風光る

風光る

『風光る』(かぜひかる)とは、渡辺多恵子による漫画作品である。『別冊少女コミック』(小学館)にて1997年から連載を開始。その後掲載誌を『月刊フラワーズ』(同社)に移し2020年7月号まで連載された。本作は第48回小学館漫画賞を受賞している。
父と兄の仇を討つため、壬生浪士組(後の新選組)に入隊志願した主人公・神谷清三郎。実は神谷清三郎は富永セイ(とみなが せい)という女子が男装している姿であった。武士として師である沖田総司を敬う気持ちと、少女として恋する気持ちの間で揺れ動く姿や、幕末の動乱を生きる力を身につけていく姿、母として強く生きる姿など、主人公が人生をかけて奮闘する日々が描かれる。新選組をテーマとした幕末青春ストーリーである。

風光るのレビュー・評価・感想

風光る
7

史実とフィクションのバランスがいい新選組作品

新選組を題材にした少女漫画。
主人公の「セイ」が家族の仇討ちのため、男と偽って新選組に入隊し、女であることを隠しながら一人前の武士として成長してくストーリー。
新選組を扱う漫画は数多いが、「風光る」は筆者が史実や当時の文化をよく勉強して作品を描いており、歴史の勉強になるレベルの作品である。
例えば、よくイケメンに描かれる沖田だが、この作品では史実にある「ヒラメ顔」はそのままに、
総髪にすることで少女漫画らしさも残すなど、史実とフィクションのバランスがうまく取られている。

少女漫画要素としては、セイと彼女の秘密を知る沖田総司、セイを男と思い込みながらも彼女を想う斎藤一の3人がメインとなる。
セイと沖田はふたりとも鈍感で、かなり長期間両片思いの状態が続くので、読者もやきもきしてしまう。
むず痒い、くっついてほしいけれどこの距離感もいとおしい!という少女漫画の醍醐味を味わえる。

ただ、史実に比較的忠実な作品なので、後半は政治的な話や当時の社会情勢に焦点が当てられ、逆に少女漫画的な要素は少なくなっている。
また、少女漫画にしては珍しく人の首が飛んだり、血が噴き出したりといった一部グロテスクなシーンもあるので、苦手な方は注意してほしい。

風光る
8

歴史が嫌いな人でも楽しく読めます。

歴史を嫌いでも、それとは別に楽しめる作品だと思います。そして歴史を知らなくても読んでいくとついでに歴史もわかる一石二鳥の漫画です。設定も、時は幕末、主人公が女の子なのですが、家族が目の前で長州勤皇派に殺されてしまうという非常に衝撃的な始まりです。その時に沖田総司と出会います。そこからの展開が自由さを感じます。主人公のセイは性別を偽って新選組に入隊します。でもやっぱり女の子、沖田さんに恋い焦がれて乙女な一面をたくさん見せてくれます。沖田さんのキャラも女の子受けする天然だけどすごく強い、近寄りやすくてでも近寄れない、そんな不思議な魅力を発揮しています。実際はどうだったのか本当のところは謎ですが。当時の人々の考え方、価値観は今とあまりにも違いますが、頑固だけどまっすぐで、忠誠を誓ったら自分の命をかけてもそれを守り抜く彼らの姿は心揺さぶられるものがあります。そこまでしなくていいのに、と思ったりしますが、そういう歴史があるからこそ今の日本があるんだと感じさせられます。ユーモアたっぷりで笑えるところもたくさんありながら、考えさせる素晴らしい作品だとおもいます。ただちょっと長いかな…でも歴史が関係しているからそう考えるとそれも長所の一つですね。現実ではありえませんが、だからこそ楽しめると感じます。

風光る
3

ラストが‥。

歴史少女漫画としてそれこそ長い歴史もある漫画なのに、ラストシーンがあれでは少々残念。無理矢理あの展開にもっていくなんて!これまでの総司とセイの関係、そして前巻で二人が秘密裏ではあるが夫婦になったことを考えれば無理にあのラストシーンにせずとも良かったのでは。セイが総司のいない世界で生きていきたくなく、死に場所を求める気持ちも分かる。だからって生きていく希望を与えるためにまさかあの人との子を作らなくても良かったのではないか。個人的にはラストシーンには最初の伏線回収の意味も込めて総司からセイへの手紙がある形の方がすっきりするように思う。恐らくその手紙でセイが納得するか作者も疑問だったため踏み切れず、少々ずれたあのシーンになってしまったのだろう。兎に角ラストシーンは多くの読者が疑問に思う、もしくは呆れ返るシーンになっている。ただ、巻末に記載されていた参考文献一覧には目を見張るものがある。正直、歴史漫画の創作にあれほどの参考文献を読む漫画家は渡辺さん以外にいないだろう。恐らく一般大学生が卒業論文を書くときでもあの量の文献を漁ることはないだろう。本当に時代考証のしっかりした超大作といえる作品。ラストだけは変えてほしかった。

風光る
8

漫画を教科書に

新撰組。歴史が好きな人にとってはとても人気があり、小説だけではなくテレビドラマ、漫画、アニメ、ゲームにもなっている題材の一つである。とはいえ、日本史の勉強をするとなると「なかなか詳細まで頭に入ってこない」とお悩みの方も多いのではないだろうか。
そんな方にお勧めしたいのが渡辺多恵子原作『風光る』だ。
ストーリーは診療所の娘、富永セイが反幕派の浪人に殺された父と兄の仇を討つため男装し神谷清三郎と名乗って新撰組の前身である壬生浪士組に入隊するという、少女漫画にありがちな至って普通のあらすじだ。
だが、その特徴は、歴史背景や当時使用していた道具など、詳細に時代考証がされていること、また、少女漫画らしからぬリアルな殺傷シーンの数々、そして、当時流行っていたとされる修道(男性同士の恋愛)や女性特有のお馬(生理現象)などを事細かに描いていることなのだ。
特に、毎日使用する歯ブラシや当時の公衆トイレなど、彼らが日常生活に使用するものまで調べ尽くされ時代考証がされているので、登場人物たちの息遣いがとても身近に感じられるだけではなく、漫画が教科書代わりになってしまうのである。
この作品だけではなく、時代考証がしっかりされている漫画は勉強の参考書に最適である。登場人物に感情移入し、そのストーリーを楽しみながら歴史の勉強をすれば、漫画を読んでいても親から怒られる心配は無くなるだろう。

風光る
8

「風光る」は新選組好きな女子にオススメな漫画です

『風光る』は新選組を舞台とした少女漫画です。主人公は男であると偽って入隊した少女で、新選組の中でも指折りの人気を誇る剣豪「沖田総司」の指導のもと、心身ともに成長し立派な隊士へとなっていきます。美少女でありながら女であることを隠し、男装している麗人の主人公は新選組隊内における師である沖田総司への淡い恋心を抱きながら剣術に励み、やがては局長である近藤勇や副長である土方歳三からも厚い信頼を得られるほどに成長していきます。風光るは少女漫画にありがちな単なる恋愛物語だけでなく、丁寧に時代考証がなされた歴史漫画でもあり、江戸時代末期の様子がよく分かるように丁寧に描かれています。さらに新選組と敵対する維新志士たちもたくさん登場し、それぞれが魅力的に描かれています。主人公を除くほとんどの人物が史実で実在した人物であるので、日本史が好きな方で特に江戸時代末期が好きな方には目を通していただきたい漫画です。新選組が好きな女性には必読の漫画であると思います。新選組は歴史上では悲惨な運命をたどっていきますが、2020年時点で連載中なので、最後はどのような結末となるのかまだまだ目を離せない漫画です。

風光る
8

万年補欠の小柄な高校球児がモノマネ野球で甲子園を目指す

野中ゆたかは多摩川高校の野球部員。万年補欠の選手で得意技は有名選手のモノマネだったが、就任した君島監督に才能を見出され、練習試合で4番ピッチャーに大抜擢される。また周囲の選手たちもゆたかの観察眼によるアドバイスで技術力が向上する。自信を持った多摩川は予選大会では快進撃を続け、5回戦で甲子園常連校である京浜高校にサヨナラ勝ちをすると決勝戦でも勝利を収め念願の甲子園出場を果たす。甲子園では格上の村上学園に勝利するも、続く2回戦では赤井、山口を擁する優勝候補の関大淀川との乱打戦の末、13-14で惜しくも敗退をする。最後は背も伸びたゆたかが主将として新たに甲子園を目指していくのだった。ゆたかのモノマネはメジャーへの先駆者である野茂、京浜高校戦ではピッチャー桑田、バッター清原のPL学園KKコンビ、甲子園ではゴジラ松井でホームランと数多い。もちろんイチローも対象だ。しかもランディ・ジョンソンなどのメジャー選手に落合など往年のプレーヤー、挙句な大学時代の君島監督までと幅広い。これらは単なる猿真似ではなく、ゆたかの純粋に野球が好きな姿勢からによるものである。野球にとどまらず大好きなスポーツ選手がいたら、誰もは一度はフォームや仕草を真似した事はあっただろう。