やがて君になる / やが君 / Bloom Into You

やがて君になる / やが君 / Bloom Into You

『やがて君なる』とは、仲谷鳰によるマンガ作品。同作を元にアニメ化、舞台化、小説化がされている。人に恋する気持ちがわからない小糸侑と、誰に告白されても心動かされることがなかった七海燈子を中心に少女同士の恋愛が描かれている百合作品。
2018年10月から12月まで全13話でアニメ化、2019年5月に舞台化されている。外伝ノベライズとして『やがて君になる 佐伯沙弥香について』も発売されている。

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やがて君になる / やが君 / Bloom Into Youのレビュー・評価・感想

やがて君になる / やが君 / Bloom Into You
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急成長ジャンル百合の有名代表作「やがて君になる」

百合作品、すなわち、程度に差はあれどGL要素の含まれた作品が受け入れられ、評価されるようになりました。
ジャンルもとい市場の拡大に大きく貢献することとなったのが「やがて君になる」です。

マンガの売り上げは100万部突破。アニメも放送され評価は上々と、同性愛コンテンツにしてもかなりの反響を呼んだ作品です。

この「やがて君になる」は、高校生になった主人公の小糸侑と、成績優秀で品行方正な完璧人間の七海燈子が中心となって物語が展開されていきます。
この二人の共通点は「人を好きにならないこと」。つまり恋愛感情を抱いたことがないのです。
そんな燈子の前に、同じ考えをしている後輩の侑が現れ、燈子は“私を好きにならない侑が好き”ということを告げます。
そうして二人をはじめ様々な恋愛観や人生観に触れ、深い人間ドラマが展開されていく作品になります。

この漫画の評価の中で特に多いのが、心理描写が素晴らしい、絵柄がマッチした繊細な世界観です。これはおそらく女性同士の恋愛というテーマが生んだ特性だと思います。

読み進めれば読み進めるほど複雑に絡んでいく人間関係に、おそらく物語の虜になってしまうことと思います。
読み終われば満足と共に自身の思考も深く考えさせられる、そんな作品だと思います。

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さて、芽生えたものはなんだろうか。

『Bloom Into You』——。そんな副題を持つ『やがて君になる』という物語は、恋愛感情が理解できないことに悩む主人公・小糸侑が、眉目秀麗の先輩・七海燈子が告白を受けている場面を覗き見てしまうところから物語が始まる。
侑は橙子の、「誰にも恋愛感情を持たない」部分に親近感を抱くのだが、橙子は侑の、「誰かを特別に思わない」部分に惹かれてしまう。
一話でいきなり前提が覆る展開となる。「先輩は私と同じじゃないんですか」と作中で侑が呟くのだが、一話の展開に揉まれた読者の心の言葉だろう。そして、橙子が侑に惹かれた理由には彼女の生い立ちに起因するものがあり……と話が大きく膨らんでいく。
橙子の感情を受けて侑はどうするのか?橙子が侑に惹かれた理由は何か?そして二人の関係はどうなるのか?
ここであらかじめ言っておきたいことは、ジャンルこそ女の子同士の恋愛、すなわち百合に分類されるのだが、物語を読んだ人間ならばその枠にとどまらないことが言えよう。確かに濃厚な百合表現が含まれる。しかし侑と橙子が、お互いの関係性や周囲の人間関係において悩み、もがいている姿は、「誰かを好きになる」「誰かを特別に想う」時に誰にでも起こりうる普遍的なものなのだ。
「女の子同士の恋愛なんて」のような百合作品に多く見受けられるテーマはこの作品には見受けられない。あくまでも主題は「人を好きになることはどういうことなのか」なのである。
『やがて君になる』は、普段考えているようで、身近にあるのに漠然として分からない感情を鋭く切り込んだ漫画なのである。
物語が進み、周りの感情を巻き込みながら(佐伯沙弥香を筆頭に、脇を固めるキャラクターがまた良い味を出している)、侑と橙子の関係は結末を迎える。
「好きってなに?」「特別になるってなに?」と、ふたりが積み重ねた感情を行末を読むと、きっと「好き」という気持ちについてのひとつの納得が、読者の心に芽生えることだろう。

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繊細な心の動きに目が離せない作品

女性同士の恋愛を描いた、いわゆる「百合」作品の中には、男性が一切登場しないものも少なくはありませんが、この作品には男性が複数登場しており、よりリアルな学校生活の中での恋愛が描かれています。恋を知らない少女・小糸侑が、一見完璧に見える先輩・七海燈子と出会い、お互いが少しずつ変化していくこの物語。百合がテーマと言うよりは、ヒューマンドラマと言えると思います。

それぞれの登場人物が、様々な人と出会い、それぞれ違った形で成長していき、その中で生まれる恋愛感情などが自然に表現されています。一目惚れなどではなく、少しずつ関係性に変化が表れていくことが、感情移入しやすく、読者の心を掴みやすい点だと思います。
また、百合作品においては、登場人物が女性同士の恋愛に全く抵抗がないものと、抵抗があるものに分かれていますが、この作品はどちらかと言えば後者で「女同士なんて…」という葛藤と、それに反して膨らんでいく感情が巧みに描かれていることが、この作品の魅力だと思います。
また、言動や行動、表情などが不自然に、大袈裟に描かれることはほとんどなく、とにかく自然で、繊細な描写が多いということも、この作品に引き込まれる一つの理由であると思います。心からおすすめしたい作品です。

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少女と少女と歪な恋

この作品は、好きという感情が分からない少女が主人公であり、その少女に恋をした少女の物語です。
好きを分からない少女は、告白をした少女を好きになれませんが、自分を必要としている少女を受け入れ寄り添います。そして、この物語が一番のポイントは、告白をした少女は、告白をされた少女に自分を好きになってほしくないと告げる所です。普通は、好きになった相手に自分を好きになってほしいと思う所ですが、少女は、自分を好きなってほしくない。なぜなら好きになった相手が変わってしまったらそれは、好きでなくなる事と考えているからです。だから、今の自分を好きでいてほしくない。けど、自分の好きは、受け入れほしいと一方通行な恋がこの物語の見どころです。私は、今までの恋愛漫画と異なり、非常に傾いた片想いに惹かれました。相手に自分を好きになってほしくないという自分から片想いを望む少女は、一見わがままであり、相手の気持ちを無視しているように見えますが物語が進むにつれなぜ少女がそのように考えるようになったかが分かります。そして告白された少女も好きが分からないから相手を好きでいることができない。しかし、少女の片想いを受け入れる優しさが魅力でもあります。今までにないガールズラブストーリーです。百合好きには、必見の作品です。

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