そして、バトンは渡された

そして、バトンは渡された

『そして、バトンは渡された』第16回本屋大賞で大賞を受賞した、瀬尾まいこの小説を原作にした映画。
血のつながらない親たちをたらい回しにされ、名字を4回も変えた経験のある主人公・森宮優子は、現在は義父・森宮さんのと二人暮らしをしながら高校生活を送っている。一聞するとかなり複雑な生い立ちである優子だが、周囲の心配や偏見の眼差しをなんとも思っておらず、女子高生ならではの恋愛・友人関係・進路といった問題に悩み、時に森宮さんとぶつかりながら真っ直ぐな女の子として成長していく物語。
現在の森宮さんとの暮らし・学校生活の描写と並行して、どういった経緯で優子が実の親と生き別れ、血の繋がっていない親の元を転々とすることになったのかが描かれる。優子の義親の1人で、一番長く優子を育てていた梨花という女性は突然、優子を森宮さんのところへと残し失踪してしまうのだが、やがて優子の人生と運命は不思議な形で梨花とつながることになる。血の繋がらない親の間をリレーされながらも、出会う家族皆に愛情を注がれた女の子の心温まるドラマである。

sakaki6のレビュー・評価・感想

そして、バトンは渡された
8

深い家族愛、人との絆を信じたいと思った。

はじめはよくある若手俳優さんの恋愛を絡めた家族物語…のイメージで見ていたのですが、全く違いました。完璧に家族の物語で、最終的に悪者がいない感動的な物語でした。主人公の女性を取り巻く環境が決して良くはないのに女性はぐれることなく素直に育っていき、目まぐるしく変わる家庭環境をありのまま受け入れる勇気みたいなものを感じました。
普通だったら引きこもり、ぐれる、を想像するけれど受け入れて馴染もうとする主人公に気持ちが持っていかれました。それ以上に最終的に涙が止まらない状況にさせたのは、石原さとみさんの演じた義母でした。しばらくは自分勝手な感情で家族を振り回す厄介な人だと思っていたけれど、彼女の深い愛はどうしようもなく優しく悲しい愛情表現だと思いました。確かに彼女の子供が欲しいという一種わがままな願いから始まったことなのかもしれません。でも、彼女の愛は本物で、実の親子でもなかなかできないことをさらりと陰でやってのける肝の座った母だと感心しました。もし、世の中の家族が、母が、このくらいの覚悟で子育てをしたら世の中は変わるだろうなと思わせてくれます。私も2人の子育てをしましたが、この映画で母とは何かを学んだ気がします。