『雨に似ている』とは、1991年に『別冊少女コミック』で発表された渡辺多恵子による漫画作品。同作者の『はじめちゃんが一番!』の作中劇であり、アイドルユニットWEの瑞希と亮が演じている。 快活なサッカー少年の智之と、重い心臓病を抱え周囲を拒絶する転校生・悠一の交流を通じて「命の尊さ」を描く。正反対の二人が反発し合いながらも心を通わせていく、プラトニックなBL青春ドラマである。17歳でこの世を去る悠一と智之の絆を瑞々しく綴った切ないブロマンス。
『雨に似ている』の概要
『雨に似ている』とは、1991年に小学館の『別冊少女コミック』にて発表された渡辺多恵子による漫画作品、およびそれを表題作とした1992年11月26日発売の短編集である。単行本は全1巻。
本作は、著者の代表作である『はじめちゃんが一番!』の作中劇として描かれた読み切りの特別番外映画編を単行本化したものである。アイドルユニットWEの二人が昔出演した映画の内容となっている。
「命の尊さ」を主要なテーマに据えており、ジャンルとしては青春ドラマやボーイズラブ(BL)の要素を含んでいる。
沢木智之(さわき ともゆき)は、サッカー部のエースストライカーを務める快活な高校2年生。興味を持った物事には何に対しても全力で取り組む性格である。そんな智之の前に、転校生の奥瀬悠一(おくせ ゆういち)が現れる。悠一は常に自分の殻に閉じこもり、周囲を拒絶するような鋭い言動を繰り返していた。
自分とは正反対の性格である悠一に対し、智之は当初反発心を抱くが、彼と接していくうちに次第にその存在が気にかかるようになっていく。
快活な少年と孤高の美少年が織りなす、恋とも友情ともつかないプラトニックな関係を描いた物語。美少年との切ないブロマンスである。
表題作である『雨に似ている』と、他一編が収録されている。
『雨に似ている』のあらすじ・ストーリー
智之と悠一の短くも尊い交流
明るく元気なサッカー少年・沢木智之(さわき ともゆき)と、冷めた言葉で周囲を拒絶する優等生の転校生・奥瀬悠一(おくせ ゆういち)。正反対の性格である二人は当初、会えば喧嘩ばかりの反発し合う関係だった。しかし、ある日の夕方に樹木の下で偶然言葉を交わしたことを境に、智之は悠一が強がりの裏に抱える深い孤独に触れ、二人の関係は変化し始める。
智之は、悠一が重い心臓病を患っており、余命幾ばくもないという衝撃の事実を知る。悠一は「自分の意味のない、つまらない人生は雨に似ている」と語り、静かに死を見つめ続けていたが、内面では自分にない生命力に溢れる智之に強く憧れていた。一方の智之も、過酷な運命と闘う悠一の姿に美しさを見出し、二人は急速に心を通わせていく。
智之から注がれる瑞々しい生命力は、絶望の中にいた悠一につかの間の生きる喜びを与えた。悠一は最後に「生まれてきて良かった」と母に告げ、17歳の冬を越えることなくこの世を去る。智之は、あとに残された優しく儚い雨の中に悠一の面影を感じ、静かに涙を落とした。
『雨に似ている』の登場人物・キャラクター
沢木 智之(さわき ともゆき)
沢木智之
高校2年生。サッカー部のエースストライカーを務める、元気一杯な本作の主人公。「生命力が服を着ているようなやつ」と称されるほど活発な少年だが、勉強はあまり得意ではない。
バイクを購入するためにアルバイトに精を出すなど、興味のあることには全力投球する性格である。クラスメイトの森村多貴を異性として意識している。転校生の奥瀬悠一とは当初ウマが合わず、顔を合わせれば喧嘩ばかりしていた。
奥瀬 悠一(おくせ ゆういち)
奥瀬悠一
高校2年生。春に沢木智之のクラスへ転入してきた。先天性の心臓奇形を患っており、体質的な問題から手術も不可能である。幼少期に「14歳まで生きられればいい方」と宣告されており、体育の授業に参加できないほど病弱。
自身の死を見つめて生きているためか、冷めた態度で他人との接触を極端に拒んでいる。校内に並ぶ者がいないほどの美形で神秘的な雰囲気を纏っており、女子生徒からは「悠さま」と呼ばれ絶大な人気を誇る。
森村 多貴(もりむら たき)
森村多貴
沢木智之の幼なじみであり、クラスメイトの少女。サッカー部のマネージャーを務めている。表向きは転校生の奥瀬悠一に憧れている素振りを見せているが、本心では智之に対して好意を抱いている。
智之が悠一に対して抱いている特別な感情に、いち早く気づいていた唯一の存在である。
悠一の母
藤ヶ丘総合病院の厨房で働きながら、女手一つで重い病を抱える悠一を育てている。悠一が心臓に疾患を持って生まれたことを自分の責任だと感じ、長年自責の念にかられている。
息子の体を常に案じており、学校への送り迎えも自ら車で行っている。
『雨に似ている』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
「雨に似ている」は"It looks like rain"の訳をあてられた際の智之の誤答
『雨に似ている』というタイトルの由来は、物語の冒頭で、英語の授業中に「It looks like rain」という一文の和訳を求められた智之の誤答である。智之は正解の「雨が降りそうだ」ではなく、直訳的な「雨に似ている」と解答してしまう。
死を間近に控え、自身の存在意義を見出せずにいた悠一は、この言葉に反応した。悠一は「実体のない、空から降ってきては消えるだけの、はかなく無意味な自分の人生」を雨になぞらえており、智之の誤答が図らずも自分の本質を言い当てたかのように感じたのだ。
読み切りとしても楽しめるWE主演映画
本作は、著者の渡辺多恵子の代表作である『はじめちゃんが一番!』の作中劇を読み切りとして独立させた作品である。物語の設定自体は本編と直接の関連はないものの、劇中の主要人物である二人は、同作に登場するアイドルユニット「WE」のメンバーである瑞希(沢木智之役)と亮(奥瀬悠一役)が演じているという設定になっている。
そのため、『はじめちゃんが一番!』本編が未読の状態では意図が掴みづらい台詞も一部存在するが、単独の読み切り作品としても完結しており、独立した青春ドラマとして十分に成立する構成となっている。
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