黄金バット(漫画・映画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『黄金バット』とは、原作:鈴木一郎、作画:永松健夫の日本最古のスーパーヒーローであり、その縦横無尽の活躍を描いた作品シリーズである。『月光仮面』や『ウルトラマン』に『仮面ライダー』といった、あらゆる日本ヒーローの原点となる存在。
初出は昭和5年頃の紙芝居とされており、あまりに歴史が深いため発表される時代ごとに設定が異なる。
ただし「黄金の骸骨が、正義という概念を具現化した存在として描かれ、勧善懲悪を行う」とする点は、いつの時代も共通して受け継がれている。

『黄金バット』の概要

『黄金バット』とは、昭和5年(1930年)頃に登場した日本で最も古いスーパーヒーローであり、その活躍を描いた作品シリーズある。
黄金バットは、己の肉体一つであらゆる困難を乗り越え、どんな強敵をも打ち倒す無敵のヒーローとして描かれる。およそ苦戦する事がなく、万が一敵の罠にかかっても、たちどころに危機を脱して正義を示す。

困っている者の前に現れ、その者の力となる。善良な者が苦しめられていれば、颯爽と現れ悪を成敗する。しかし、自身はどれほどの苦難に見舞われようが「ハハハハ……ハハハハハハ!」と笑って苦しむそぶりすら見せない。
人間、特に日本人が理想とする「完全無欠」の存在であり、その意味においてもあらゆる後続のヒーローより上位に位置する存在だ。

初出は前述の通り昭和5年頃の紙芝居とされているが、原作者については、戦前の日本が著作権遵法や子ども向けの作品を保存するという概念が希薄であった事もあり、長らく不明とされていた。
しかし、残っているいくつかの資料から原作者が判明し、それらによれば脚本を鈴木一郎(本名:鈴木平太郎)とし、絵師が永松健夫であるとされた。

あまりに歴史が深いため、発表される時代ごとに設定が異なるのも特徴だ。
ただし「黄金の骸骨が、正義という概念を具現化した存在として描かれ、勧善懲悪を行う」とする点は、いつの時代も共通して受け継がれている。

紙芝居から始まり、映画、テレビドラマ、アニメ、小説に発展した、日本サブカルチャーの源流たる作品のひとつである。

『黄金バット』のあらすじ・ストーリー

『黄金バット』(紙芝居)

初出は昭和5年(1930年)頃。
ただし、この世に現存している作品が少なく、特に『黄金バット』の全盛期であった戦前の作品は、その多くが戦火によって焼失してしまっており、詳細不明となっている。
また、紙芝居は口伝で作品が受け継がれる世界である事と、戦前の時代は著作権の外見が希薄だったために、語り部の数だけ異なる設定・物語の『黄金バット』が存在していたとされている。
現存している作品については、戦後のものが多く、ナチス残党や怪獣の魔の手から弱者を守る、といったような物語が多い。

『黄金バット 摩天楼の怪人』(映画1作目)

昭和25年(1950年)作。
記念すべき『黄金バット』の映像化第一号作品。若き日の美空ひばりが出演している。
ただし、フィルムが失われてしまっており、もはやこれを閲覧する手段がない幻の作品となっている。
以下は当時の視聴者の記憶や、残っているポスターやブロマイド等の資料から明らかになっているシナリオである。

悪の科学者、ドクトル・ナゾーが現れた。
彼の狙うものは、水爆(核兵器)さえ圧倒する爆弾を製造せしめる「ウルトロン超原子」なる物質である。
ナゾーは犯罪結社QX団を従え、このウルトロン超原子の発見者である尾形博士の身に魔の手を伸ばした。

これに立ち向かうは、黄金バットである。
不適な笑いと共に大空から現れる黄金バットは、悪を許さない。
5年前の原爆で日本は大変な思いをしており、このような悪魔の兵器を再び創り出すなどは断じて認められぬと、サーベルを振るう。

無敵の黄金バットの前に、多勢でしかけるナゾーもかなわない。
「正義と自由を護る者! 快傑黄金バットの味方あり!」と、黄金バットは正義を示した。ナゾーは負けて去っていく。
こうしてウルトロン超原子の悪用は避けられたのであった。

『黄金バット』(映画2作目)

昭和41年(1966年)作、モノクロ映画。主演に千葉真一が選ばれている。
また、本シリーズとして初めて海外へ輸出された作品でもあり英題は『Phantaman or Golden Ninja』である。見ての通り「Ninja」とされてしまっているが、断じて黄金バットは忍者でない。
この作品より、黄金バットの姿「マントを羽織った黄金の骸骨」というスタイルに変更された。

惑星イカルスが地球への衝突コースをとっていた。
ある日、天体観測を趣味とするアキラ少年がこの事を発見した。直後にアキラは謎の男達によって連れ去られてしまうも、彼が連れて行かれた先は国連秘密機関パール研究所であった。謎の男達はその所員だというのだ。
なんとも強引な招待の仕方だが、研究所の所長を務めるヤマトネ博士は、アキラを仲間にしたいと彼を誘った。ヤマトネの申し出を受けるアキラ。

やがて、研究所ではイカルスがもし衝突すれば、地球は破壊されてしまうというデータを研究からはじき出していた。そして人類滅亡の危機を回避するために、このイカルス破壊するための超破壊光線砲を建造していた事が明らかになる。
だが、その光線砲に必要な特殊レンズを製造するための原石がなく、日の目を見ていないというのだ。そこでヤマトネはアキラを連れて、幻の大陸とされるアトランタスへと向かった。

すると、アトランタスは幻とされているはずなのに、なんなく見つかった。
しかしアトランタスを発見したのはヤマトネ一行だけではなかった。悪の科学者ナゾーとその手下の軍団が先にこの地を占拠していたのだ。
そして恐ろしい事実が明らかになる。
それは、イカルスを招き寄せたのは誰あろうナゾーだというのだ。彼は宇宙を征服するつもりだった。

そのためには光線砲を作ろうとするヤマトネ一行は邪魔なのだ。
ナゾーに追い詰められ、絶体絶命の危機に陥るヤマトネ一行。そんな時、彼らはひとつの棺桶の中に原石を発見する。それと同時に、棺桶には1万年の眠りについていた黄金バットもまた眠っていた。

横たわる黄金バットにヤマトネ一行の一人、エミリー少女が水を注ぐと黄金バットが蘇った。
「ハハハハハハハ……ワハハハハハハハハ……! 我は黄金バット! ここに1万年の眠りより覚め、戦いを共にせん!」と、黄金バットは圧倒的な力をもって瞬く間にナゾーとその軍団を駆逐していく。

ナゾー自慢の基地「ナゾータワー」も黄金バットの前にはひとたまりもない。黄金バットはナゾーを追い詰め、そして呼びかける。
「ナゾー! 最期の時が来たと知れ。いつの時代、いつの時でも悪が栄えたためしはない!」と、ナゾーを成敗する。

こうして、光線砲も無事完成し、イカルスは破壊された。地球壊滅の危機はここに去ったのである。

『黄金バット』(テレビアニメ)

昭和42年(1967年)作、全52話。
前年における映画の設定を、ある程度(全部ではない)引き継ぐ形で制作された、週間放送のアニメーション作品である。

古代アトランティス(アトランタスから名称が変更された)大陸を探す、ミレ博士を乗せた船が「南に来すぎた」という、かなりお粗末な理由で南極へ辿り着いてしまっていた。
そんな折、船は突如としてナゾーの差し向けた、巨大な手の形をした怪物ロボット「ファイブフィンガー」に襲われる。
絶体絶命の危機にミレ博士の娘、マリーが「ママが天国"で"守ってくれるわよ、パパ!」と微妙な励ましを送るが、あえなく船は沈んでしまった。これによりマリー以外の搭乗員は全員死亡。

その後、マリーは南極の海を漂流している所を、スーパーカー(という名のUFO)の飛行実験を行っていた、ヤマトネ博士とタケル少年に発見され、救助される。
間もなくエンジンのオーバーヒートにより、スーパーカーは近くの陸に不時着。しかし、それこそはミレ博士が探し求めていたアトランティス大陸であった。

ヤマトネ一行は、エンジンを冷やすための水を汲みにアトランティス大陸の地下へ地下へと潜っていく。
その果てには大きな部屋と、そこにぽつんとひとつ置かれた棺があった。

その正体を探ろうとするも、アトランティスにナゾーの追っ手がやってくる。
またしても絶体絶命の危機である。
しかし、棺の文字を「1万年後に人類の危機が必ず来る。その時ここに、正義のために戦う人が来たる。我が棺の蓋を取り去ると、超人黄金バット1万年の眠りから覚めて戦いを共にせん。我が胸に一滴の水を注ぐ」とヤマトネ博士が解読。
その文字へ部分的に従い、バケツ一杯の水を棺の中へ注ぐと、ついに黄金バットが復活する。

目覚めた黄金バットは高笑いと共に空へ飛び立ち、瞬く間にファイブフィンガーを片付けてしまった。
こうして黄金バットの庇護を得たヤマトネ一行は、宇宙征服を企むナゾーとの戦いに身を投じる事になったのであった。

それから黄金バットは、その無敵の力をふるい続けた。そして、ことごとく危機に陥るヤマトネ一行を救助しつつ、ナゾーの勢力を削いでいったのだ。
いよいよナゾーに迫る。黄金バットの攻撃でひび割れる、ナゾーの本拠地ナゾータワー。
追い詰められたナゾーは怪獣を黄金バットへ放つと、自身はいずこかへと逃げ去ってしまった。

黄金バットはこの追撃をしない。だが、古代の生き別れで悪に身を染めた「暗闇バット」と決着をつけ、地球から脅威を取り去った。
かくして世の中には平和が戻った。
仮に今後、再びナゾーが襲いかかってきても、地球には黄金バットがおり、なにも怖いものはない。
黄金バットの高笑いが、世界へ響くのだった。

『黄金バット』(永松健夫の漫画)

昭和22年(1947年)作。執筆は永松健夫。

紙芝居で描かれたと思しきシナリオを、漫画形式で描き直したものである。
現存しているものでは、地底国の秘宝を狙ってその女王を人質にとる悪の科学者ナゾーと、黄金バットの戦い等が描かれている。

地底国は進んだ文明を持っているが、平和主義者だけで構成される国家で戦う力を持っていない。
そこに隠された秘宝を狙って攻め込むナゾー。

地上の人々はこの危機になんとかするために、言い伝えに従い「どくろ岩」と叩くと黄金バットが出現する。
黄金バットは「悪をこらすのにおくびょうであってはならぬ」と、人々に戦いの指示を出すと、自身も地底国へ急行。
ナゾーの差し向けたロボット「怪タンク」を、さんざんに打ち壊すと、地帝国を救うのであった。

『黄金バット』(加太こうじの漫画)

昭和41年(1966年)作。原作に加太こうじ、作画を一峰大二としている。
アニメ版の一部を抜粋し、コミカライズしたもの。
そのため物語としてはアニメ版とほぼ同一になっている。

細かい差としては黄金バットの一人称が「わし」になっている事(他の作品では「私」あるいは「我」というパターンが多い)。

『黄金バット』(小説)

平成2年(1990年)作。執筆は加太こうじ。
いわゆるメイキング小説であり『黄金バット』を作った人々と、その時代の話となっている。
時代背景は昭和初期に遡り、戦争へ突き進んでいく日本の情景も映し出す。当時の日本には、失業者、日傭い労務者や博徒、テキヤといった人々が溢れかえっており、そんな人々を尻目におごり高ぶる、特高警察の嫌らしさ等が書かれている。

「加太こうじ」という、一人の紙芝居師の視点を通した、戦前日本の記録としても価値が高い。

『黄金バット』の登場人物・キャラクター

正義そのもの

黄金(おうごん)バット

本作の主人公にして、絶対無敵の存在。
困った者がいれば、たちどころに駆けつけて問題を解決してしまう。
悪にはめっぽう強いが、もしも相手が改心を誓う場合は、慈悲深くその罪を許し去っていく。

紙芝居の時代は、18世紀頃の西洋貴族のような格好をしておりサーベルを腰に佩いていた。
映像の時代になると、デザインが一新され「黄金の骸骨がマントを羽織り、銀の杖を持つ」という姿になった。

アニメにおいてはいくつかの設定が足されており、以下の通りである。

黄金バットは、かつて人間であった頃に悪行三昧の日々を過ごしており、その後、罪を罰せられた。その罰とは「正義のためにしか戦えず、そして不死身の身体を持つ」というものだったのだ。
このため、黄金バットは正義をなす存在として、絵家員にこの世に存在する他はないのである。
弱点は乾燥とされているが「乾燥するとしばらく動けなくなる」程度のものであり、身体を砂になるまで乾燥させられた際も、なんなく蘇った。

正義の味方

kinakokina2
kinakokina2
@kinakokina2

目次 - Contents