それぞれの抱える闇が交錯して変化していくその後の人生
ロードムービーと思いきや、一箇所に集まった登場人物たちの様々な思いを描いた人間ドラマだった。人種も世代も様々で、言語も日本語だけではなく英語や手話もある。そんな別々の人間同士の距離がそっと縮まっていく様子や一気に離れてしまう瞬間などが、とても丁寧に描かれていたと思う。
映像もとても美しく、瀬戸内の景色や車窓を流れる都心の夜の風景など、主人公と同じ景色を見ている気分に浸れると思う。象徴的なあの赤い車と寡黙なドライバー。あの若い女性がなぜ運転がうまくなったのかのエピソードと、そこからラストに向かう長い長いドライブは物語が一気に進んでとても見ごたえがあった。
大きな喪失感を抱えた者同士の悲しみと、そこから再生しようとする姿が、決して急がずじっと見つめて寄り添うような演出が情感あふれ見事だった。西島秀俊さん演じる主人公はとても我慢強く安定した精神の持ち主だが、この場面にはぐっときてしまった。反面、岡田将生さんが演じた男性と霧島れいかさん演じる主人公の妻は、破綻していく自分を持て余しどうすることもできずにもがく姿が描かれている。でもそれさえも許せるような優しい想像力を見る人に喚起することで、窮屈なものの見方が変わり、これからの自分が少し穏やかになれる気がする映画だった。