ゆびさきと恋々

ゆびさきと恋々

『ゆびさきと恋々』(ゆびさきとれんれん)とは、大学生同士のピュアなラブストーリーを描いた森下suuの漫画作品。講談社の雑誌『デザート』にて2019年から連載され、2024年にはアニメ化を果たした。
生まれつき聴覚に障害を持つ大学生の糸瀬雪は、ある時電車の中で同じ大学に通う波岐逸臣に助けられたことで、彼のことが気になり始める。その逸臣は国際サークルに所属しており、バイトで資金を作っては海外に繰り出すアクティブな青年だった。交わりそうで交わらない雪と逸臣の恋が、2人の周囲の人々も巻き込んでいく。

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ゆびさきと恋々のレビュー・評価・感想

ゆびさきと恋々
10

こんなにも最高なマンガは生まれて初めて!

この作品は生まれつき耳が聞こえず今までろう学校に通っていた主人公雪が、一般の大学に入学し様々な経験をしていく話になります。

主人公である雪(ゆき)が通学中に電車内で話しかけられますが、雪は耳が聞こえないため困ってしまいます。そこで同じ大学に通っており、バックパッカーとして世界中を旅している一学年先輩の逸臣(いつおみ)に助けられたことをきっかけに、関係を深めていきます。
『ゆびさきと恋々』では主人公である雪と逸臣の恋愛模様だけではなく、雪の友人や逸臣のいとこ、友人などの様々な恋愛模様を見ることができます。
ほかにも、恋愛マンガでありがちな主人公のすれ違いや邪魔者の登場などがなく展開もスムーズに進んでいくため、とても読みやすいです。
そしてこの作品ではただただ恋愛模様を見るだけではなく、ろう者の方が普段どのようなことに困っているのかや、健聴者との感じ方の違いなどを知ることができるため、新たな発見をすることもできました。

さらにこの作品では手話もきちんと監修されているため、実際の手話についても学ぶことができます。しかしマンガでは動作などが多少わかりづらい部分があるのでアニメで確認したり、動画サイトなどで手話の検索などをしてみると、より一層面白く感じられると思います。

ゆびさきと恋々
9

美しい表現力

森下Suu作の漫画を原作とするアニメ。主人公である聴覚障がいのある大学生の女の子・雪と、同じ大学の先輩・逸臣との恋愛を描いた作品だ。
雪の心の声と、雪とコミュニケーションを取ろうと手話を覚える逸臣の静かな指先のやりとりが美しい。
度々海外へと飛び、言葉の通じない人たちとコミュニケーションを取り、現地での思い出の写真を雪に見せる逸臣。雪は、自分が知らないもっと広い世界を教えてくれる逸臣にどんどん惹かれていく。逸臣もまた、聴覚障がいであるため、汚れた言葉を聞いていない雪の世界に惹かれ、「自分を雪の世界に入れてほしい」と思い始める。
音のない世界を生きている雪と、あらゆる国の言葉を聞いてコミュニケーションを取っている逸臣の、全く違う世界を生きている2人に共通する「コミュニケーション」が手話と口話であり、それらが静かに繰り広げられるのだが、アニメーションが繊細で、また優しい色で描かれ大変美しい。
雪と逸臣をとりまくサブキャラクターも個性的で魅力的だ。
雪の幼馴染であり、雪に好意を寄せる桜志の気持ちや、雪の友人・りんと逸臣のいとこである京弥との恋の展開など、メインキャラクター以外の恋の展開も気になり、作品の魅力の1つである。

ゆびさきと恋々
10

温かく柔らかく、滲むように優しい世界観

聴覚障がいを持った女子大生、雪のお話。
ある日電車で、困っている様子の外国人に話しかけられる雪。聴覚障がいがあることもあり、上手く対応できずに困っていると、そこに男性が現れる。
雪の代わりにコミュニケーションをとってくれたその男性は、雪の友人である、りんと同じサークルに所属している先輩だった。
耳の聞こえない雪に動じることもなく、「また」と言い残して去っていく逸臣。
この日から雪は、逸臣に憧れを抱き、意識し始める。
後日大学で友人のりんに話を聞くと、逸臣は、世界を旅して飛び回るバックパッカーであり、近くのバーでアルバイトをしていることを知る。
そこのバーのマスターはりんの好きな人ということもあり、雪とりんは2人で勇気を出してバーを訪れ、連絡先を交換することを決意する。
いざバーを訪れた雪だが、緊張してなかなか連絡先の交換を切り出せずにいた。ホワイトボードで会話をしたり、唇の動きを読ませたり、雪が気後れしないよう自然に接してくれる逸臣に惹かれていく雪。
連絡先を聞けないままバーをあとにしたが、逸臣が帰り道を送ってくれることに。勇気を振り絞ってついに連絡先を聞いた雪。
すると逸臣は「いいよって、手話でどうやるの?」と優しく笑ったのだった。
逸臣は耳の聞こえない自分にも自然に接してくれる。
雪は、自分の世界に突然降ってきた感情を、大切にしたいと強く思った。
世界を旅するバックパッカーの逸臣と、聴覚障がいのある雪。
それぞれのキャラクターが非常に魅力的で、作画も美しい。
漫画では通常白黒で描かれるものだが、その白黒の世界でも、それに留まらない温かな世界観が表現されている。主人公である雪がぽつりとこぼす言葉からは、聴覚障がいとともに生きてきた、これまでの人生の大変さを窺い知ることができる。しかしながら、卑屈さを感じさせないその心の白さはまるで、雪という名前にふさわしいと言えよう。
2人のほか、雪や逸臣のまわりの人間も魅力的。
この作品の温かさは、少女漫画の恋愛を忘れてしまった世代にも、滲むように沁みてくる作品と思う。

ゆびさきと恋々
10

少女漫画にはなかなか無かった題材!

「ゆびさきと恋々」の作者は森下suu先生。森下suu先生の名前を一度も耳にしたことがない少女漫画好きな人はいないのではないでしょうか。「日々蝶々」や「ショートケーキケーキ」という王道の恋愛漫画を輩出されてきましたが、「ゆびさきと恋々」は聴覚障害のある女の子と世界を飛び回る男の子の物語です。
女の子は生まれつき音が聴こえない世界の中で生きてきました。それに不満も辛さも感じたことがない生活だったのですが、ある日、広い世界を知る男の子に出会ったのです。
その男の子の格好良さ、口数が少ないけれど、どこか優しさを感じます。クールな男の子が、聴覚障害のある女の子に持った興味が段々と恋愛感情に変わっていく様が今後ドキドキ、キュンキュンするポイントだと思います。
なんていったって、女の子が可愛い!!奥ゆかしさがあり、照れ屋な女の子がその男の子に対しては頑張ってアタックしているところが応援したくなるポイントです。
処女作より比べると森下suu先生の画力が格段に上がっており、上記の素敵なストーリーがさらにパワーアップされて漫画の世界に引き込まれてしまいます。
今後の展開と、二人の関係がどうなっていくのか…さらに楽しくなること間違いなしです!