ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』とは2020年にNetflixオリジナル作品として配信されたアメリカ合衆国の青春ラブコメ映画。冴えない高校生活を送る主人公エリーに同じ高校に通うポールがラブレターの代筆を頼む事で、ポールとエリーとポールが恋をしているアスターの三角関係が始まる。今作は王道の青春ラブストーリーではあるものの、哲学や文学、同性愛などが絡むことで、非常に繊細で深みのある作品となっている。

エリーとアスターが交互に自由に壁に絵を描くシーン。
文通を通して、アスターが絵を描く事を諦めかけている事を知ったエリーは、自由に壁に絵を描いてほしいとお願いする。アスターからエリーにも絵を描いてほしいと書いてあり、交互に壁に絵を描いていき交流を深めていく。

エリーの助け舟

ポールとアスターの2回目のデートも1回目と同様でぎこちなさが残っていた。そんな2人を近くで見守っていたエリーは、あたかもポールがテーブルの下でアスターにメールをしているかのように装ってエリーがアスターに向けてメールを送り2人の場を和ませようとするシーン。とっさの出来事にポールもついていけず、何を自分がアスターにメールを送っているのかも分からず取り敢えず相槌を打つシーンは斬新的な手法で面白い。

知的な映画

プラトン、オスカー・ワイルド、ヴィム・ヴェンダースの名言がシーン毎に紹介される。劇中で幾度となく名言が引用され、文学的な演出効果となっている。

オスカー・ワイルド
「自分を欺いて始まり、他人を欺いて終わる。それが恋愛だ。」
プラトン
「愛とは完全性に対する欲望と追及である。」
サルトル
「地獄とは他人である。」

今作で偉人の名言を紹介する本当の意味は「自分の言葉で伝えることの大切さ」である。
ポールがアスターに真っすぐに自分の言葉で告白して成功したように、誰かの言葉を借りるのではなく、自分の気持ちを自分の言葉で直接伝える事で相手に理解してもらえる。それが大切なのだと感じさせてくれる映画である。

『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

エリーの成長に合わせて気持ちの表現方法が変わってくる

映画の中で哲学者プラトン等の言葉がシーンに合わせて紹介されているが、終盤は絵文字で「パイナップル」と「フクロウ」と「毛虫」が表示される。エリーがアスターに宛てたラブレターでは最初、偉人の名言の引用だったが最終的にはシーン毎に紹介されていた偉人の名言から絵文字のみの表記に変わる。それはエリーが三角関係を通して自分なりの表現での仕方ができるようになったからである。

監督自身が治癒のために作った映画

アリス・ウー監督は今作について「この作品は自分の経験から着想を得た」と語っている。レズビアンをカミングアウトしているアリス・ウーは、ストレートの男性の親友がいた。その彼に彼女ができると、彼女はアリス・ウーと彼の仲良さに妬んでしまい、アリス・ウーは彼と疎遠になってしまう。恋愛感情はなくても、失恋をしたような気分を味わったアリス・ウーはこの痛みと向き合うために今作を執筆したのだそう。

今までにないLGBTQの映画

LGBTQとは、女性同性愛者、男女問わず同性愛者、両性愛者、生まれた時に割り当てられた性別が自身の性自認と異なる人トランスジェンダーの各単語の頭文字を組み合わせて作られた表現。
近年LGBTQの映画が多く公開されており、近年のLGBTQの映画と比較すると今作は良い意味でLGBTQの映画らしくない。今作はLGBTQ要素を問題として過度な演出をせず、キャラクターにさりげなくLGBTQ要素を取り入れる事で偏見を感じさせない造りになっている。

アジア人であるがゆえの生きづらさを描いた映画

今作では物語の中で人種差別が描かれている。学校ではアジア人はエリーのみで学校には馴染めず、毎朝通学中にエリーが必死に自転車をこいでいると、車で優雅に通学する同級生のグループから「チュー、チュー」と差別的な言葉をかけられる。エリーの父親はアジア人だからという理由で博士号を持っていても希望する職には就けずにいる。
アメリカの田舎町ではまだアジア人に寛容ではない事が分かる。

『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』の主題歌・挿入歌

挿入歌:Ruen Brothers『Break the Rules』

挿入歌:The Strumbellas『I’ll Wait』

挿入歌:Hudson Moore『Bring on the Rain』

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