百姓貴族

百姓貴族のレビュー・評価・感想

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百姓貴族
10

「鋼の錬金術師」と「銀の匙」を読んでから読むべし!

荒川弘先生は自画像を牛で描かれる方ですが、ご実家はなんと畜産農家!農家ならではの日常や常識は笑いあり涙あり。「そんなことまであり!?」と驚きつつ、ページをめくる手が止まらないし、エッセイのはずなのにとてつもない激動作品となっています。農家のあれこれや、荒川弘先生の命や生き物、食べ物に対する考え方や、人生観が非常に色濃く出ている作品で、大ヒット作となったダークファンタジー「鋼の錬金術師」のベースはこの本にあるなあと個人的に考えています。牛の世話で一日中大忙しの中、漫画を書くには「寝なけりゃいいんだ!」という考えには驚きましたが、きっとそのくらいの気概がないと漫画家というのは務まらないのかもしれないなあ…と、漫画の道を志したことのある私は思いました。しかもそれを、「仕方がないから…」という感じでなく、「心の底からそう思ってるんだぜ!」という勢いとバイタリティでやっていく荒川弘さんはもう、本当に凄まじい人だと思います。尊敬しています。「鋼の錬金術師」や「銀の匙」は、自分の子供たちがもう少し大きくなったらぜひ読んでもらいたいなあと前々から思っていた作品なのですが、この作品もいずれ触れてみて欲しいなあと思う作品です。

百姓貴族
9

農業を深く知らなくても、知っていても笑えるはずです!

『鋼の錬金術師』の荒川弘のコミックエッセイ。北海道の農家で育った作者による実体験などが描かれている。
コミックエッセイなのに、こんなに感情を使うのか?とにかく笑って、時にはすごく考えさせられて、切ない気持ちになって…というのが、全部読み終えた後の感想でした。
強烈で、何があっても蘇るまさしく不死鳥なキャラの親父様。なんでもこなしてしまう母や個性あふれる兄弟たち。
北海道という農業大国ゆえに起こる、私達では到底理解できないあるあるネタやハプニング。担当編集者さんの鋭いツッコミ。テンポよく進んで、スイスイ読んでしまう。本当にこれは現実なの?!と思ってしまうこともあり、時にはもしも…という農業ネタ妄想もあり、飽きがこないような仕掛けもいっぱいあると思います。

農業について勉強になることもあり、食料自給率の問題とか、後継者問題など、考えなければならないことがあるんだなと思わされました。もちろん、そういう難しい問題も、軽いノリで読ませてくれるので、苦にはならないと思います。
この作品を通して、全体的に作者の荒川さんの農業に対する愛が溢れていると思います。好きだから農業に携わっていた、好きだから面白おかしく語れる、それを感じることができる作品だと思います。
一つ心配なのは、最近はなかなか帰省も難しい様子が見受けられるので、ネタ切れしないのかな…?ということでしょうか。しないような気もしますが(笑)