうっかり初めて会う異性と距離を詰める要領で会話してしまい、二人で松田の家に行くことになる。
同じコミュニティの異性に手を出すとろくなことにならないという経験があった二人は、男女の友情を証明してやろうと心を固めるのだった。

二人は同じ布団で背を向けて寝ようとしたものの、つい視線を合わせた瞬間ムラっとしてしまう。しかし、桃枝がしりとりを始めたことでそういった雰囲気は消えた。我慢せずこのまま素直に交わったら気持ちいいだろうなと二人とも思いながら、睡魔に負けて眠りにつく。

翌朝、何事もなく松田の家から帰宅した桃枝だったが、その後すぐAくんに会いに行く。松田も彼女になりたがっているセフレの桜木亜子(さくらぎ あこ)を呼び出してしまうのだった。

平坦な日常も少しずつなら変わるもの

スタジオデルタに新規アニメの仕事が入ってくる。
面々は身構えていたものの、思っていた以上にやりやすい仕事で何とかこなしていた。だが檜山だけは今回の仕事の納期と、『少年ギャンギャン』に提出するネームの締め切りが丸被りしていて頭を抱えていた。

美少女が出てくる設定のネームを提出していたのだが、担当編集から内容がありふれていると言われ、修正の提案をされる。泣く泣く檜山はネームを修正するが、再提出したネームに対し、編集長からの新たな修正案を担当編集経由で告げられる。またかと思いつつも、美人の担当編集に弱い檜山は大人しくネームの修正に入るのだった。

林の家で松田と林が夜通しホラー映画を見た翌日、凪が林の家を訪ねてくる。
林は松田に凪の話を、凪に松田の話を散々しているので、二人は初対面ではあるものの互いのことは認識していた。二人は林を落とそうと意気投合する。
今日中にキスは行けそう、と意気込む凪だったが、兄から家に向かっているとLINEが入り慌てて帰宅してしまうのだった。

桃枝はセフレのBくんに、一緒に大阪旅行に行かないかと誘われる。
桃枝は喜ぶ一方で、長距離出張デリヘルかと内心で怒る。だがUSJに行こうとの言葉につられ、大阪旅行を承諾した。そしてBくんは本当に桃枝をUSJに連れていってくれた。
BくんとUSJに来られて幸せだと告げる桃枝に、今度は彼氏と来なよとBくんは言い放つ。セフレはセフレだと分かっているのに、と桃枝は落ち込むのだった。

林はある日、アパートの隣の部屋から落ちた洗濯物を拾い、凪と共に隣の部屋に届けに行った。隣に住んでいたのは、心と同じソープで働く山田梢(やまだ こずえ)だった。一見快活で可愛らしい梢に林が見惚れたことに気付き、凪は嫉妬する。

それ以降、梢は林に田舎から届いた野菜をお裾分けするようになる。長年支えてくれた彼女を捨てる芸人みたいだと松田に非難されるも、凪が男であるということが引っかかって先に進めない林は梢に惹かれていく。だが林は梢がソープ嬢であることを、風呂屋で働いていると梢自身に言われても気付けないままでいた。

スタジオデルタの社員旅行

スタジオデルタの面々は、社員旅行で千葉に行くことになる。千葉出身の林の勧めで、メインの目的地は牧場に行くこととなった。

牧場が楽しみな梅と松田。運転免許を持っておけば活躍できたのにと悔やむ林。房総湾の観光をメインにしたかった桃枝。漫画が描けないと焦る檜山と、旅行に対する反応はそれぞれだったが、面々は牧場で楽しく過ごした。

一行は予約していた旅館に向かい、温泉に入り豪華な夕飯を味わった後、近くの浜辺で小さな宴をすることになる。ぐだぐだと飲酒して過ごした後、松田と桃枝は二人で買い出しにコンビニに向かった。
酒で理性が弱まっている二人を梅が心配していた通り、松田と桃枝は酔った勢いでキスしかけていた。だが唇が重なる寸前、帰りの遅い二人を心配した檜山が桃枝の携帯を鳴らしたことで、二人は我に返って旅館に戻った。

何か起きかけたことを察した梅は、桃枝に付き合えば良いのにと嗾ける。誰かの一番に選ばれたことがない桃枝は、一線を越えたら元の関係には戻れない、と仲の良い同僚のままでいることを選ぶ。
一方の松田には、心を病んでしまったセフレからの連絡が入っていた。元々明るかった女性も、自分と関係を持つと悪い方向に変わってしまう。今日は手を出さなくてよかったと松田は安堵するのだった。

メンタルが不安定期に入った梢は、店に連絡も入れられないまま引きこもり続けていた。部屋の片付けもできなければ風呂に入ることもできない。ある夜、不眠の辛さに耐えかねて運動しようと外に出たところ、林とぶつかって動けなくなってしまう。林は彼女を部屋に運び込むが、彼女の臭いと部屋の汚さに引く。

だが調子が悪くて仕事にも行けていないという彼女の嘆きを聞き、困ったときはお互いさまだと告げ、彼女の部屋を片付けるのだった。

流行り病が変えるもの

人と真面目に向き合おうと思い始めた松田は、セフレの亜子が病み始めたことに気が付いていた。会社の規定で一週間の代休をとる事になり、誘われるままに亜子の家を訪れる。

行為の後、熟睡する松田のスマホを亜子は見てしまう。
休みだというのを教えてくれなかったこと、元カノの華(はな)と明日会う約束をしていることを知ってしまった亜子の中で、何かが壊れた。

翌朝松田が目覚めると、背中で両方の手首を縛られていた。刺されると思った松田だったが、先に起きていた亜子は泣きながら朝食について尋ねてきた。
まだ話は通じると思ったが、華は誰かと問われ、その程度のきっかけで壊れるほど追い詰められていたと松田は気が付く。このままではいけないと思った松田は、華にも会わず休みが終わるまで一週間ここにいるから、それでお別れしようと告げた。

松田を家に置いて出勤した亜子は、帰ってきても松田が家にいることに泣いてしまう。亜子はちゃんと別れるので今だけ彼女にしてほしいと頼み、松田もそれを承諾した。
一緒に夕飯を食べたり、電話の相手に彼女といると松田が答えたり、亜子は幸せだった。最後の日、亜子の望みで二人は遊園地に向かう。しかし亜子は、松田の彼女になって遊園地に来るのが夢だったのに苦しいと涙をこぼすのだった。

松田が亜子の家を出る直前、やっぱり別れるのは嫌だと泣きつく。松田は約束通り別れなければ、監禁されていたと警察に話すと告げた。そのうち他に好きな男ができるよと言い、松田は亜子の家を後にするのだった。

桃枝が拾ったインコを連れてスタジオデルタに入ってくる。
水と餌を与えて警察に迷子情報を確認しに行くも、情報はなかった。スタジオデルタで飼い主が見つかるまで保護できないかと話し合うが、檜山のくしゃみが止まらなくなったため、人の熱に飢えていた松田が預かることになる。しかし、松田はトッテちゃんと名付けたそのインコに悪戦苦闘するのだった。

一週間の休みが檜山の番になった。檜山は心と一緒に旅行に行きたいと彼女に頼み、85万円のウォーターベッドを買うことを条件に承諾されていた。旅費も併せて100万円かけなければデートもできない。それでも金で時間がもらえて高嶺の花の隣にいられる。手が届くだけましだった。

旅行中ずっと心には店と同じにこやかな笑顔が張り付いていた。一緒に旅行に来れてとても幸せなのに、心が満たされていないと幸せとは思えないのだと、檜山は実感するのだった。

コロナウイルスが流行り始め、スタジオデルタもテレワークに移行していた。
代休は梅の番となり、彼女は山に登ることにした。山菜をイケメンに擬人化した『山菜男子』というコンテンツにはまっていたのだ。

誰もいない山を楽しく登っていた梅だったが、一人頂上から転げ落ちてしまう。その際に足を折った上に、スマートフォンの電池は切れていた。
同人仲間に翌日になっても連絡がなければ通報してもらうよう頼んでいたため、寒さと痛みと空腹の中、何とか夜を超える。しかし、同人仲間が山の名前を忘れていたため捜査が難航し、結局救助が来たのは五日後だった。
栄養失調と足の骨折、途中生で食べた山菜で腹を壊したため、梅は一週間の入院を余儀なくされるのだった。

入院中、梅は偶然同じく入院していた取引先の会社の白木史敏(しらき ふみとし)に出会い、お茶に誘われる。
白木が苦手だというのに、断れなかった自分を悔やみながらカフェに向かうが、そこにいたのは美青年、伊森レオポルト(いもりれおぽると)だった。

どうやら彼は、白木の家で長いこと居候をしているらしい。あからさまに梅に嫉妬をする伊森を見て、BL好きの血が騒ぐ。
伊森が白木と腕を組んでカフェから帰るのを目撃した梅は、情熱にかき立てられるまま創作BLを徹夜で書き上げたのだった。

自粛中でセフレと会えない桃枝は欲求不満だったが、同時に一切連絡がないEくんのことを心配していた。
他のセフレと違い、自分と同じで学生時代モテなかったEくんに桃枝は親近感を抱いていたのだ。

Eくんは投資家であるためウイルスの打撃が大きいのではと案じていたところに、会いたいとLINEが届く。これは断れないとEくんを部屋に招く。傷心している彼を慰めたい桃枝だったが、セフレ女からの慰めは惨めに感じられるだろうと判断し、この家にしばらく住まないかと提案する。
案の定そこまで落ちぶれていないと怒るEくんに、桃枝はEくんを独り占めするチャンスだと思って口説いていると言った。答えが曖昧なまま桃枝はEくんの隣でテレワークを始めたが、そんな桃枝にEくんは付き合おうかと聞いてきた。

突然の彼女昇格のチャンスに迷う桃枝だったが、冗談を言ってうやむやにする。
Eくんを人として尊敬しているが、恋はしていない。それはEくんも同じだ。今回の株価暴落で美女たちもお金も失って不安定になったから、金に比較的無頓着でずっと自分を肯定し続けてくれるパートナーもありだと心が動いただけだ。
その意味で自分とEくんはやはりよく似ていると確信しながら、同棲を始めるのだった。

流行り病が結ぶもの

コロナウイルスに落ち着く兆しが見え、スタジオデルタの面々も徐々に出社し始めていた。

Eくんと同棲した桃枝は、割と穏やかで幸せな日々を送っていた。だが景気の回復に伴い、Eくんに女の影が見え始める。少し傷付く桃枝だったが、桃枝にも他のセフレからの誘いが入り始めていた。
他のセフレに会いたいが、会えばEくんが傷付く、でも気付かれないようにすることもできる。そう思ってしまう桃枝は、自分はこんなにずるいから幸せになれないのかと落ち込むのだった。

ワクチンが開発され株が好転し、爆発的な勢いでEくんは経済力を回復させた。
すると、Eくんの元に美女たちからの誘いがLINEで来ているのを桃枝は見てしまう。一応は断っている様子のEくんにほっとする桃枝だったが、その中にまだ返信していないものがあるのを見てしまった。
Eくん好みの派手な美女からの誘いのLINEだ。桃枝はEくんが会いに行かないことを祈るものの、帰宅した家は真っ暗だった。涙を流す桃枝の元にEくんは一人で飲んできたと帰宅するが、その顔は罪悪感に満ちていた。

それ以降、Eくんの外出が増えた。彼女になると言わなくてよかったと安心しつつ、向こうが浮気しているのだから構わないだろうと、桃枝も仕事と嘘をついてセフレのBくんを誘い出す。
帰宅してもEくんが桃枝の嘘に気付いた様子はなかったが、Eくんはタワマンに戻ると言い出した。

桃枝は「他の女の子といい感じになって同棲しているのがネックになってきたの?」と問うも、返ってきたのは「ごめん」の一言だった。桃枝の方が優しかったのにと泣く彼に、Bくんとホテルに行ったことは告げず、桃枝はその背中を抱きしめた。

Eくんが桃枝の部屋を後にする。狭い部屋も一人になると広いとぼやく桃枝のもとに、「ベッドの下にあるやつ お前のだから」とEくんからLINEが届く。ベッドの下から出てきたのは、かつて桃枝が欲しいと言い、そのクラスはハイクラスの女にしかあげないと断られていたエルメスの高級ハンドバッグだった。桃枝は何も言えないままバッグを抱きしめた。

スタジオデルタに、泊まり込みになりそうな案件が入ってくる。
トッテが心配な松田は、トッテを再び職場に連れてくることになった。それなりに懐き、自分を必要としてくれるトッテを松田は大切にするようになっていた。

休憩時間、トッテが何かを喋り出す。明らかに電話番号だった。
これで前の飼い主に返せると喜ぶ林と檜山に、トッテと離れるのが耐えられない松田は何も言ってないと言い張る。林と檜山が説得するも、松田は聞こうとしない。そこに「林くんたちの言う通りだよ!」と叫び、桃枝が電話をかける。しかし、桃枝は存在しない番号だったと告げる。

林と檜山、梅はよかったなと松田に言うが、それは桃枝の嘘だった。松田は一度その番号に電話したことがあり、相手の名乗る声を聞いて咄嗟に電話を切ってしまっていて、罪悪感を抱えていた。桃枝に優しくされて勇気が出たと、桃枝の傍で番号に電話をかけ、トッテを飼い主の元に返すのだった。

相変わらず引き籠っていた梢のもとに、心から電話が入る。誰も怒っていないので仕事に戻ってくることを勧める内容だった。
だが外に出るのが怖い梢は林に相談をする。林は復帰の日に職場まで送ると約束を取り付け、再び梢の部屋を片付けた。林にアプローチし続けている凪は、林が梢に惹かれているのが手に取るように分かり面白くない。結局女の方がいいのかと落ち込んでしまう。

梢の出勤日がやってくる。緊張すると言う梢に、危なっかしくて馬鹿みたいにまっすぐでピュアな彼女が好きなのだと、林は自覚する。だが到着した職場は、ソープランドだった。しかも同時に、心の元に通っていた檜山が出てきて、入り口で遭遇してしまう。同僚にソープ通いがばれたと絶望する檜山だったが、林は梢がソープ嬢であったことに衝撃を受け記憶を飛ばしており、檜山と遭遇したことなど覚えてもいないのだった。

トッテがいなくなり、松田は人恋しさのピークに達していた。一方桃枝も、Eくんとの思い出がある部屋で暮らすことに耐えがたい寂しさを覚え始めていた。スタジオデルタの面々を飲みに誘う桃枝だったが、その日予定が空いていたのは松田だけだった。

寂しさのピークに達していた二人は、職場の同僚をセフレにはできないが恋人なら良いのではと血迷い始めていた。結局飲み過ぎた松田が吐いたことで何事もなく終わったが、今までのように二人とも同僚に手を出すのはまずいと思い直せなくなっていた。

そんな中、桃枝は恋をしているセフレのAくんに、最近結婚の話が出てきて面倒だという話をされ大きなショックを受ける。
Aくんに彼女がいるのは本人に告げられて知っていた。早かれ遅かれ別の女を選んで自分から離れていくのだから、そのたびに新しい男を作ればいいと思っていた。だがこんなに苦しいことを繰り返したくないと腹を決め、「今までありがとう」とLINEを送り、Aくんをブロックしてそのまま道端に泣き崩れた。

そこに偶然松田が通りかかる。ただの失恋と言いつつ桃枝は泣くのをやめられない。そんな桃枝を抱き寄せた松田は「俺じゃだめ?付き合おう俺と」と咄嗟に言ってしまうのだった。

『来世ではちゃんとします』の登場人物・キャラクター

スタジオデルタ

大森桃江(おおもり ももえ)

本作の主人公の一人。27歳。思春期は太っていたことからまともな恋愛ができず、5年付き合って結婚を考えた彼氏に振られたショックでアプリで出会った男との性行為に走るようになり、性依存気味になった。定期的に続いているセフレは現在5人おり、その中のAくんに恋をしている。誰かの本命になりたい欲求は強いが、好きな男の一番になれた経験がないため、セックス以外で初対面の男性と仲良くなる手段がわからなくなっている節がある。梅と仲がよく、性的なことが苦手な梅に自分の話を聞いてもらうためにしばしば「BLに置き換えて考えて」と発言している。片付けが下手で部屋が汚い。占いが好きで、月に二回ほど40分コースに通っている。だが占い師に聞く内容はセフレたちの気持ちと現状であるため、「他人の気持ちばかり気にしているから幸せになれないのでは」と梅には思われている。婚活も始めたが、全く好意を抱けそうにない男性と会うのを苦痛に感じている。

高杉梅(たかすぎ うめ)

本作の主人公の一人。27歳。主に背景とデザリングを担当している。自身の恋愛に興味が持てないアセクシャルで、BLが大好き。美人故に周囲の「彼氏がいないのか」「結婚しないのか」という圧力が辛い。学生時代、それまで一緒に遊んでいた友人たちが突然男と女に分かれていき、男友達と一緒に遊ぶだけで「男好き」と言われる状況に付いていけない中、長年友人だと思っていた男子に突然告白され、断って以降友人付き合いも完全に断たれてしまったのがトラウマ。『宇宙貴公子マジマジ☆プリンス』というアニメで同人誌を製作している。推しは霧島ヤマト。桃枝とは仲がよく家に泊めたりもするが、性的なことに関してはもう少し隠してほしいと思っている。仕事の打ち合わせ中に容姿を褒めてくる白木のことが苦手。アリを飼っており、最近アクアリウムにも手を出した。檜山の漫画のネームを読んで感動し、「自分と違ってあいつは何者かになれる奴だったのだ」と尊敬と羨望の念を抱いている。

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