銀魂は熱血ヒーローものではなく、寄り添うタイプの少年漫画だ。
銀魂は、空知英秋によって「週刊少年ジャンプ」で2004年から2018年まで連載された漫画である。週刊少年ジャンプといえば友情・努力・勝利のキーワードに代表されるように、主人公がレベルアップを重ね仲間と共に成長していく…そんな熱血ぶりが定石だが、銀魂には、その少年漫画らしい熱血さとは別の売りがある。物語の舞台は、江戸の幕末。「天人(あまんと)」という宇宙人の襲来によって、幕府は傀儡政権となっていた。主人公の坂田銀時は、かぶき町で万事屋を営んでいる、普段は無気力な27歳。その万事屋に、廃刀令によってすさんだ道場の復興を目指す志村新八が加入し、さらに戦闘部族の神楽も転がり込んでくる。1〜3話完結のショートストーリーが基本で、コメディ要素が多いが、物語が進むにつれて真選組動乱編などの長編ストーリーや主要キャラクターの死など、シリアスな展開もみられる。また、パロディや時事ネタが多く、他作品を連想させる作画やセリフが絶えない。それゆえアニメでは「偉い人に怒られる」とキャラクターに謝罪させるシーンもある。一見危なっかしいこれらの作風。しかし作者は、銀魂だからね、で許される空気感を読者と一緒に作り上げた。銀魂には明るい性格の登場人物が多いが、過去に攘夷戦争に参加していたり身内を亡くしていたり、それぞれに背負っているものがある。単なる熱血漫画ではなく、この人間臭いリアリティが漂う作風こそが、読者を味方につけている。さらに、2011年の東日本大震災の直後に公開された作品では、銀時と仲間たちが1列に並んだイラストと共に、「悲しい事がたくさん起こって 前向きになんてなれない時もあると思いますが そんな時は 気負わず横でも向いてください みんなついております、みんなで一歩ずつ前へ 進んでいきましょう」というメッセージが添えられ、注目を集めた。笑いあり涙ありの銀魂は、熱血ヒーローものではないが、寄り添って軽く肩を叩いてくれる、兄弟のような漫画だ。