アザーズ / The Others

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アザーズ / The Othersのレビュー・評価・感想

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アザーズ / The Others
9

光と闇の巧みなコントラストが際立つ、完璧な恐怖映画

1945年、第二次世界大戦末期のイギリスのジャージー島。出征した夫の帰りを待つニコル・キッドマン扮するグレースは、広大な屋敷で二人の子供と暮らしている。
子供達は、極度の光アレルギーで、屋敷の窓という窓には、いつも分厚いカーテンがかかっている。
ある朝、屋敷に三人の新しい使用人がやって来る。
そして、その日を境に、数々の不可解な現象がグレース一家を襲い始める。
屋敷の中に見えない何者かが入り込んでいる。それは一体誰なのか? というスリリングな物語ですね。

近年のホラー映画は、スプラッタやサイコ系が主流を占めていると思います。
確かに、死者の魂や幽霊といった宗教観は、IT全盛の現代にあっては、いかにも古臭いという感じは否めません。
そんな中、アレハンドロ・アナーバル監督は、オールドスタイルのゴシック・ホラーに、恐怖演出の原点を見出し、古典への帰着を起点として、新たなゴシック・ホラーを創造しようと試みていると思います。
この点が、私がこの作品を好きな理由なんですね。

誰もいない部屋から聞こえてくるピアノの音、不気味にはためく窓辺のカーテン、死者の写真、闇夜に浮かび上がる洋館、といった怪奇演出は、怪談文化をバックボーンに持つ、我々日本人のセンスにもしっくりと馴染むような気がします。
何を見せて、何を見せないのか。これは恐怖映画の永遠の命題だろうと思います。
アレハンドロ・アナーバル監督は、ヒッチコックの映画から多大な影響を受けたと語っていますが、ヒロインが見えない存在への恐怖に浸食されていくという観点から、とりわけ「レベッカ」の表現技術を意識していると思います。
そして、見えないものに息を与え、得体の知れない恐怖を生み出すことに成功していると思います。
さらに、グレース・ケリーやジョーン・フォンテーンといった、ヒッチコック映画のヒロインを思わせるニコール・キッドマンのクール・ビューティーぶりが、もう素晴らしいの一言に尽きますね。
情緒不安定なヒロインの錯綜する心理を見事に演じ、恐怖とインパクトを増幅させてくれます。

この映画の売りは、なんと言っても、やはり衝撃のドンデン返しにありますね。
しかし、この映画はスマートなストーリー・テリングを尊重しており、そのためには、中途で少しぐらいのヒントなら見せても構わないと考えているフシがありますね。もちろん、全ては緻密な計算に基づいてはいますが。
そして、最後はとても哀れで悲しい物語として完結するんですね。
生者と死者の世界のあやふやな境界線に、深い思いを馳せずにはいられません。
オチを知ってしまった今でも、もう一度観てみたいと思わせてくれるんですね。

光と闇の巧みなコントラストが、この映画を完璧な恐怖映画に仕立て上げていると思います。
この映画では、暗闇はサスペンス、光はショックを演出しています。
暗闇は恐怖の余り、真相が見えなくなっていることを象徴し、光は子供を殺し得る危険なもの、最後には視点を変える契機として、劇的な役割を果たしているのだと思います。

アザーズ / The Others
8

幽霊たちも悲しい

家に自分の家族以外の存在を感じるという話です。なんか音がしたり、気配を感じたり、そういう方がモンスターが出てくるとかより、ありえそうで怖いです。日光に弱くて外に出られない子どもとの暮らしということもあって、お母さんはとてもピリピリするだろうなと思いました。私自身インドア派ですが、それでも太陽の光は浴びたいと思うし、ちょっと外に出るだけでも気分転換になります。そういうこともできないし、家の中では不可解な現象が起きるし辛かっただろうなと思いました。お母さんが子どもたちに嘘つくなとか言っちゃったりするのもうなづけます。オチもおもしろくて、実は主人公家族の方が幽霊だったというものでした。シックス・センスも公開されてたし、パクリかと言われるかもしれませんが、私たちが幽霊を見れないように、幽霊側も生きてる人を見れないという設定は新しいと思います。天国にも行けず、自分たちが死んだことにも気がつかず、同じ場所に居続けないといけないなんて、幽霊たちも悲しいなと思いました。幽霊たちの悲哀を描いている点でもシックス・センスと似ていると思います。シックス・センスが好きな人は気に入るのではないでしょうか。

アザーズ / The Others
8

日本的怖さ

一応、どんでん返し映画というジャンルだと思います。でも、オチではなく、それ以外のところがいいと思います。古い洋館に引っ越してきた幼い子どもとお母さんが、そこに他の誰かがいるような気がして怯えるという話です。ジャパニーズホラー的というか、なんか、日本の幽霊話ぽくて、怖いです。シャンデリアが揺れたり、声が聞こえたり、大げさではない表現で怖がらせてくるのがすごいなと思います。幽霊がいるかも以外でも、女手ひとつで子どもを育てなきゃいけない沸々としたものがお母さんにはあって、なんか暗いのですが、ああ、まあ、そうなるのねと共感できるし、お母さんの気持ちが伝わってきます。お母さんはニコールキッドマンなのですが、なんかあの人って顔がちょっと寂しげで合ってるなと思いました。そして、実は幽霊かもと怯えていた家族の方が幽霊だったというオチがあるのですが、結構びっくりしました。シックスセンスを先に見たので、新しい驚きはありませんでしたが、まあまあびっくりです。でも、たしかにそう思ってみると、家族の服とか古臭いし、家にずっといるし、幽霊ぽいといえばぽかったかなと思いました。そこも、子どもが日光がダメだから、家にずっといるんだという言い訳でうまく隠していてすごいなと思いました。

アザーズ / The Others
6

怖いというよりむしろ悲しい

戦後まもなく、夫が出征しておらず、子どもたちと広大に屋敷に住む女性が、家に自分たち以外の誰かがいることに気がつくという話です。それは幽霊なのか、それとも彼女の神経過敏か、という感じの話で、オチは、彼女たち家族のほうが幽霊だったというものでした。なかなか意外なラストでした。
たしかに、家族は家族間でしか話していないし、家にしかいない感じだけど、戦後だし、子供は日光に弱いし、家に引きこもらないといけないのかなと思うと不自然じゃなかったし、音が聞こえるという怪奇現象も幽霊側、人間側どちらにも起きる現象だというのも、ああ、たしかにと納得でした。
「シックス・センス」のときと思いましたが、死んだのにそれに気がつかないというのは、案外ありうることなのかもしれません。その真実を知ってからは怖いというより、むしろ悲しい話だなと思いました。彼女たちにとって、家に住み着きつづけるのが良いことなのか、悪いことなのか、分かりません。でも、母として、子どもを守りたい、家からよそ者を追い出したいという気持ちになるのも分かります。
なんだか、夫がいなくなり、母としてなんとかしないと、という強がりというか、気を張っている感じがして、彼女に平穏が訪れてほしいなと思ってしまいました。
でも、ホラーとしてはあまり怖くありません。