愛という一文字に詰められた狂気
誰もが一度は考えた『愛』や『人生』の意味について、この作品は一つの答えの例を示してくれるものだと思います。
自身の愛や人生に意味を見出すのは他人ではなく、あくまで自分。そうわかっているからこそ、この作品の主人公は『生涯をささげても良いと思うほどの愛』と出会い、それに依存し、やがて「狂っている」と言われてもおかしくないようなことも平然とやってのけるようになる。その姿を一方的に見せられているこちら側は、当然人によって感じ方は様々でしょうが、主人公が見せる裏表の姿にのめりこんでいくことになるでしょう。私がそうでした。
最終的に主人公は自身が依存した『愛』と共に心中をはかりますが、最後の最後、本当に二人とも死んでしまう直前に、主人公は『愛』をこの世に生かすことを決めます。はたしてその行いが正しいことなのか、それとも間違ったことなのか、これも感じ方は人それぞれでしょう。
ですが、主人公がいなくなった後、残された『主人公にただ愛された存在(主人公の愛)』は「自分が主人公を思い続けることで主人公は自分の中で生き続ける」と考え、自分を愛してくれた主人公がいない世界で生活することを決めます。その姿を見たとき、私は、『愛は強ければ強いほど目に見えなくなる』ということを知りました。
この作品は、きっとそんな風に、読者に新しい『愛』の意味を教えてくれるものです。ぜひご覧になってください。