大人になっても心の中のはつらつとした少女の部分を大切にできる
中世イタリアを舞台としたアルテという絵描きを目指す貴族の少女のお話。単行本の巻末後書き漫画を読むに、作者はしっかり時代考証をしているので、世界史好きな人にも楽しめる内容になっています。
現代社会より遥かに女性の生き方が限定されている中で、最初は気合、次第に愛嬌やしたたかさにより次々と障壁を打ち破っていく様子は読んでいて元気をもらえます!
また、他の登場人物についても、障壁に関して「そういうものだから」と受け入れたくましくやり過ごすアルテの母親や、アルテのように障壁を乗り越えていく力はないけど自分なりにできることをやっていこうとするダーチャなど、きっと誰かしらに共感できるはずです。
そして恋愛要素として、師匠であるレオに想いを寄せるようになるのですが、これも単なるラブストーリーに収まるものではないところが味わい深いです。女性絵師という異例中の異例である自分のことを認めてくれた大切な存在として慕い、でも表向きでは恋に溺れるのではなく師匠としてひそかに大切に思い続ける様子が、作品を通して終始描かれております。レオも昔の自分を想起させるアルテをどこか特別な存在とみているのでもどかしさ半分、でも明らかな恋愛というわけではないこの距離感を続けてほしいとも感じます。