リトル・ダンサー / Billy Elliot

リトル・ダンサー / Billy Elliot

『リトル・ダンサー』(原題『Billy Elliot』)は2000年にイギリスで公開されたヒューマン・ドラマ映画。スティーブン・ダルドリー監督のデビュー作である。舞台は1984年イギリスの炭鉱町ダラム。父の趣味であるボクシングを習っていた少年は、ある日バレエ教室に出会う。町は炭鉱不況の最中で、父と兄は炭鉱ストライキに参加していた。「男がバレエなんか。」と反対されながらも、少年はますます夢中になる。プロのバレエダンサーを目指す少年と家族と町の人々の物語。

リトル・ダンサー / Billy Elliotのレビュー・評価・感想

リトル・ダンサー / Billy Elliot
10

ビリーに託した幸せ

母親はおらず、父親・兄は炭鉱ストライキ中でお金には苦しい。祖母は体調が芳しくない。そんな厳しい環境であっても、バレエが好きだと練習を続けるビリー。バレエを馬鹿にしていたけれど、息子のために炭鉱に戻る父。そして、同じようにストライキに参加していた父親が、炭鉱に戻ることを決意してしまうなど、複雑な状況に置かれてしまう兄。最終的に、労働に従事し、ビリーとの別れ際には“I miss you.”を伝えていた。綺麗ごとばかりではなく、人間の緻密な感情変化を描写したストーリーに心打たれる。
物語の主人公である11歳のビリーは、夢であったロイヤル・バレエ学校に入学できる。また、エンディングでは、自身の晴れ舞台に父親、兄を招待することができた。ビリーの親友マイケルは、時代背景を考えると、厳しい面も多いだろうに、ゲイである自分を確立し、恋人と連れ添って、ビリーの舞台を鑑賞していた。舞台にあがった姿を家族と親友に見せることができた。未来ある少年2人は夢をつかんだ。
一方の父親と兄はどうなったのだろうか。生活が困窮し、妻の形見であるピアノを壊して薪にするくらいの生活水準になっても、続けていた炭鉱ストライキ。兄は、ストライキが原因で、町の人ともめ、暴力沙汰になり、警察に捕まってしまう。妻の形見を壊し、自身の自由をかけてまで挑んでいたストライキだったが、父はビリーのために炭鉱労働を再開。兄は、父親に裏切られるような形でストを中断。さらに、ストライキは組合の譲歩で簡単に終わってしまう。彼らの行動は、全く意味を成さない結果となってしまうのだった。ビリーがロンドンに 向かった後、炭鉱地下に向かうエレベーターに乗る2人の顔は、お世辞にも幸せそうには見えない。彼らに未来はなかったのだろうか。
しかし、ビリーの晴れ舞台に父親と兄が駆け付けるシーン。普段は薄汚い炭鉱で働き、カジュアルな格好の二人が、ジャケット・コートといった正装で舞台に向かう。エスカレーターや鉄道などの最先端技術に驚く様子をみると、普段の二人の生活水準をなんとなく察してしまう。彼らは、人生の幸せや成功をビリーに託したのであろう。
「白鳥の湖」が流れて、ビリーが宙を舞った瞬間、 目が潤む父と感動で目を見開く兄の顔は幸せに包まれていた。

リトル・ダンサー / Billy Elliot
7

お父さんがいい。

男の子がバレエをやったって全然いいと思いますが、それは地域とか時代とかで難しいところもあるだろうなと思います。ビリーが住んでいるところも、男の子はボクシングをするのが普通というところで、そんなところでバレエをしたいなんていうのは、すごいなと思いました。もちろん、最初は父は反対して、怒っちゃうという…。ひどい話だなと思うけど、でもその気持ちもわからなくはないです。それにこの父親は、ビリーの才能に気が付くと、それを認めないとか、見て見ぬふりするとかはなくて、すごい応援する側に回っていてそこが感動的でした。
お金だってそんなにあるわけじゃないのに、自分の心情を曲げてまでストをやめたりして、金を集めてすごくいい父親です。彼が、ビリーの合格通知を受け取って、笑顔で知らせに走っていったのを見て、すごく感動しました。あの笑顔はまるで自分のことのように喜んでいる笑顔でした。
ダンスシーンも迫力があってよかったです。バレエに迫力というのも変ですが、優雅でありながら、やっぱり男ということで迫力もあるものだったと思います。
みんなが好きなことをすればいい、女とか男とかにとらわれずに好きなことを始めればいいと強く思った映画です。

リトル・ダンサー / Billy Elliot
9

男がバレエなんて、という時代に少年がバレエで夢を掴む話

2000年に公開された映画で、舞台は1984年のイギリスの炭鉱の町。
主人公の少年ビリーは炭鉱労働者の父親から、ボクシングを半ば強制的に習わされている。
男は強くたくましくあるべきという考えが普通であったためビリーは嫌々続けていたが、ある日バレエの練習に目が釘付けになり、次第にこっそりバレエを習うようになる。
なんと彼にはバレエの才能があったのだ。ビリーの父親や兄は炭鉱で働き、大人になったら炭鉱労働者になるという未来しかないという環境で、ビリーはバレエのプロを目指して町を出て行こうとする。
財政難から炭鉱を閉鎖する政府。それに対抗するためにストライキをするなど父親や兄の未来は暗い方向へと向かっていくが、最初は男がバレエなんてと思っていた彼らにもビリーの未来は明るくあってほしいと気持ちが変化していく。
彼らにはどんな未来が待っているのか。自分の努力と才能で夢を掴むビリーの姿は感動してしまう。
炭鉱労働者のストライキなど、当時のイギリスの時代背景はある程度、前持った知識がないとなかなか状況が掴めないため、そのあたりを調べてから見た方がより楽しめるかもしれない。
映画公開後、ミュージカル版も制作されているようなので、機会があれば見てみたいと思う。