激突!

激突!

『激突!』とは、1971年に公開されたテレビ映画である。監督はスティーヴン・スピルバーグ、主演はデニス・ウィーバーが務めた。第1回アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを獲得した作品である。
セールスマンのデイヴィッド・マンは、車でカリフォルニアへ向かう途中のハイウェイで1台のトレーラーを追い越した。その直後から、トレーラーはデイヴィッドの車を追いかけまわすようになる。執拗に追いかけてくるトレーラーに追われ続ける恐怖と、トレーラーの運転手との対決を描く。

激突!のレビュー・評価・感想

激突!
7

映像の魔術師スピルバーグの商業映画デビュー作『激突!』

『激突!』は、リチャード・マシスンが脚本を書いた、1971年公開の米国のアクションスリラー映画で、原作は1971年に発表した自身の短編小説です。
この映画でスティーブン・スピルバーグは映画監督として初めて名を売りました。配給はユニバーサル映画です。
デニス・ウィーバーはデイヴィッド・マン役で出演しており、彼は顧客に面談するためにプリマスヴァリアントを運転するカリフォルニアの会社員という設定です。
マンがペトルビルト281型トレーラーを追い抜くと、このトレーラーはマンの運転するヴァリアントを追い始め、彼を恐怖に陥れます。
本作は当初は1971年11月13日にABCネットワークのテレビ版映画として放映されましたが、テレビ放映後、追加シーンを付加した「国際版」が海外で劇場公開されました。
この作品によってスピルバーグの監督手腕が高く評価されたため、本作品は影響力のある古典的なカルト映画であると認識されています。
『激突!』は硬質なスリラー作品であり、カメラのレンズの背後にいる監督、若き日のスピルバーグの才能が画面から溢れ出ていると言えます。
最初の放映時から時間を経て見返してみても、余計な要素をすべて削ぎ落とした、いわば今や神話となったソリッドなアクションスリラー作品からは公開時のインパクトを感じ取ることができるのです。

激突!
9

車に追いかけられるだけなのに!

とあるサラリーマン?がタンクローリーに追いかけられまくる話です。昨今、煽り運転問題が話題になっていますが、それを予見したかのような作品でびっくりしました。タンクローリーの運転手の顔は見えない作りになってて、何考えてるのかわからなくて不気味だし、車が意思を持ってモンスター化しているかのようです。スティーブン・スピルバーグの作品なのですが、この人はほんとひとつのものと対峙するホラーがうまいなと思いました。ジョーズもサメだけで引っ張ってたし、宇宙戦争とかもそうです。主人公が最初訝しげだったのが、ああ、俺狙われてる!とわかってからの恐怖とか上手いなと思います。結構古い作品なのに、今でも十分通用すると思います。昔、本作のテレビ放映時、主人公を徳光和夫さんが吹き替えたと聞きました。それは私は見たことありませんが、それってどうなの?と思えるキャスティングです。それでも、面白いと思った人がいたということは、本当に面白いということです。車は本当に怖いです。この映画のようなことが現実にも起きそうな昨今の事情と合わせて考えると、より恐怖を感じます。もちろん、ホラー要素だけでなく、どうにか車から脱出するところのカーアクションとかもすごかったです。

激突!
10

激突!

とても恐ろしい映画だ。映画の始まりは何気なく、静かにスタート。平凡なサラリーマンが仕事で出ていく。カーラジオを聴きながら、とても穏やかな天気。眠気と闘いながら、ふと前を見るとタンクローリーがのろのろと動いている。邪魔、うっとうしい、イライラする、仕事に遅れる。そこで、タンクローリーを追い抜く。幸せな気分、心地よい風。本人は知らない、悪夢が始まつたことに。転寝気分で運転していたその時、タンクローリーにぶつかる。何気なくかすった程度。ほんのジャブ程度。しかしタンクローリーの運転手にしてみれば、戦いが始まる、一方的に。青ざめるサラリーマン。逃げる、逃げる、逃げる。ここまで逃げれば大丈夫だとほっとする。しかし…。
この映画を見た当時はアメリカは怖いなと、その点日本は大丈夫と思っていたものだが今や日本も…。
当時無名の若き監督25歳、日本はおろか世界でもまったく無名だった。2年後にある映画で有名となり、その後世界一の映画監督になるとは、その時は誰も知らない。おそらく本人もこの作品がなければ。まさに運命的な出会いがこの作品を通してあった。あなたは運命を信じるだろうか?私は信じる。しかし私には運命的な出会いはなかった。才能の差、人間的な器の差という事だろうか。

激突!
8

スピルバーグの出世作

アメリカのとある田舎町の道路を舞台に、大型トラックに付け回されるドライバーの恐怖を描いた作品。面白いと思う演出のひとつが、最後まで大型トラックの運転手の顔がわからないこと。最近、日本でも報道される「あおり運転」なるものを40年以上前に予見(?)していたスピルバーグ(原作はリチャード・マシスンだが)の先見の明は、特筆に値するものだと思います。
ストーリーはシンプルなものですが、これだけのシチュエーションで映画を一本撮るスピルバーグの手腕には脱帽モノです。この映画は小学生のときに観ましたが、子どもの視点でも難しくなく、十分楽しめます。この映画が、カーアクションの名画が幾つか創られたキッカケだったのでは、というのは穿った意見なのでしょうか。
また、ある映画評論家がこの大型トラックは我々の人生にある不安というものを象徴しているのでは…と論じたことに大いに共感したのを憶えています。大人になると子供特有の屈託のなさがなくなってしまい、人生に対して脳天気でいられなくといったこともまた、事実なのでは。
最後に…この作品とは対照的な、大型トラックの視点から描いたペキンパーの「コンボイ」と見比べると、また面白いのでは?とオススメさせていただきます。