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vump_of_chickenv4のレビュー・評価・感想

SLAM DUNK / スラムダンク / スラダン
10

作者の情熱を手に取ってみて

言わずと知れた、スポーツ漫画の金字塔です。
2022年映画化されて大ヒットしましたが、作者である井上雅彦さんの情熱あっての成功でした。
ぜひ情熱の根源である原作を手に取って欲しいです。
「努力・友情・勝利」の少年漫画でしょう?って思われがちですが、スラムダンクの世界観はもう少し現実的です。
主人公はみんな恵まれた天才なんですか?って思いませんか。
結論から言えば、花道はバスケの天才ではありません。恵まれてもいないし、お金も信用もない。
この漫画にバスケの天才は出てきません。
出てくるのは「自分を信じる天才」たちです。
頑張れなくなって投げ出しそうになった時、自分を活かせる場所がわからなくなった時、役に立てなくて不甲斐なかった時、主人公・花道の「天才ですから」を思い出して欲しいのです。

花道も他のメンバーも投げ出したり、逃げ出したりもします。元々ヤンキーですから。
でもつまらないことをやり抜いた先にしかない、成功があることに気づいちゃうんです。
天才はつまらないことから逃げてないことにも。
自分と同じように、自分を信じてやり抜いた人だから信じられる仲間になるんです。
だから最後に流川はパスを回せるし、花道は庶民シュートを選ぶんです。
「左手は添えるだけ」を何回やったかを知っている流川だから、信じたんです。

高校入学から夏までのたった半年間、単行本でも31冊の(ジャンプの大ヒット漫画にしては大変短い)短い物語です。
まだ自分が何者かわからないけど、有り余る熱量で走り抜けていく疾走感は青春そのものです。
映画にはない名台詞と名シーン、丁寧に描かれたそれぞれの葛藤に胸が熱くなります。
若い人も、おじさんおばさんになっちゃった人も、もう一度湘北の夏を駆け抜けて欲しいです。

ハウルの動く城 / Howl's Moving Castle
7

原作読書後に観てほしい!ハウルの動く城

公開当初から「ハウルの動く城」はよくわからない、という声が多く聞かれた。
登場人物たちが暮らす世界についてや主人公ハウルと王宮との関係が、混乱させているのかと思う。
でもそんな人たちにはぜひ原作を読んでから、もう一度鑑賞してほしい。
特にハウルとソフィーが初めて出会う際は、え?そっちがハウル?と驚くはずだ。
実は原作においてハウルはソフィーをナンパした兵士側の方だったのだ。
作中のマスコット的存在ヒンも実は別の登場人物の変身姿。
サリマン先生に代わりに戦争に行くのを断ってよと、とんでもない依頼をするハウルにもちゃんと理由があることが、物語後半に明かされる。
それだけでなく、あらゆる場面でハウルはソフィーを気にかけているのだ。
映画だけでは、ハウルは気まぐれなイケメンだが、原作ではきちんと理由がある偉大な魔法使い。
本作は宮崎駿監督にしては珍しく、原作と映画がニコイチなのだ。
原作未読者には不親切な物語進行が評価を下げていると思うと、とても残念だ。
が、それを抜きにしても、やはりジブリ作品として大変面白いし、画面の使い方が本当に素晴らしい。
特に原作にない空中散歩は素晴らしい発想だと思う。
キャラクター造形についても、過去一の美形に仕上げるために随分苦労したと聞く。
一度鑑賞した人も、できれば原作を読了後再度この映画を楽しんでほしい。

銀魂 / Gintama
9

銀魂は熱血ヒーローものではなく、寄り添うタイプの少年漫画だ。

銀魂は、空知英秋によって「週刊少年ジャンプ」で2004年から2018年まで連載された漫画である。週刊少年ジャンプといえば友情・努力・勝利のキーワードに代表されるように、主人公がレベルアップを重ね仲間と共に成長していく…そんな熱血ぶりが定石だが、銀魂には、その少年漫画らしい熱血さとは別の売りがある。物語の舞台は、江戸の幕末。「天人(あまんと)」という宇宙人の襲来によって、幕府は傀儡政権となっていた。主人公の坂田銀時は、かぶき町で万事屋を営んでいる、普段は無気力な27歳。その万事屋に、廃刀令によってすさんだ道場の復興を目指す志村新八が加入し、さらに戦闘部族の神楽も転がり込んでくる。1〜3話完結のショートストーリーが基本で、コメディ要素が多いが、物語が進むにつれて真選組動乱編などの長編ストーリーや主要キャラクターの死など、シリアスな展開もみられる。また、パロディや時事ネタが多く、他作品を連想させる作画やセリフが絶えない。それゆえアニメでは「偉い人に怒られる」とキャラクターに謝罪させるシーンもある。一見危なっかしいこれらの作風。しかし作者は、銀魂だからね、で許される空気感を読者と一緒に作り上げた。銀魂には明るい性格の登場人物が多いが、過去に攘夷戦争に参加していたり身内を亡くしていたり、それぞれに背負っているものがある。単なる熱血漫画ではなく、この人間臭いリアリティが漂う作風こそが、読者を味方につけている。さらに、2011年の東日本大震災の直後に公開された作品では、銀時と仲間たちが1列に並んだイラストと共に、「悲しい事がたくさん起こって 前向きになんてなれない時もあると思いますが そんな時は 気負わず横でも向いてください みんなついております、みんなで一歩ずつ前へ 進んでいきましょう」というメッセージが添えられ、注目を集めた。笑いあり涙ありの銀魂は、熱血ヒーローものではないが、寄り添って軽く肩を叩いてくれる、兄弟のような漫画だ。

ブロークバック・マウンテン / Brokeback Mountain
8

孤独な話

すごく悲しい話でした。若いころに出会って、山の中では周りの目もないし、ラブラブで過ごしていたのに、降りたらそれぞれ家庭をもって、それでも結局会ってしまうという…。イニスが山を降りる時、すごくすねてたのはもう二度とジャックには会えないと思ってたからで、それに対し楽観的なジャックっていう対比もおもしろいと思うし、その後、二人の関係もジャックはずっと一緒にいれる選択肢もあったって思ってて、イニスはそれはありえないと思ってるっていうすれ違いが切なかったです。
だから、もう別れた方がいいかもって思っても別れられない、お前と別れられる方法があったら知りたいよみたいなセリフが印象的でした。2人は、恋でも悩んでいたし、自分を隠しているからか孤独でもありました。特にイニスなんて、強い男じゃなきゃいけないって自分で自分を縛ってるせいか、女からみて一緒に生活したくないタイプだし、どんどん孤立している感じで見ていてつらかったです。もちろん、性的マイノリティの話でもあるけど、それだけじゃなく、孤独な人、自分のことを話せない人の話だったんだろうなと思います。切ないし、つらいけど、なんだか何度も見たくなってしまう映画でした。

モニカ(歌手) / Monica
9

良質なR&B、HIP HOPソウル

90年代のアメリカでは、早熟なティーンのR&Bアーティストがブームのようになっていました。
アリーヤを筆頭に、ブランディー、デスティニーズ・チャイルド、アッシャーなど、才能あるティーンが活躍。
その中で、一際硬派な魅力を放っていたのがモニカです。

95年にアルバム『Miss Thang』でデビューしたときは15歳。
幼い頃から教会で歌ってきたモニカは高度な歌唱力を持ち、正統派なR&B、HIP HOPソウルを聴かせます。
少しハスキーなその声には温かみと包容力があり、安定感抜群。
クールな風貌も際立っています。

デビュー作は渋いHIP HOPソウルでまとめられていましたが、HIP HOP、R&Bがメインストリームの音楽となり、ブームが過熱するようになるにつれ、モニカの音楽もドラマチックに変化していきます。
どちらかと言えば、マニッシュな魅力を持ち、ユニセックスなストリートの少女といった雰囲気でしたが、女性らしいグラマラスな艶を感じさせるようになり、美しいメロディーを聴かせるようになっていきました。

その中で注目されたのは、同世代の女性R&Bシンガーのブランディーとデュエットした1998年の『The Boy Is Mine』。
この天才ティーン二人の共演では美しいハーモニーが絶品で、グラミー賞を受賞しています。
一人の男性を取り合うという歌詞の内容だったためか、二人の不仲説も囁かれていましたが、メディアというものは、ライバル関係を仕立て上げたい傾向にあるので、その真偽はわかりません。
しかし、2012年になってまた二人はデュエット曲『It All Belongs to Me』をリリースしていて、その関係は良好であることがうかがえます。

良質なR&Bをリリースし続ける貴重な存在であるモニカ。
一貫したスタンスは信頼できるものであり、安心して聴くことができます。