ゴールデンカムイ~文化に留まらない魅力~
日本は、単一民族が多数派であり、興味を持たない限りは他文化に触れにくい国である。そんな他文化に触れる、ひとつのきっかけとなる漫画作品が『ゴールデンカムイ』だ。
作中でヒロイン・アシリパは、アイヌ人として暮らし、成長してきた。主人公・杉元佐一や他の登場人物へ、多くのアイヌ文化を語り、アイヌ料理を作って食べさせる。その姿は、自然と読者にまでアイヌ文化への親しみを持たせている。
アイヌ文化が発展していた頃、たとえ北海道であれ、その文化は本州と大きく異なり、実質、本州の文化とはかけ離れたものだった。
そして、この作品の素晴らしいところは、文化の紹介に留まらず、エンターテイメントとしての魅力に溢れているところだ。
登場人物たちは、家庭環境に問題を抱えて育ってきた者が多く、そうでない者も、何らかの悲哀を感じざるを得なかった人生経験がある。
『ゴールデンカムイ』の舞台は明治時代であり、令和を生きる私たちには大昔のことにも思えるが、読み進めていくと、どこか登場人物たちの人生経験が、他人事とは思えなくなってくる。
親子関係の歪み、行き違いによる人間関係のもつれ。登場人物たちの苦悩は、いつしか読者の悩みとリンクし、感情移入してしまう。
大人の登場人物たちが、複雑な事情に揉まれる中、ヒロイン・アシリパもまた、悲しみを抱えることとなる。だが、常に真っ直ぐ前を見据えて歩む。その姿には大いに勇気づけられる。