桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよのレビュー・評価・感想

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桐島、部活やめるってよ
10

ヒエラルキーで見え方が変わる作品

タイトルの通り桐島という男を中心に話が進みますが、桐島は一切出てきません。
中心となる存在が登場しないだけで一気に想像力が試されます。
部活を辞めただけでこんなにも話題になり、他の人物の人生まで狂わせていく桐島とはいったいどんな人物だったのか気になります。
今回の裏の主人公は前田というヒエラルキーの低い位置にいる青年です。
この映画を見て何を伝えたいのかわからなかった方にはぜひ前田に焦点を当てて鑑賞してほしいです。
ただの日常を切り取っただけの作品ではなく、今を楽しむ生き方を見つめなおす良い機会になります。
登場人物が多いのが難点ですが、一人ひとり抱えているものがあり、焦点をそれぞれにあててみるのもおすすめします。
中でも最後のシーンで涙を流す姿が印象的な宏樹と熱心に部活に取り組めなくなっている亜矢は前田と深く絡むシーンがあります。
ヒエラルキーが低い故に撮影も満足に出来ない映画部がその二人とかかわっていく中で自分と向き合うことができるようになります。
見せかけの満足より自分が本当にどうしたいか。自分の芯の部分を貫き通すことのカッコよさ、立ち向かう勇気がもらえる作品です。
「自分たちはこの世界で生きていかなければならないのだ」この言葉に作品のすべてが詰まっています。

桐島、部活やめるってよ
8

桐島のひととなりがわかる

学校外で、クラスの女子に出会ってってところがすごく初々しくてよかったです。神木くんがかっこいいけど、こういうオタクっぽい役も似合うんだなと思いました。タイトルを見たときはてっきり、桐島を神木くんがするんだと思っていたけど、最後まで桐島は出てこなかったし、なんで彼が急に部活を辞めたのかもわかりませんでした。
でも、周りの子と同じように、カースト上位に見えた彼も悩んでいたということなのかもしれません。そういうカースト上位の子も大変よみたいな話って好きじゃないのですが、桐島くんはなんとなくいい人ぽく感じました。出てきてない人なのに、その人のひととなりがわかるなんて、すごい脚本だと思います。あと、映画の中にどうせ報われないだろうけどがんばる人が出てきてて、それがすごい青春ぽくてよかったです。たしかにあまり世に出ないものだけど、学生が作った映画と、今映画館で上映されている映画がつながっているなんて、夢のある話だと思います。
映画部とか大学に行けば、結構メジャーな部活ぽいのに、高校くらいだと地味なオタクのあつまりみたいになってるのがらしくておもしろかったです。映画好きな人が劇中に出てくると、この映画を撮った人の映画感が知れた気がしてお得な気がします。とても楽しく見れました。

桐島、部活やめるってよ
9

青春時代が鮮明に蘇る

朝井リョウさんの小説が原作の映画です。
朝井リョウさんの小説は高校生や大学生などの学生時代の青春をテーマにしたものが多く、読んでいてとても懐かしい感情に浸ることができます。
特に第36回日本アカデミー賞の3部門で最優秀賞も取った映画「桐島、部活やめるってよ」は描写や感情表現がリアルに描かれていて自分が高校生だった過去にタイムスリップした気持ちになりました。
この映画は大阪の高校が舞台に作られており、スクールカーストを背景とした高校生たちのリアルな日常が描かれています。主人公はそんなスクールカーストの底辺に属する前田涼也(神木隆之介)。彼は高校の映画部に所属しているいわゆる陰キャの生徒です。彼は毎日スクールカーストの上部が醸し出す雰囲気に怯えながらも自分の大好きな”映画”という希望に喜びを感じながら充実した毎日を送っています。
他にも様々なキャラクター達が登場します。その誰もが、スクールカーストの上位・下位問わず心のうちに不安を抱え、間違った方法でもそれを解決しようともがいているところが感情移入できる点です。私が気に入ったキャラクターは菊池宏樹というもう一人の主人公です。彼はスクールカーストの上位におり、スポーツも勉強もそこそこできるイケメン高校生です。一見充実しているように見える彼もまたなんでもできるが故に情熱を持てるものが何もない空っぽな自分に不安を抱きながら生きています。
”映画”というたったひとつの希望を持つ地味系男子の涼也となんでもできて理想の男子と評される宏樹。二人の出会いからそれまで暗い雰囲気だった物語が明るく彩られていきます。
見終わったあとに「青春だなあ」とつぶやきたくなるような作品です。