そして、バトンは渡された

そして、バトンは渡された

『そして、バトンは渡された』第16回本屋大賞で大賞を受賞した、瀬尾まいこの小説を原作にした映画。
血のつながらない親たちをたらい回しにされ、名字を4回も変えた経験のある主人公・森宮優子は、現在は義父・森宮さんのと二人暮らしをしながら高校生活を送っている。一聞するとかなり複雑な生い立ちである優子だが、周囲の心配や偏見の眼差しをなんとも思っておらず、女子高生ならではの恋愛・友人関係・進路といった問題に悩み、時に森宮さんとぶつかりながら真っ直ぐな女の子として成長していく物語。
現在の森宮さんとの暮らし・学校生活の描写と並行して、どういった経緯で優子が実の親と生き別れ、血の繋がっていない親の元を転々とすることになったのかが描かれる。優子の義親の1人で、一番長く優子を育てていた梨花という女性は突然、優子を森宮さんのところへと残し失踪してしまうのだが、やがて優子の人生と運命は不思議な形で梨花とつながることになる。血の繋がらない親の間をリレーされながらも、出会う家族皆に愛情を注がれた女の子の心温まるドラマである。

そして、バトンは渡されたのレビュー・評価・感想

そして、バトンは渡された
10

渇いた心に潤いを与えてくれる作品

ずっと気になっている映画ではあったんですが、なかなか見る時間が作れずやっと見る事ができました。
親が離婚再婚を繰り返して、中学生になるまでに合計で母親2人、父親3人。最終的に全く血の繋がってない父親と2人暮しっていうとんでもない境遇の設定なのに、出てくるのは良い人ばかりで、初回に見た時は内容を理解するのが大変でした。
永野芽郁さんが「みぃたん」というのも途中まで分からなかったし、石原さとみさん演じる女性像も最初の印象は良くなかったです。でも物語が進んでいく内に色々な線が繋がっていって、愛に溢れていて、こころが暖かくなる作品でした。
いろんな親子の愛を見て、いつも自分を信じて見守ってくれる親のありがたさについて考えさせられたし、いつか自分も愛のある家庭を築きたいと思ったほどです。

タイトルの付け方も素敵だなあと思いました。ラストになって込められた意味が分かるタイプの展開です。エンドロールに流れる写真もとても良くて、しばらく余韻が続きました。卒業式のシーンは記憶では2回ほど出てくるのですが、とにかく号泣してしまいました。

永野芽郁さんは自然体で演技をされているのが素晴らしく、とても感情移入する事ができました。「この家庭環境で主人公が捻くれずに明るい女の子に育ったのは、みんなにしっかり愛情をもらえてたからなんだろうな。愛情はとっても大切なんだ」と、どこか過去に失くしてしまっていた自分の冷めた感情が揺さぶられました。
1度目より2度目に観た時の方が、内容もより深く理解でき、涙する場面も多くなるかもしれないと思います。また時間を作って作品に触れたいと思う、素敵で考えさせられる映画でした。個人的には、みぃたんを演じた子役の女の子がこの作品のMVPだと思います。

そして、バトンは渡された
8

深い家族愛、人との絆を信じたいと思った。

はじめはよくある若手俳優さんの恋愛を絡めた家族物語…のイメージで見ていたのですが、全く違いました。完璧に家族の物語で、最終的に悪者がいない感動的な物語でした。主人公の女性を取り巻く環境が決して良くはないのに女性はぐれることなく素直に育っていき、目まぐるしく変わる家庭環境をありのまま受け入れる勇気みたいなものを感じました。
普通だったら引きこもり、ぐれる、を想像するけれど受け入れて馴染もうとする主人公に気持ちが持っていかれました。それ以上に最終的に涙が止まらない状況にさせたのは、石原さとみさんの演じた義母でした。しばらくは自分勝手な感情で家族を振り回す厄介な人だと思っていたけれど、彼女の深い愛はどうしようもなく優しく悲しい愛情表現だと思いました。確かに彼女の子供が欲しいという一種わがままな願いから始まったことなのかもしれません。でも、彼女の愛は本物で、実の親子でもなかなかできないことをさらりと陰でやってのける肝の座った母だと感心しました。もし、世の中の家族が、母が、このくらいの覚悟で子育てをしたら世の中は変わるだろうなと思わせてくれます。私も2人の子育てをしましたが、この映画で母とは何かを学んだ気がします。

そして、バトンは渡された
9

自由奔放な母親に振り回される子供と夫、しかしそれには理由があった。

高校3年生の「森宮優子」と小学生の「みぃたん」の2人の生活が描かれたストーリーです。
優子は父と2人暮らしですが、血は繋がっておらず父のことを尊敬の意味を込めて「森宮さん」と呼んでいます。
母は他の男の所へ行ったようで母の連れ子だった優子を父の「森宮壮介」が引き取ることになりました。
一方みぃたんは実の父親と育ての母親の3人暮らしでしたが、父が仕事を辞めブラジルで起業することをきっかけに両親は離婚。みぃたんは母と2人で日本に残る決断をしました。しかし後に夫を何度も変える自由奔放な母の性格に振り回されるという、どちらも母親に恵まれていないような人生を歩むことになります。
2人の人生がそれぞれ描かれて内容は進んでいきますが、実はこの優子とみぃたんは同じ人物であり母親も同じ人物です。
後に母親が亡くなったことを知る優子は元父親である人たちを巡り本当の真実を知ることになります。
「なぜ実の母親ではなく育ての母親なのか?」「なぜ一緒にブラジルに行かなかったのか?」「なぜ夫を何人も変えたのか?」
母親の真実、それぞれの夫の考え、全ての点と点が線で繋がった時、感動するストーリーに心が温まりました。
それぞれの役者の演技も素晴らしく魅了されました。
この作品をよく知らないまま映画を見た私でしたが、終わった後の余韻がすごく、いい映画だったと思えました。
何人もの夫から大切に受け継がれたバトンに感動しました。