そして、バトンは渡された

そして、バトンは渡された

『そして、バトンは渡された』第16回本屋大賞で大賞を受賞した、瀬尾まいこの小説を原作にした映画。
血のつながらない親たちをたらい回しにされ、名字を4回も変えた経験のある主人公・森宮優子は、現在は義父・森宮さんのと二人暮らしをしながら高校生活を送っている。一聞するとかなり複雑な生い立ちである優子だが、周囲の心配や偏見の眼差しをなんとも思っておらず、女子高生ならではの恋愛・友人関係・進路といった問題に悩み、時に森宮さんとぶつかりながら真っ直ぐな女の子として成長していく物語。
現在の森宮さんとの暮らし・学校生活の描写と並行して、どういった経緯で優子が実の親と生き別れ、血の繋がっていない親の元を転々とすることになったのかが描かれる。優子の義親の1人で、一番長く優子を育てていた梨花という女性は突然、優子を森宮さんのところへと残し失踪してしまうのだが、やがて優子の人生と運命は不思議な形で梨花とつながることになる。血の繋がらない親の間をリレーされながらも、出会う家族皆に愛情を注がれた女の子の心温まるドラマである。

hajime_asyouのレビュー・評価・感想

そして、バトンは渡された
9

自由奔放な母親に振り回される子供と夫、しかしそれには理由があった。

高校3年生の「森宮優子」と小学生の「みぃたん」の2人の生活が描かれたストーリーです。
優子は父と2人暮らしですが、血は繋がっておらず父のことを尊敬の意味を込めて「森宮さん」と呼んでいます。
母は他の男の所へ行ったようで母の連れ子だった優子を父の「森宮壮介」が引き取ることになりました。
一方みぃたんは実の父親と育ての母親の3人暮らしでしたが、父が仕事を辞めブラジルで起業することをきっかけに両親は離婚。みぃたんは母と2人で日本に残る決断をしました。しかし後に夫を何度も変える自由奔放な母の性格に振り回されるという、どちらも母親に恵まれていないような人生を歩むことになります。
2人の人生がそれぞれ描かれて内容は進んでいきますが、実はこの優子とみぃたんは同じ人物であり母親も同じ人物です。
後に母親が亡くなったことを知る優子は元父親である人たちを巡り本当の真実を知ることになります。
「なぜ実の母親ではなく育ての母親なのか?」「なぜ一緒にブラジルに行かなかったのか?」「なぜ夫を何人も変えたのか?」
母親の真実、それぞれの夫の考え、全ての点と点が線で繋がった時、感動するストーリーに心が温まりました。
それぞれの役者の演技も素晴らしく魅了されました。
この作品をよく知らないまま映画を見た私でしたが、終わった後の余韻がすごく、いい映画だったと思えました。
何人もの夫から大切に受け継がれたバトンに感動しました。