現代の私達が失った夏を描くヨルシカ、その魅力に迫る
ヨルシカというミュージシャンをご存知だろうか。
「ウミユリ海底譚」等のボーカロイド曲を手掛けたn-bunaがボーカルsuisと共に年から活動を始めたバンドである。
このバンドの魅力は何といっても確立された世界観だ。
一環として夏の曲を書き続けている、いや、書かねばならないという書き方が正しいのかもしれないが、とにもかくにもそんなバンドはまあ珍しい。
ヨルシカの楽曲には、エルマとエイミーという二人の男女が登場する。
音楽を志し、音楽を残して姿を消した少年エルマ。エルマの残した音楽に導かれ、その音楽を模倣することでエルマの面影を探し続ける少女エイミー。
ヨルシカはデビュー当時より一貫してこの二人の”夏”を描き続けている。
初回限定盤には「手紙」や「日記」といった特典がついており、二人の物語が文字として浮き上がってくるような工夫がなされている。
それほどまでに徹底した世界観構築のもと、私達はいつしかこの二人の物語の目撃者となるのだ。
現代の私達は、夏を意識することがあるだろうか。イベントとしての夏ではない。夏自身が持つ強烈なエネルギーと、それと同じ程の寂しさを胸いっぱい吸い込むことがあるだろうか。
日陰にそよそよと揺れる夏草に思いを馳せたことがあるだろうか。
ヨルシカは、エルマとエイミーの物語に、夏そのものの持つ空気を纏わせ、私達を魅了し続けているのだ。