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9humi-aoi8008のレビュー・評価・感想

進撃の巨人 / Attack on Titan
10

鬼才・諫山創が作り上げた「進撃の巨人」の真の楽しみ方

「進撃の巨人」の真の面白さをご存じでしょうか。
実はこの作品は「タイトルだけ聞いたことがある」「途中までは読んだことがある」という方ではわからない壮大なテーマが埋め込まれています。

物語は主人公のエレン・イェーガーが幼馴染のミカサ・アッカーマンやアルミン・アルレルトと過ごす日常シーンから始まります。
「進撃の巨人」の世界では人類は壁に囲まれた都市で平和に暮らしていますが、壁の外には人間を捕食する恐ろしい巨人で溢れかえっています。
そんな中平和に暮らしていたエレン達の日常は突如眼前に現れた超大型の巨人によって壁とともに破壊されました。巨人たちが侵入し、人々は次々に巨人に生きたまま捕食されていきました。
ついにはエレンの母までもが目の前で巨人に食べられ死んでしまい、エレンは巨人への復讐を誓います。
ここまでのストーリーはとても有名で、コマーシャルなどでエレンの怒りのこもった「駆逐してやる!」というセリフを耳にした方も多いでしょう。

その後エレンはミカサやアルミンとともに訓練兵団に入隊し、再び現れた超大型巨人の討伐に挑みますが、最後はアルミンをかばい巨人に食べられてしまいました。
「主人公が変わるのか…?」というドキドキ感を味わうことになりますが、安心してください。エレンは生きていました。正確には巨人の胃袋の中で意図せず巨人化し、復活を果たし人類は巨人達との争いで初めて勝利します。
人々はもうパニックです。巨人化能力を得たエレンを人類の希望だと信奉したり、巨人化したエレンに忠誠心はあるのかで議論が巻き起こりますが、最終的には調査兵団という壁外調査を任務とする組織に迎え入れられることになりました。

このあたりで「人間が巨人と戦う作品だと思ったのにエレンが巨人化するなんて」と読むのを辞めた方も多いでしょう。
しかし進撃の巨人はそんな単純なストーリーではありませんでした。
この後訓練兵団の同期のアニ・レオンハートやライナー・ブラウン、ベルトルト・フーバーの正体が巨人であり人類の敵だったなど次々と衝撃の事実が判明します。しかし、1番の衝撃は何と言っても巨人によって滅亡したと思われていた壁外の人類は生きており、「先進的な文明国」に暮らしていたことでした。

実をいうと、進撃の巨人の根幹はエレン達の祖先であるエルディア人が作り上げたエルディア帝国とそれに対立する国々の構図でした。
エルディア人の始祖であるユミル・フリッツが巨人化の能力を会得し、その力を利用したエルディア人はエルディア帝国を大きく拡大させました。エルディア帝国の野望は留まることを知らず、あっという間に大国「マーレ」を滅ぼします。マーレを滅ぼしたエルディア帝国は多民族を弾圧し「民族浄化」という恐ろしい政策を実行しましたが、この支配を憂いたエルディアの王であるカール・フリッツは「巨人大戦」という争いを契機に、自身に賛同した国民を引き連れパラディ島という島に閉じこもりました。
この時に王についていけなかった国民はマーレによって収容所に送られ、過酷な生活を強いられるようになったのです。

「進撃の巨人」は23巻から突如全く知らない人物の視点の物語が始まり、今までの人物はほとんど登場しなくなりました。
いきなり登場したこの少年少女たちは、マーレの収容区で暮らすエルディア人の血を引くガビやファルコという人物です。当時リアルタイムで進撃の巨人を読んでいた読者は大混乱です。
マーレの戦争兵器として巨人の力を継承するため日々訓練に勤しむガビやファルコたちですが、マーレ人から当たり前のように酷い差別を受けます。
それでも同じエルディア人の訓練生やマーレ人ながらも比較的に優しく接してくれる人たちがいましたし、ガビやファルコは過酷ながらも何とか最低限の日常を過ごしていました。

しかし、やはり登場するエレンたちの存在で日常は一変します。
パラディ島勢力と呼ばれるエレンと調査兵団の仲間たちはマーレの収容区を襲撃し、マーレ人を大量に殺害しました。
ガビやファルコの仲間やマーレ人でありながら、ガビやファルコをからかいつつも優しく接してくれた収容区の門兵のおじさん達も犠牲になります。
この時点でガビやファルコの視点に慣れてきた読者の心情は激しく揺れたことでしょう。

ただこれで終わるほど「進撃の巨人」は甘くありません。
門兵のおじさん達を殺害したのはエレンの同期のサシャ・ブラウスという読者人気も高い女性でしたが、ガビは復讐を誓いサシャを殺害しました。
ガビはパラディ島勢力に捕まりパラディ島に移送されますが、看守を殺害し脱走したところをエルディア人少女のカヤに助けられます。この優しいカヤは目の前で母親が生きたまま巨人に食われ、動けなくなっていたところをある人物に助けられた過去がありました。察しのいい方は気づいたかもしれませんがカヤを助けた人物はガビが殺したサシャでした。

もうお分かりでしょうが「進撃の巨人」のテーマは単に人間が巨人に立ち向かうことではなく、人類の復讐の連鎖を描いたものでした。
誰かが殺され、殺された誰かの仲間がまた誰かを殺す。人類の歴史はこの繰り返しです。
今、現実で起きている問題を紐解いてもほぼ全てがこれに収束します。人間は自分が正義だと信じて、残酷に敵を殺す歴史をひたすら続けているのです。

「進撃の巨人」はあえて両方の視点を読者に見せることによって、読者が復讐の連鎖に気付く巧妙な作りになっています。
この連鎖に気づいた読者こそが真に「進撃の巨人」を楽しめた人と言えるでしょう。

最後にマーレ人捕虜でありながらサシャと懇意な間柄であったニコルの言葉を記載して紹介を終えます。「森から出るんだ。出られなくても…出ようとし続けるんだ…」。

Ado / アド
8

「新時代の歌姫」!七色の歌声をもつAdoの魅力に迫る

Ado(アド)は2020年に配信限定リリースした「うっせえわ」でメジャーデビューした女性歌手。デビュー当時は18歳だった。
「うっせえうっせえうっせえわ!」という衝撃的なフレーズと力強い歌声は、当時あらゆる場所で流れていた。テレビやコンビニ、ドラッグストアにいたるまで、一度も耳にしたことがない、という人の方が少ないだろう。同曲は社会現象と言えるほどの記録的ヒットを叩き出し、2022年5月時点で総再生回数は2億回を超えている。挑戦的なフレーズや、Adoの「がなり声」を使った鬼気迫る歌い方は中毒性が高く、若者の間で大人気となった。そして、Adoの快進撃はここからはじまったのだ。
Ado自身は「歌」専門であり、作詞作曲は行っていない。しかし、その歌唱力を評価した多数のアーティストから楽曲を提供されるようになったのだ。「うっせえわ」とは真逆のバラードからラップパートの入った曲まで、様々な曲を提供されたが、Adoはそれらを完璧に歌いこなした。彼女は「がなり」だけでなく、低音から高音まで多重人格のように声色を切り替えて歌唱することができるのだ。
さらに、Adoの歌唱力を世に広めることとなったのが、映画『ONE PIECE FILM RED』だ。作中の歌姫、ウタの歌唱パートをAdoが担当し、楽曲は、中田ヤスタカ、Mrs. GREEN APPLE、秦基博など、7組のアーティストが提供している。ウタの感情によって変わる全く違う7つの楽曲を、Adoは見事に歌いこなした。それを裏付けるように、本作品はワンピース史上最高の興行収入を記録したのだ。
デビュー前から、ニコニコ動画などで「歌い手」として活動してきた彼女は、デビュー後も顔出しを一切していない。姿を見せず、歌声だけで人々を魅了する彼女は、まさに「新時代の歌姫」である。