とめはねっ!鈴里高校書道部(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『とめはねっ! 鈴里高校書道部』とは、2007年~2015年に『週刊ヤングサンデー』(~2008年)及び『ビッグコミックスピリッツ』(~2015年)に連載された河合克敏による漫画及びそれを原作とするテレビドラマである。帰国子女ながら綺麗な字を書く内気な少年・大江縁と、闊達な性格で柔道部のホープだが字の下手な望月結希。二人の書道初心者が鈴里高校書道部に入部し、書道を通じて成長していく様が描かれる。

ごくごく単純な「十」の字をうまく書くことが出来ない結希に対して指導役のひろみが言った一言。
それを聞いた書道初心者の結希と縁はショックを受ける。とめやはらい、字画のバランスに関わる技術だけではなく「余白」とのバランスも視野に入れながら書かなければうまい字は書けない。今後書を通じていろいろな奥深さを知っていく二人の入り口となるつかみのシーンになっている。

二つの「母」

縁や結希が初めて参加した市の大会で居合わせた清風が提案した書道リレーゲームを行うシーン。
「母」をお題にして、一画ずつ書き手を変えていって一文字の仕上がりを競うルールだが、左の鵠沼高校書道部が書いた整った「母」に比べ、右の鈴里高校書道部が書いた「母」が変わったバランスになっているのは、一番走者である結希が「母」の書き順を間違って本来とは違うところから書き出してしまったことによる。清風は単純に整った方の勝ちとせず、引き分けとした。それは、その後縁たちのフォローもあり、変わった形ながらトータルでは十分に「母」の字として成立しており、今日ではこのように大胆で奔放な「母」がいてもいいではないか、という判断をしたからである。
清風の懐の深さと、書の柔軟さが伺えるシーンとなっている。

「タイムカプセル」

「かなの書」が好きな理由を聞かれた藍子が照れながらこたえるシーン。
藍子がかなの書を愛する理由の一番目は単純に形が「キレイ」だからだが、二番目の理由は「タイムカプセル」だから。書で書かれた古典のかな文字は文字同士が連綿とつながった流れるような美しさを備えている。そのため、その筆跡を真似ようとするということはかつて書いたであろう作者と幾年もの年月を超えて同じ動きをトレースすることになる。
時を超えた書き手同士のつながりをロマンティックに感じる藍子の感性を表現した一言である。

井上有一/「噫横川国民学校」

2度目の「書の甲子園」を前に作品制作に悩む縁が目の当たりにしショックを受けた、実在した書家・井上有一による作品。
1945年当時東京の横川国民学校の生徒は皆学童疎開によって他県に移住していたが、3月、有一は彼の担任していた6年生たちを連れ卒業式をするため疎開先から東京へ戻ってきていた。そして折悪しく3月9日から3月10日に日付が変わった深夜、東京大空襲が始まる。近隣住民の避難場所でもあった横川国民学校を包囲するように広がった炎は鉄筋コンクリートの校舎と中にいた人々を容赦なく焼き殺していった。卒業のために彼が疎開先から連れてきた生徒も八人がここで亡くなった。地獄絵図のような光景を目の当たりにした有一は、そこで抱いた激情を書の作品へとぶつける。そうして仕上がった作品が本作品である。
縁はこの作品を見た後しばらくショックで放心状態になるが、経験の重みには違いはあるものの、改めてその時の「気持ち」を書に映し出すことが自分にとって今できることだと考えるきっかけとなった作品である。

「迷いながら ぶつかりながら 揺れながら 過ごした日々を いとしく思う」

二度目の「書の甲子園」へ向けて縁が悩みぬいた末にようやく完成させた作品の中で引用された歌人・加藤千恵の詩。
結希たちと過ごした書道部での日々をいとしく思う気持ち、そして書道部を辞めていく結希と離れたくないという気持ち。そんな縁の気持ちを反映してくれる一節で、縁が集大成としてのこの書を書き上げた場面は本作のクライマックスのシーンとなっている。

テレビドラマ

概要

2010年にNHK総合テレビジョンで放送された全6回のテレビドラマ。原作とは異なり、主にヒロインの望月結希を中心に描かれている。また、撮影が行われた2009年当時、原作が未完であったことから、夏合宿以後はドラマオリジナルのストーリーが展開された。

主なキャスト

望月結希:朝倉あき / 小学2年生の結希:大門果琳
大江 縁:池松壮亮
日野ひろみ:亜希子 / 小学生のひろみ:大空茜
加茂杏子:赤井沙希
三輪詩織:浅野かや
大江英子:山本陽子
三浦清風:高橋英樹

ほか

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