新世界より(From the New World)のネタバレ解説・考察まとめ

『新世界より』は2012年10月からテレビ朝日系列で放送されたSFアニメである。全25話。原作は貴志祐介の同名の小説であり、テレビアニメの内容は原作をほぼ忠実に再現している。
舞台は人類が「呪力」と呼ばれる超能力を身につけた1000年後の世界。12歳の少女・渡辺早季が同級生と共に禁断の知識に触れたことで少しずつ平和が歪んでいく様子が描かれる。物語は早季たちが12歳・14歳・26歳の時期の3部で構成されている。

『新世界より』の概要

『新世界より』は貴志祐介の小説を原作としアニメ化したものである。1000年後の日本が舞台、人々が念動力を手にした世界を描くこの小説は2008年に第29回日本SF大賞を受賞した。奥深いストーリーと独特な世界観から「映像化不可能」とまで言われたが、世界のアニメスタジオA-1 Picturesと石浜真史満監督がタッグを組み、満を持してアニメ化まで至った。キャッチコピーは「偽りの神に抗え。」。アニメを見終えるとこのキャッチコピーの意味がよくわかる。物語は「神栖66町」という自然豊かな集落で生まれた12歳の少女・渡辺早季が同級生たちと共に先史文明が遺した図書館の自走型端末「ミノシロモドキ」と出会うところから始まる。そこで彼女たちは1000年前の文明が崩壊した理由といった禁断の知識に触れてしまう。そこから早季たちを取り巻く仮初めの平和は少しずつ歪んでいく。
作品は主人公たちが12歳・14歳・26歳の時期の三部に分けられている。

『新世界より』のあらすじ・ストーリー

12歳

舞台は日本の1000年後、そこに生きる全ての人間が念動力、呪力(サイコキネシス、PKとも呼ばれる)を手にする世界で生きる5人の子供達を主軸に物語は動いていく。主人公達が住む、日本の集落「神栖66町」の町の周りにはバケネズミ(人間の使い、ネズミの様な生物)が暮らしている。そして町の周りと外を八丁標(はっちょうじめ)と呼ばれる結界に守られている。結界の外に出ると業魔・悪鬼と呼ばれる化け物に襲われると言われていた。
主人公の早季は、1人娘として幸せに暮らしていた。他の子より呪力の目覚めが遅かった(12歳までには目覚めると言われている)が、ようやく呪力が目覚め学校に通うようになる。学校では一般教養の他に呪力のコントロールを学ぶ。

夏になりキャンプがやって来た。五人は言ってはいけないと言われていたが、それを無視し2.3千年の歴史ある神社の前に着く。そこにいたのが「ミノシロモドキ」であった。ミノシロモドキと出会うと死ぬと言われていたが、五人は捕まえる事に成功した。ミノシロモドキは自身を国立国会図書館だと言い張る。ミノシロモドキは1000年前の血塗られた歴史を話しだす。サイコキネシス(呪力)が科学によって照らし出されたのは2011年。人類はサイコキネシスが目覚めはじめ最終的には人口の0.3%に達した。その頃のPK(「Psychokinesis:サイコキネシス」の略で、意思の力で物体を動かす超能力のこと)は微弱なものだったが、ある1人の少年が引き起こす事件によって動き出す。19人の女性を暴行、内17人を殺害した事件だ。人間が人間を殺していた事にショックを受ける覚だが、ミノシロモドキは淡々と歴史を語るのである。更にはPKを使った無差別テロが起こるようになり、文明は消え暗黒時代に突入するのである。人口は大幅に減りPK能力者が一般人を支配する奴隷王朝が誕生するのである。東北アジアにおいては、人間の社会は4種類の相容れない単位に分断されていた。

第1. 少数のPK能力者が多数の一般人を支配する奴隷王朝
第2. 山野に隠れ住み、移動し続けることで奴隷王朝の脅威から逃れていた非能力者の狩猟民
第3. 家族単位で放浪し、PKによって襲撃と殺戮を繰り返していた略奪者たち
第4. 先史文明の遺産により電力供給を維持し、細々と科学技術文明を伝承していた集団

今の社会がどうやって出来上がったのかを尋ねる瞬。人類が滅びてしまうと思った科学技術者が立ち上がり、対人攻撃を防ぐための教育、心理的手法により問題ある遺伝子は事前に取り除く事が出来るようになった。更には、人間社会をボノボと言う争いがほとんどない哺乳類に近づけるためにボノボ型の愛の社会を築くように遺伝子改良をしていった。そこで攻撃抑制(人間を攻撃しようとしたら体が動かなくなる)・愧死機構(人間を殺すと自分も死ぬ)という強制的かつ強力な攻撃抑制機能が備え付けられた事で今の社会が築かれているとミノシロモドキは言う。

早季達は更にミノシロモドキから聞き出そうとするが、急にミノシロモドキは炎によって破壊されてしまう。ミノシロモドキを破壊したのは離塵という僧侶であり、早季達は許可されていない場所へ踏み込んだ処罰を受ける為、5人は全員「呪力」を封印され、離塵の引率で彼の寺院まで向かう事に。しかしバケネズミの襲撃に合い離塵はやられてしまう。逃げようとするも早季と覚は捕らえられる。何とか脱出した二人を助けたのが塩屋虻コロニーに所属するスクィーラだった。そこで塩屋虻コロニーと土蜘蛛コロニーが戦争中だと言うことを知らされる。極限の状態になり早季は、呪力発動の鍵となる言葉で、自分以外には絶対知られてはならないと厳命されている真言(マントラ)の事を思い出し、覚の呪力を呼び覚ます。土蜘蛛に反撃していた覚だったが、体調を崩してまう。危機一髪かと思られたと所で最大のコロニー「大雀蜂」が援軍として駆けつけて難を逃れるのであった。

14歳

恋人同士になった早季(左)と真理亜(右)

時が経ち14歳になった、早季達であったが、ミノシロモドキから聞いた事が忘れられずにいた。ある時から瞬の様子がおかしくなり、学校にも来なくなった。そこで、瞬の家に行く早季であったが、そこには瞬の家らしき残骸があるだけだった。瞬は呪力が抑えられず無意識に漏れ出してしまう「業魔」と化していた。漏れ出す呪力により周囲が変異化してしまったのである。瞬はその場で押し寄せる大地に飲み込まれ、死んでしまう。
クラスにはいつもの五人組がいる。呪力によって瞬はいないものとされていた。変わりに良と言う男の子がいる。しかし、早季は良に違和感を感じ、疑念を抱く。早季は倫理員会議長に呼び出され、今まですべての事を教えてもらう。過去に悪鬼と呼ばれる理性を失い大量殺人鬼と化した少年がいる事。怪しい子供は排除する事で悪鬼・業魔になるのを防げるという事。不浄猫と呼ばれる呪力で排除していたと言う事。

冬になり守が家出をした事を知る。彼の後を追った早季達だったが、守は自分が排除されると怯えていた。守の話を聞いた真理愛は2人で生きていく事を誓う。早季は教育委員会の尋問を受け覚と2人を連れ出しに向かう。2人を探している途中に「塩屋虻コロニー」のスクィーラと出くわす。スクィーラは出世しており「野狐丸」の名を授けられていた。塩屋虻は大雀蜂と並ぶ位に急激に発展していた。
一匹のバケネズミから守と真理愛から手紙を渡されていた事を知る。手紙には「排除される子供がいる事は異常だ。町には戻らない。死んだことにして欲しい」と書かれていた。悲しがる2人だったが、バケネズミと口裏を合わせ死んだようにする。

26歳

そこから12年が経ち、早季と覚は26歳になっていた。早季は保健所でバケネズミの調査・管理を担当していた。傘下コロニーへの襲撃事件をきっかけに、大雀蜂と塩屋虻は戦争となる。大雀蜂は全滅したと知らされる。とある夏祭りの日にそれは起こった。バケネズミの奇襲である。爆弾・銃・矢を駆使して人間を殺しに来るバケネズミ。最初こそやられていた人間だが、呪力を使いバケネズミを一層する。死を覚悟してまで奇襲してきたのには理由があった。悪鬼の存在だ。バケネズミが悪鬼を使って人間を全滅させようと企む。早季達は清浄寺へと避難する。そこで司書である母親から手紙で「サイコ・バスター」の事を知らされる。悪鬼を葬る事ができる存在を知った早季達は、清浄寺にいた大雀蜂の将軍・奇狼丸と共に探しに行く。

「サイコ・バスター」を発見し迫ってくる悪鬼に使う。しかし、失敗に終わる。そこで、早季は悪鬼ではないのではないことを気付く。バケネズミとして育てられ自身をバケネズミと思っていたら、攻撃抑制・愧死機構はバケネズミに対して発生するのではないか。奇狼丸に頼み込む。奇狼丸は人間に扮して悪鬼に攻撃される。包帯で隠していた顔を露にすると悪鬼は苦しみだし愧死機構により死亡した。
反乱の首謀者・野狐丸ことスクィーラは裁判にかけられる。

戦後、バケネズミの遺伝子を調べていた覚は驚愕の真実を知る。バケネズミと人間の遺伝子は限りなく近いものであり、呪力が使えない人間の成れの果てがバケネズミだと知る。攻撃抑制・愧死機構により人間に攻撃出来なくなった呪力を持った人間達は持たないものからの攻撃を恐れバケネズミに変えてしまったのである。

あれから10年後

10年後、覚と結婚した早季は新たな業魔・悪鬼の存在を危惧しつつも、未来の希望を抱いて生きていくのであった。

『新世界より』の登場人物・キャラクター

渡辺 早季(わたなべ さき)

声 - 種田梨沙(12歳・14歳・26歳)、遠藤綾(36歳)
本作の主人公であり、語り手。
町長の父と、図書館司書を務める母を持つ。210年12月10日生まれ。好奇心が旺盛で、強靭な精神の持ち主。物語開始以前から瞬には好意を抱いている。
14歳の時、真理亜とは恋人同士だった。
ミノシロモドキから町では禁忌とされる情報を引き出してしまい、平和だった日常から、バケネズミたちの抗争や思いもしない災厄に巻き込まれてゆく。全人学級卒業後、保健所の異類管理課に勤務。
36歳の時点で覚と結婚しており、第一子を妊娠している。

朝比奈 覚(あさひな かける)

声 - 東條加那子(12歳)、梶裕貴(14歳・26歳・36歳)
早季の幼馴染。陽気な性格の少年。悪戯好きで、ホラ話を吹聴する癖がある。
瞬とは14歳の時、恋人同士だった。美少年がタイプらしく瞬と別れた後に出来た恋人も美少年だった。
全人学級卒業後、妙法農場に就職する。
36歳の時点で早季と結婚しており、第一子を授かる。

秋月 真理亜(あきづき まりあ)

声 - 花澤香菜
早季の幼馴染。赤い髪の美少女。
14歳の時、早季とは恋人同士だった。
長らく守の片思いの相手であったが、当番委員の投票以来、彼の思いが結実する。

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