桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

『桐島、部活やめるってよ』とは、朝井リョウによる小説およびそれを題材とした映画である。2010年に出版された、朝井のデビュー作。バレーボール部のキャプテンで人気者だった桐島が、突如部活を辞めるところからストーリーが始まる。第22回小説すばる新人賞を受賞するヒットとなり、2012年には神木隆之介を主演に映画化された。

1xikairyojinnのレビュー・評価・感想

桐島、部活やめるってよ
10

ヒエラルキーで見え方が変わる作品

タイトルの通り桐島という男を中心に話が進みますが、桐島は一切出てきません。
中心となる存在が登場しないだけで一気に想像力が試されます。
部活を辞めただけでこんなにも話題になり、他の人物の人生まで狂わせていく桐島とはいったいどんな人物だったのか気になります。
今回の裏の主人公は前田というヒエラルキーの低い位置にいる青年です。
この映画を見て何を伝えたいのかわからなかった方にはぜひ前田に焦点を当てて鑑賞してほしいです。
ただの日常を切り取っただけの作品ではなく、今を楽しむ生き方を見つめなおす良い機会になります。
登場人物が多いのが難点ですが、一人ひとり抱えているものがあり、焦点をそれぞれにあててみるのもおすすめします。
中でも最後のシーンで涙を流す姿が印象的な宏樹と熱心に部活に取り組めなくなっている亜矢は前田と深く絡むシーンがあります。
ヒエラルキーが低い故に撮影も満足に出来ない映画部がその二人とかかわっていく中で自分と向き合うことができるようになります。
見せかけの満足より自分が本当にどうしたいか。自分の芯の部分を貫き通すことのカッコよさ、立ち向かう勇気がもらえる作品です。
「自分たちはこの世界で生きていかなければならないのだ」この言葉に作品のすべてが詰まっています。