幸色のワンルーム(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ
『幸色のワンルーム』とは、無料マンガサイトpixivコミックで作者のはくりが不定期に連載を始め、書籍化もされている人気漫画作品である。朝日放送テレビ制作で実写ドラマ化もされた。この物語は、誘拐犯であるお兄さんと、お兄さんに誘拐されたことになっている家出少女の幸の2人の逃亡劇が描かれている。その中で、2人は探偵の松葉瀬やその助手の八代らと出会い、最初は利害の一致から始まった依存関係が信頼や愛情を含んだ2人の間だけで成立する特別な関係へと変化していく。
2人が初めて一緒に食事をするシーン
2人が初めて一緒に食事をするシーン。この前に、夕食の買い出しに行ったお兄さんはスーパーで万引きの取り締まりをしている警察官を見かけ、反射的に動揺してしまう。それを警察官に見られ万引きと疑われた。この時、お兄さんは自分が幸を誘拐した犯罪者だということを実感するのであった。また、幸と一緒に夕食を作り食事をする中で、(自分の命への執着の薄さからくる)幸の警戒心の薄さやみんなにとって普通のことが幸にとっては普通ではないこと(誰かと一緒に食事をしたり毎日ちゃんとした食器で食事をとることなど)を改めて実感した。そしてお兄さんは、たとえ本心でなくとも幸がお兄さんを必要とする限りは幸のために生きようと決意する。
お兄さんが家出少女を幸と名付けるシーン
家出少女の「これからはお兄さんがつけた新しい名前で生きたい。」という要望を受け、お兄さんは幸せになれるようにと願い少女を「幸」と名付けた。
この後はお兄さんだけが一貫して少女のことを幸と呼んでいる。その他の登場人物は少女の本名を口にしているが「×××」と表記されており、本名は不明である。そのため、少女の名前はお兄さんが呼ぶ「幸」というものしか出てこない。
幸が自殺直前に猫に語り掛けるシーン
以前、別の場所で会った子猫と自殺の直前に再会するシーン。その時も子猫は一人ぼっちであり、幸はそんな子猫に少し親近感を感じたのか「あなた親いないの?私と同じ」と言い、自分が何もかも捨てて(=家出をして)これから数日で普段皆が普通にしていること(散歩をしたり、店を見て回るなど)を自分のできる範囲でやり切ったら死のうと思っていることなどを語っていた。そして、その子猫と河原で再会し、みんなが普通にしていることが何もできなかったため、前にこの子猫に言ったを取り消すねと告げ、画像のシーンへと続く。そして、このシーンの直後、子猫の親が現れ子猫は親猫の元に戻っていった。すると、幸は「なんだ親いたんだ」と少し落胆した様子を見せ「今日で何日経ったんだろう。まぁ、どうでもいいや。もう終わるんだし」と言い残し川に飛び込もうとするが、一部始終を見ていたお兄さんに引き留められる。
ここから、2人の誘拐ごっこが始まる。
幸「そんな覚悟とっくにできてる」
幸が松葉瀬達と直接対決する直前にお兄さんに言ったセリフ。
「もし松葉瀬らが邪魔ものならば殺す。将来的に幸はお兄さんも殺すんだよ。1人も2人も変わらない。」という幸に対してお兄さんは「あの2人を殺すと君も罪を被ることになる。(誘拐犯の僕と)共犯者になるんだよ。」と告げる。そのお兄さんの言葉に対しての言葉である。
八代「最終的には相手を信じるしかない。君自身がどう思いたいかなんだ。」
いつまでたっても幸とお兄さんの結末を見届けるためとしか目的を語らない松葉瀬に対し、幸は包丁を突きつけ「信用してほしいなら包丁で指切り落として」と要求する。しかし、松葉瀬は「信用してほしくても嫌なものは嫌だ。正体も明かしたしそれじゃ足りないのか。お前(幸)のやっていることは相手を不利にして従わせたいだけだ。」と幸の要求を拒否した。そこから幸と松葉瀬が口論になり、幸が松葉瀬を殺そうとしたときに松葉瀬の助手の八代が幸に対して言った言葉。
信用に常に対価を求める幸に対して、「信用っていうのは相手の問題じゃなく自分の気持ちの問題だ。」と言い、それに続けてこの「最終的には相手を信じるしかない。君自身がどう思いたいかなんだ。」というセリフが出てくる。このセリフをきっかけに幸はお兄さんに対する利害の一致以外の気持ちの大きさを自覚していく。
『幸色のワンルーム』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
作品の元ネタとなった「朝霞市女子中学生監禁事件」
『幸色のワンルーム』は、当初Twitterで『世の中いろんな人がいるという話』というタイトルで発表されたが、その直前に「朝霞市女子中学生監禁事件」が話題になっていた。
『幸色のワンルーム』の元ネタとなった「朝霞市女子中学生監禁事件」とは、2014年に埼玉県朝霞市で起こった誘拐・監禁事件。当時中学1年生だった13歳の少女が誘拐され、2年後に保護された。この事件で議論されたのが「少女が逃げようと思えば逃げられたのではないか」という点だった。そのため『幸色のワンルーム』の元ネタとされるこの事件も、漫画同様ただの誘拐・監禁ではなく相互同意の同棲とする見方さえあったようだ。
本作はこの事件の被害者が療養を強いられていた時期に、恋愛物語としてエンタメ化された事からネットで注目された。
探偵・松葉瀬も虐待を受けていた
本作に登場する探偵の松葉瀬も幼い頃親から虐待を受けていた。その後遺症として、普段は前髪で隠している右目には傷があり視力もほとんどない。幸と口論になった際に、「本当に殺したいなら(見えなくて反応が遅れるから)右後ろからにするんだな」と自ら明かしている。
ドラマ版『幸色のワンルーム』
概要
『ドラマL』(※)の第二弾の作品として朝日放送テレビ(ABCテレビ)で、2018年7月8日から放送された。
幸役として山田杏奈が、お兄さん役として上杉柊平が起用された。山田は「お芝居で意識しているのは幸の二面性。表面のすごく明るいところと、闇を抱えた本心のところというのを意識して演じ分けているので、そこを見ていただけると嬉しい」とコメントした。上杉は「みどころは幸とお兄さんの関係そのものです。シーンが進むごとにその関係が変わっていく。家族だったり恋人だったりではない、年齢の上下も関係ない、そんな中で人と人との関係が動いていく様は、僕自身、興味深いと思っています」と語っている。
放送前の段階で「誘拐事件を肯定しているのではないか」「実際の被害者を傷つけるのではないか」といった議論が出て、当初同日先行ネット放送も予定されていたが、延期された。その後、朝日放送テレビの社長である山本晋也は「企画の段階から批判があることは分かっていた。社内で議論を重ね、中身を精査し、当社の基準に照らし合わせた上で制作、放送を決定した」「現代における問題点がつまっているドラマ。世の中の矛盾について見据え、問いかける意味でも、私は放送すべきだと思っています」と語った。関東圏ではAbemaTVでの配信となった。
※『ドラマL』=毎週日曜23:25-23:55に毎日放送テレビ(ABCテレビ)で放送されているテレビドラマ枠
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目次 - Contents
- 『幸色のワンルーム』の概要
- 『幸色のワンルーム』のあらすじ・ストーリー
- 少女の新たな名前・幸
- 誘拐犯を名乗る男の登場
- 幸とお兄さんの結婚式
- 探偵との取引
- 『幸色のワンルーム』の登場人物・キャラクター
- お兄さん
- 幸(さち)
- 松葉瀬聖(まつばせ ひじり)
- 八代涼太郎(やしろ りょうたろう)
- 形切診(かたぎり しん)
- 佐藤美穂(さとう みほ)
- 幸の母
- 幸の父
- お兄さんの保護者
- 幸の同級生
- 駄菓子屋のおばあちゃん
- 警察官
- 『幸色のワンルーム』の用語
- ×××
- 「いつもの時間にね」
- 『幸色のワンルーム』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 2人が初めて一緒に食事をするシーン
- お兄さんが家出少女を幸と名付けるシーン
- 幸が自殺直前に猫に語り掛けるシーン
- 幸「そんな覚悟とっくにできてる」
- 八代「最終的には相手を信じるしかない。君自身がどう思いたいかなんだ。」
- 『幸色のワンルーム』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作品の元ネタとなった「朝霞市女子中学生監禁事件」
- 探偵・松葉瀬も虐待を受けていた
- ドラマ版『幸色のワンルーム』
- 概要
- キャスト
- 主題歌:FLOW『音色』