食糧人類(Starving Anonymous)のネタバレ解説・考察まとめ

『食糧人類(Starving Anonymous)』とは、原案・水谷健吾、原作・蔵石ユウ、作画・イナベカズによるパニックホラー漫画である。高校生の伊江とカズは帰宅中に何者かに誘拐されてしまう。目を覚ました伊江が目にしたのは丸々と太った人間と、それを解体する職員の姿だった。伊江は施設で出会った山引とナツネと行動を共にし、施設からの脱出しようと試みる。連載時、人間が未知の生物に飼育・捕食されるというショッキングな内容とグロテスクな描写で話題となった。

『食糧人類』の概要

『食糧人類(Starving Anonymous) 』とは、原案・水谷健吾、原作・蔵石ユウ、作画・イナベカズによるパニックホラー漫画である。講談社の漫画サイト「eヤングマガジン」にて、2016年9月20日から2018年11月5日まで連載された。コミックスは全7巻。原作者の蔵石ゆうと作画担当のイナベカズは、過去にゾンビ発生によるパニックを描いた『アポカリプスの砦』という作品でもコンビを組んでいる。

真夏のような暑さの中、高校生の伊江(いえ)とカズは帰宅中何者かに誘拐されてしまう。目を覚ました伊江が目にしたのは丸々と太った人間と、それを解体する職員の姿だった。伊江は施設で出会った山引(やまびき)とナツネと行動を共にし、人間を捕食する巨大生物から逃げ回りながら、施設の謎に迫っていく。

連載時、人間が未知の生物に飼育・捕食されるというショッキングな内容とグロテスクな描写で話題となった。

『食料人類』のあらすじ・ストーリー

謎の施設で目にした恐怖

人間を食料として生産する工場に連れてこられた伊江

地球温暖化が進み、3月だというのに真夏のような暑さの日。高校生の伊江(いえ)は、親友のカズと共にバスで帰宅している途中に何者かに襲われ、催眠ガスによって眠らされてしまう。目を覚ました伊江が周りを見渡すと、そこは謎の工場だった。床には氷漬けにされた人間達が横たわっており、作業員の手によって解体されていた。伊江は驚きを隠せず動揺していたが、近くにいた作業員に発見されてしまう。「絶対に逃げられないから覚悟したほうがいいよ」と言われ、伊江はまた気絶させられてしまった。
次に伊江が目を覚ますと、天井からぶら下がるチューブから謎の液体を吸う人間で埋め尽くされた部屋に移動させられた板。そこにカズがいることに気付いたものの、彼は他の人と同様にチューブから液体を吸っており、別人のように太っていた。カズにすすめられるまま液体を飲もうとすると、正気を保っている青年の山引とナツネに止められる。そして、チューブから出ている液体は、人間の体を醜く太らせ巨大生物の餌にするためのものだという衝撃的な言葉を告げられる。その後しばらくすると、作業員に連れられてきた謎の巨大生物によって、丸々と太った人間達は次々と食べられていった。山引からここが人間の飼育室らしいということを聞かされ、ナツネと共に脱出計画を立てていた。掃除にやってきた作業員から服を奪い、外に出ようとする二人。瞬間記憶能力を持つ伊江は、瞬時に地面に施設の絵を描き、二人に協力することを条件にカズを連れて脱出を試みる。作業員に扮した一行は「生殖種」を管理する部屋に辿り着く。そこでハエや蛆が沸いた赤ん坊の亡骸を抱く女に出会う。ナツネはその姿を見て心苦しくなったのか、生の苦しみから解放するかのように、女を抱きしめて骨を折り、絶命させた。

ナツネの正体

四人が次に入った部屋は不思議な物体に文字が書いてあり、天井にもいろいろな国の言葉が書かれた部屋だった。しばらくして作業員が入ってくると、怯えながらその物体の掃除をし始めた。物体に亀裂が入ると作業員達は慌てて逃げ出そうとするが、入口のシャッターが閉まってしまう。作業員達は孵化した巨大生物に皮膚を剥がされ食べられてしまった。四人は物音を立てないようにロッカーに隠れていたが、山引のお腹の音で気づかれてしまう。間一髪というところで、巨大生物に模した服を着た男・小倉年雄(おぐらとしお)に救われ、天井裏に身を潜める。小倉は本を書くために職員として施設に潜入したルポライターだったが、巨大生物を見て逃げ出してきたという。小倉は施設で見てきたことを話し、総理大臣が巨大生物を前にひれ伏していたことも告げた。ナツネは総理大臣がいた玉座の間に行こうとし、それを止めようとする小倉と言い争いになる。その時に床が壊れてしまい巨大生物に見つかってしまった。巨大生物に挑み、戦いに勝ったナツネだが体は真っ二つに裂けていた。しかしそんな状態でも生きており、体はどんどん修復していった。ナツネは完全体の「増食種」であることが判明した。ナツネの母は「増触種」の被験者であり、施設から逃げ出して団地でひっそりと生活していた。母の居場所を突き止めた警察が家に現れ、母の必死の思いを受け止めて生きるためにその場から逃げ、母の命を奪った施設への復讐を決意した過去を持っていたのだ。巨大生物が倒されたことに作業員が気付き、仲間が死んだと聞かされた巨大生物は作業員に生餌を17人用意しろと告げる。くじ引きで選ばれた17人は少しでも痛みが和らぐようにと薬を飲まされた。部屋を移動した17人はしばらくすると巨大生物に食べられてしまった。

反旗をひるがえす者

巨大生物を殺した犯人を探し出そうと、人体改造を施された警備員を引き連れて夕凪の会が動き出した。ナツメ達は作戦を練っていた。結果、伊江とカズと小倉は脱出すると決め、ナツメと山引は残ることになった。その時、ナツネは「友達と別れる時はなんて言うんだ?」と伊江に聞いた。ナツネはずっと一人だったため、別れの言葉さえ分からなかったのだ。答えを聞いたナツネは「じゃあ、またな」と言い、山引と共に立ち去った。伊江たち三人は天井裏を這いながら移動していたが、A地区に入った時に柵の中で捕まっている元職員に見つかってしまった。大声を出すと脅され仕方なく助けたが、ひっそりとついてきていた夕凪の会に見つかり、元職員は皆殺されてしまう。三人は急いで逃げ出すが、あえなく捕まってしまった。目を覚ますと伊江たち三人は手術台に固定されていた。そこにいたのは夕凪の会代表の桐生龍三(きりゅうりゅうぞう)だった。人体を改造することに性的興奮をする桐生は、三人を解体する気満々で話を聞く気もなかった。桐生は巨大生物を神と崇めていた。睡眠薬を投与された伊江は意識を失うが、メスではない刃物が頬にあたっているのに気づき目を覚ました。そこにはナツネと山引の姿があった。桐生は山引を知っていたが山引は誰だか分からなかった。山引はテーブルの上に乗っている腕を味見し、桐生の人造人間のことを「遺伝子はそのままの縫い合わせただけだ」と彼の技能への評価を下した。そこで山引、桐生とかつて家族ぐるみの付き合いをしていたことを思い出した。桐生は改造人間達に「役立たず、舌を噛んで死ね」と言い放つが、その言葉が改造人間の怒りを買い、殺されてしまった。

その時、ゆりかごの所長・和泉新太郎(いずみしんたろう)が校内放送を入れた。施設内で爆発火災が起きたため作業員達は逃げろという内容で、さらに「山崎さおり」について知っている者は至急所長室に来いとも告げられた。母の名を呼ばれたナツメは、所長室に向かった。ドアを開けるとそこにいたのは銃を構えた所長だった。ナツネは顔面を撃たれ倒れてしまった。悪いことをしたと所長は伊江たちに謝った。巨大生物を扉の中に閉じ込めたため、もうあいつらに気を使うことはないと所長は言った。目的は巨大生物を飢え死にさせること、食料不足がおきたことで共食いを始めた。所長は過去を振り返る。父親との思い出、山崎さおりを誤って逃がしてしまい生餌を300人出せと言われたこと、自分の身代わりに父親の和泉純一(いずみじゅんいち)が食い殺されたこと。壮絶な過去から、新太郎は巨大生物の殲滅を目論んでいた。副所長の花島(はなじま)に感謝の言葉を告げた新太郎は、突然花島に刺されてしまう。花島は自分でも訳が分からないまま所長を刺し続け、殺してしまった。 実は花島は巨大生物のクイーンから出た触手に操られていたのだ。そして巨大生物を閉じ込めていた扉を開けてしまった。巨大生物は施設を飛び出すと、外にいた人間を食べ始めた。人々は逃げ回ったが、繁殖能力が凄い巨大生物は人間を食べ、次々と繫殖していった。

巨大生物との決着

そこに、死んだはずのナツメが山引の背中から現れた。訳が分からない伊江たちは戸惑った。ナツメは地下にいるクイーンを殺しに行こうとするが、山引に止められてしまう。山引は「永遠と思えるような永い間死ぬほどの苦痛に耐えられれば奴らを根絶やしにできる」といった。その言葉を聞いたナツネは、一瞬怯んだが「やってみるか」と言った。山引はナツネの身体を歯で引きちぎり食べ始めた。すると山引の背中からナツメの顔が浮かび上がってきた。長い間の苦痛とはナツネの身体を食いちぎり増やすということを意味していた。クイーンの部屋についたナツネは殺され続けてしまうが、何度でも生き返るためクイーンに完全体の「増殖種」であることが知られてしまう。それを聞いた巨大生物達は施設に戻り始めた。戻った巨大生物だがナツネだけでは物足りず共食いを始めた。小倉は巨大生物とナツネを扉の中に閉じ込めようとし、扉の開閉ボタンに手を伸ばした。伊江は止めようとするがモニターに映るナツネの口が「閉めろ」と言っており扉を閉めた。施設を出た伊江、カズ、小倉の三人は、巨大生物の死体で埋め尽くされた道をひたすら歩き、街へと戻った。

施設から逃げて三年が経ち、三人は平凡な日常を過ごしていた。しかし伊江はナツネ達のことが忘れられず、自宅に探さないでくれという置き手紙を書き、施設に戻った。そこには何もなく、建物は埋められていた。一人地面を掘り続ける伊江だが、建物が出てくる気配はなく、力尽き倒れてしまった。ふと気が付くと、ナツネと共に歩いていた。ナツネは「あいつらは俺を根絶やしにした」と言った。その後、山引とも再会し、伊江は安心した。だがナツネたちは「一緒に帰ることはできない」と言い、姿を消した。ずっと伊江を探し続けていたカズが、呆然とベンチに座る伊江を見つけた。伊江はふとベンチに目を落とすと、そこには「またな、伊江」という字が刻まれていた。それを見た伊江は、カズに「もう大丈夫だ」と告げたのだった。

『食料人類』の登場人物・キャラクター

主要人物

伊江(いえ)

本作の主人公である、画家志望の男子高校生。下校途中に何者かに拉致され、不思議な施設に連れてこられた。一度見たものを瞬時に記憶してそれを再び描くことができる瞬間記憶能力を持つ。内向的で気弱な性格だが、施設内ではその記憶力を活かして機転を利かせるなど勇敢な一面も見せた。

カズ

伊江の親友で、同じ高校に通う男子高校生。帰宅するために伊江と乗ったバスが襲われ、施設に連れて行かれる。背が高くて体格も良かったが、養殖用の薬液を摂取したことで急激に肥満体型になり、思考能力も低下。中毒性の高い薬液のせいで人格も豹変してしまう。脱出しようとする伊江によって連れて行かれる。

山引(やまびき)

細身でメガネをかけた中世的な容姿の青年。長髪を一つに束ねている。好奇心旺盛で施設の巨大生物などに興味津々。ナツネの行動にも興味を持ち、彼に同行している。様々な場面で性的興奮を感じる変態気質。だが、周囲の者を引き付ける不思議な魅力を持つ。かつては、奇抜な発想で遺伝子学において新発見を繰り返してきた天才研究者だった。しかし人造生物を作るなどの禁忌に手を出したことなどにより、桐生の罠によって事故に見せかけ致死量の放射線を浴びせられる。自身に様々な生物の遺伝子を移植することで、破壊された細胞を補っている。巨大生物を根絶させる一手を考え出し、ナツネと共に実行した。

ナツネ

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