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TakagiEa4のレビュー・評価・感想

ゴールデンカムイ / Golden Kamuy / 金カム
8

ゴールデンカムイ~文化に留まらない魅力~

日本は、単一民族が多数派であり、興味を持たない限りは他文化に触れにくい国である。そんな他文化に触れる、ひとつのきっかけとなる漫画作品が『ゴールデンカムイ』だ。
作中でヒロイン・アシリパは、アイヌ人として暮らし、成長してきた。主人公・杉元佐一や他の登場人物へ、多くのアイヌ文化を語り、アイヌ料理を作って食べさせる。その姿は、自然と読者にまでアイヌ文化への親しみを持たせている。
アイヌ文化が発展していた頃、たとえ北海道であれ、その文化は本州と大きく異なり、実質、本州の文化とはかけ離れたものだった。
そして、この作品の素晴らしいところは、文化の紹介に留まらず、エンターテイメントとしての魅力に溢れているところだ。
登場人物たちは、家庭環境に問題を抱えて育ってきた者が多く、そうでない者も、何らかの悲哀を感じざるを得なかった人生経験がある。
『ゴールデンカムイ』の舞台は明治時代であり、令和を生きる私たちには大昔のことにも思えるが、読み進めていくと、どこか登場人物たちの人生経験が、他人事とは思えなくなってくる。
親子関係の歪み、行き違いによる人間関係のもつれ。登場人物たちの苦悩は、いつしか読者の悩みとリンクし、感情移入してしまう。
大人の登場人物たちが、複雑な事情に揉まれる中、ヒロイン・アシリパもまた、悲しみを抱えることとなる。だが、常に真っ直ぐ前を見据えて歩む。その姿には大いに勇気づけられる。

ヨルシカ / Yorushika
10

現代の私達が失った夏を描くヨルシカ、その魅力に迫る

ヨルシカというミュージシャンをご存知だろうか。
「ウミユリ海底譚」等のボーカロイド曲を手掛けたn-bunaがボーカルsuisと共に年から活動を始めたバンドである。
このバンドの魅力は何といっても確立された世界観だ。
一環として夏の曲を書き続けている、いや、書かねばならないという書き方が正しいのかもしれないが、とにもかくにもそんなバンドはまあ珍しい。
ヨルシカの楽曲には、エルマとエイミーという二人の男女が登場する。
音楽を志し、音楽を残して姿を消した少年エルマ。エルマの残した音楽に導かれ、その音楽を模倣することでエルマの面影を探し続ける少女エイミー。
ヨルシカはデビュー当時より一貫してこの二人の”夏”を描き続けている。
初回限定盤には「手紙」や「日記」といった特典がついており、二人の物語が文字として浮き上がってくるような工夫がなされている。
それほどまでに徹底した世界観構築のもと、私達はいつしかこの二人の物語の目撃者となるのだ。
現代の私達は、夏を意識することがあるだろうか。イベントとしての夏ではない。夏自身が持つ強烈なエネルギーと、それと同じ程の寂しさを胸いっぱい吸い込むことがあるだろうか。
日陰にそよそよと揺れる夏草に思いを馳せたことがあるだろうか。
ヨルシカは、エルマとエイミーの物語に、夏そのものの持つ空気を纏わせ、私達を魅了し続けているのだ。