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reallllllandyのレビュー・評価・感想

みゆき(漫画)
9

あだち充傑作の「みゆき」

あだち充著作の「みゆき」についてのレビューとなります。
若松真人という主人公は、大した取り柄のない人物ではあります。しかし彼には人間味があり、誰からも嫌われることのない裏表のなさが魅力的な人物で、とても好感を持って読み進めることができます。またヒロインはふたりいて、活発で誰からも人気のある妹キャラのみゆきと、ザ・ヒロインであり高身長高学歴美人といったお姉さん系キャラのみゆきのふたりです。その他にメガネモブキャラだけど真っ先に結婚する女友達や、男前だけどすぐボロがでるキャラなど多彩な人物が描かれています。
物語が進むにつれて登場人物も年齢を重ねていき、義妹のみゆきは高校受験を迎えます。また、主人公たちも大学受験に挑むなど、自分の人生にも重ねて共感できる部分があります。単行本では全12巻、ワイド版は5巻で発売されていますが、すぐに読み終わってしまう物語です。
学生時代の恋愛モノとなっており、ご自身の学生時代と重ねてなつかしむこともできますし、まだ若い年齢の方については高校時代や大学時代についてこんな楽しみ方があるのかと、はっとさせられる部分もあります。同級生のみゆきも含めたメンバーでひと夏海の家でのアルバイトをしているところから始まり、同級生のみゆきにフラれたと思った後に義妹のみゆきに会うというところから、もうあだち充ワールドに引き込まれますので、何回も読み返す価値があります。

繕い裁つ人
10

本当に美しい映画

まず主演の中谷美紀さんが本当に美しい。佇まい、表情、仕草、本当に素晴らしい女優さんだと思う。そしてこの作品にはこの人しかいないと思わずにいられない。
恐ろしい精度と情熱で仕事をして亡くなった祖母の大きすぎる影にひっそり沈んだまま、自身の天才ぶりを発揮する裁縫士のお話。
神戸という舞台もとても素敵で、その画面の美しさとなんとも言えない異世界感にも深く癒される。だけど、ただ美しい、素敵だなぁ、という映画ではなく、強い物語がきちんと描かれている。それに関わる直向きで健気な営業マンもストーリーに欠かせない。
誰もが人生で壁にぶつかるけれど、こんな風に決定的に背中をぐぐぐっと押してくれる人がいたらいいなぁ、しかもこんなに諦めずに、と羨ましくもなる。
もう一つ羨ましいものが、劇中に出てくるあの真っ白なケーキ!あんまりにも美味しそうに食べるから、ということもあるけれど、カフェの雰囲気といい、ケーキのビジュアルといい、ホールで食べるところといい、全てが完璧。食べたことのないケーキなのに、なんだか一緒に食べているような贅沢な気分にさせられる。劇中に出てくる永野芽郁さんもとても可愛らしい。きっと輝く人って、少しの役でもきちんと輝けるのだろうな、という気持ちにさせられた。
見る人をゆったり、じっくり、とても贅沢な気分に浸らせてくれて、最後にはとても清々しい気持ちにさせてくれる素晴らしい作品。

BANANA FISH / バナナフィッシュ
10

名作中の名作少女漫画

少女漫画なのに少女は出てこない。なんやこれ、と思いながら1話から見続けていると、あっという間に夢中になっている、そんな作品です。
ギャングのボス「アッシュ」と写真家の助手「英二」の友情を、バナナフィッシュという存在を中心に、非常に危うく、しかし逞しく表現した作品です。単純な友情ではない、まさにこれこそ愛ですね。BLちっくな表現も織り混ざりますが、あくまで人間を味わう一種の手法として受け取ってもらいたいです。
そして何より複雑な人間関係がまた、その味わいを深めていきます。殺された兄、殺した親友、殺されたボス、殺した兄貴。キャラクターの憎悪が、キャラクター自身に降りかかる、躊躇のない絶望の叩き売り。だからこそ映えるのが英二の温かさと、強さです。ギャングのボスとして圧倒的な力を持つアッシュですが、それは決して望んで手に入れたものではありません。作為的に与えられ、逃れられなくなる地獄への切符そのものなのですから。
見返りばかりを求められて、純粋に手を差し伸べられることを知らずに育った山猫は、英二という存在に触れることで、心の氷を溶かし始めます。しかし、その流水が血に変わる時、友情は引き裂かれ、また新たな試練が与えられます。結末は賛否両論ですが、それが名作の証なのではないでしょうか。読者の望む結末が、本当の幸福とは限らない。見る人によって解釈が180度変わるような、後味がずっと残り続ける、非常に美しいラストをお楽しみください。また、番外編、後日談としてanother storyもございますので、そちらも是非ご一読ください。何度も噛みしめることのできる、名作中の、名作です。

ムシブギョー
7

王道少年系

無理矢理で強引な展開が多かったが、いかにも少年漫画のバトル物らしい清々しさがあった。主人公である月島仁兵衛が強くなる過程も修行による必殺技会得あり、秘めた能力の覚醒ありで、王道そのものと言った感じです。この仁兵衛だが、あまりにも真っ直ぐな感じで、素直といえば素直だが、ここまで来ると愚直を通り越して、ただのお馬鹿にさえ思えてくる。ただ、この馬鹿の一念が敵を倒したり、仲間の心を動かしたりする訳で、これこそが仁兵衛の一番の武器と言えるだろう。
原作はそれなりに長いので、最初と最後では変わったなと感じる面もいくつかある。敵に関しては、序盤こそでかい蟲を相手にしていたのに中盤以降は蟲狩、蟲人などの人型の敵が相手。巨大蟲相手のバトルは大味な印象があったので、お互いに技術を競い合うような人型、相手の方が盛り上がる為の処置なんだなぁと思う。蟲奉行所の本来の役目から逸脱してきているような気がする。ヒロインも当初はお春がメインヒロインかと思っていたら、火鉢の印象がどんどん強くなり、更に中盤以降は蟲奉行が完全なメインヒロイン。まぁ色々試行錯誤があったのだと思う。唐突に紹介済みと言った感じで現れるキャラいたりと、原作の登場エピソードをカットしたのかなと思われる部分も有ったりする。

ルーム / Room
9

小さな部屋より外の世界が怖いこともある

実際にあった監禁事件をモデルにした作品です。小さな部屋に女性とその息子が住んでいます。母親は高校生の時に誘拐、監禁され、子供はその誘拐犯との間にできた子供。
前半はその親子が、監禁された部屋から脱出するため試行錯誤する様子が描かれ、後半は脱出後の親子や、その周りの人たちが困惑しながらも親子を受け入れようとする様子が描かれます。
誘拐犯との子供でも、女性が母親として息子を大事に思う気持ちが伝わってきました。部屋にいる間に行われる運動。小さな部屋でも、子供にできる限りの筋力をつけさせようとする愛を感じました。
部屋にいる間、息子を必死に守り育てようとしていた女性が、部屋からの脱出後自分の母親がパートナーと仲良く生活していた様子や、誘拐時の同級生の写真、自分の報道などで次第に心のバランスが崩れている様子がとても痛々しかったです。
子供の演技も上手でした。部屋で生まれ部屋が世界の全てだった息子が、外の世界を怖がる様子、心身のバランスを崩していく母親への気持ち、初めての友達…。外の世界を通して、精神的に成長していく様子が本当にうまく表現されていました。
この親子がその後どんな人生を歩んでいくのか、続編が見たくなる映画です。