サンドラ・ブロックの演技が光る!女性の信念と家族の愛に支えられ少年が夢をつかむまでを描いた奇跡の実話
一時的にホームレス生活を強いられた黒人の高校生・マイケル。そんな彼が、裕福な白人家庭に引き取られ、持ち前の運動能力を発揮しアメフト選手として活躍する物語。実在する選手と家族がモデルになった。
マイケルをあらゆる悪意から守る母親リー・アンを演じたサンドラ・ブロックは、この作品でアカデミー主演女優賞を受賞。
彼女が演じるリー・アンは、信念と愛情に満ちていた。肌寒い夜に薄着のマイケルを家に泊めることを即決し、マイケルの地元である危険地区に住む男から脅されても屈しない性格の持ち主だ。
「目の前にいる困っている人を助けたい」「家族は何があっても守る」という信念に従い、体が勝手に動いた。そう感じさせる見事な演技だった。
リー・アンと彼女を支える夫・ショーンは、家庭環境に恵まれず知り合いの家からも出されてしまったマイケルにとって、初めての信頼できる大人である。
しかし、リー・アンは完璧な人ではない。あとになって、判断を間違えてしまったのではないかと悩み、夫に相談したり娘に本当の気持ちを確認したりと、自己中心的な性格も描かれている。
欠点を抱える普通の人が、恵まれない環境に育った少年に心を寄せ、手を差し伸べる姿に心が震える。
母親から影響を受けた2人の子どもたちとマイケルの交流にも注目してほしい。
同じ学校に通う姉・コリンズは、学校で肩身が狭い思いをしながらもマイケルの優しい人柄を認め、学校でも家と同じように接する。弟・SJは作品にユーモアを加え、マイケルが家族に溶け込むためのキーパーソンを担っていた。
SJと2人でアメフトの特訓をするシーンや車の中でラップを歌うシーンを、一番好きなシーンに挙げる人も多いだろう。思い出しても、心がほっこりし笑顔になってしまう。
自分を守ってくれる両親や自分を認め、慕ってくれる姉弟と一緒に暮らせる環境を得たマイケルは、安らぎと幸福を感じていた。
では、マイケルだけが与えられていたのか。そうではない。マイケルによって気付かされた幸せや新しい喜びを、確かに4人も感じている。
この作品は、白人がかわいそうな黒人を助けるだけの話ではないのだ。
人と人との結びつきで得られる幸せがあること、手の届くところに実は幸せが隠れていることを、静かな感動とともに教えてくれる作品である。