凶悪 / The Devil's Path

凶悪 / The Devil's Path

『凶悪』とは、ノンフィクションベストセラー小説『凶悪 -ある死刑囚の告発-』を元に、2013年に映画化された社会派サスペンス映画である。雑誌記者の藤井(ふじい)は、上司から須藤(すどう)という死刑囚に会うように言われる。須藤は数々の犯罪に手を染めてきていた。そして、須藤と共謀して多くの犯罪を犯し、最後には須藤をだました木村(きむら)という男の話を聞く。藤井は話を聞くうち、家庭を顧みず取材にのめりこんでいく。この映画は、私たちの身の回りのどこにでも存在しうる犯罪をリアルに描く作品となっている。

凶悪 / The Devil's Pathのレビュー・評価・感想

凶悪 / The Devil's Path
8

その「凶悪」さに戦慄する!

2013年に公開された映画です。
実際にあった事件をもとにされた作品でありますが、とにかく内容がえぐい。
主人公はとある雑誌の記者・藤井。彼のもとにとある死刑囚・須藤からの手紙が届きます。
それは、自分が犯した犯罪に関わっていた人物を告発するものでした。
その人物は逮捕されることもなく「シャバで生きて」います。
須藤の手紙、そして面会を通して事件を追っていく主人公。
映画では、事件の様子が克明に描かれており、観ていて不快になるほど。
でも、その不快な場面を「面白い」と感じてしまう自分の中にも「凶悪」を見ました。
借金の返済のため、自分の家族の保険金殺害を依頼してしまう人物。
それを請け負う「先生」という人物。
「先生」は他にも須藤とともに多くの殺人を犯しています。
須藤はその「先生」を追い込みたかったわけですが、上告中の自分自身の裁判に藤井を利用しているんですよね。
藤井が事件を追っていくうちに人相が少しずつ悪くなっていくのが印象的でした。
そして最後、逮捕された「先生」との面会。
「俺を本当に殺したいと思っているのは……」と藤井を指す「先生」。
そう、「凶悪」なのは殺した数だけではありません。
自分自身が持っている暗い闇もまた「凶悪」なのです。
そしてまた、この映画を観て犯人たちに対して思う視聴者の気持ちもまた「凶悪」であるわけです。
そこに気が付いた時、自分の心の闇に戦慄することでしょう。
グロテスクな表現が多いため、万人にはお勧めできませんが、かなりキてる映画です。
さて、あなたの心の中に「凶悪」はあるでしょうか?試しに観てみるといいかもしれません。

凶悪 / The Devil's Path
7

凶悪。人間の一番残酷な所業

人間の残酷な部分を「これでもか」とリアルに描いた映画です。

なんと、実際に起こった事件を題材にしています。観ていると吐き気を催すほどの嫌悪感を感じることがありますので、心の弱い方にはお勧めできませんが…。

人間の汚い部分をリアルに知りたいのであれば、絶対に観たほうが良いです。
終始汚いお金にまみれた、裏の世界を生きる人間たちのどす黒い欲望を如実に描いたある意味問題作だと思います。

保険金殺人事件は聞きなれた言葉だと思いますが、ここまで狡猾にかつ残酷なことを人間が行えるのか…。後味の悪さも癖になります。

ここから少し話の内容に触れます。

山田孝之演じる、冴えない雑誌記者のもとにとある死刑囚から手紙が届きます。
その内容は、
「自分は殺人事件で捕まったが事件の首謀者が他にもいる。そいつが捕まっていないのが納得できない。記事にして欲しい」
記者の上司は相手にするなと釘を刺すが…。

記者が会いにいくと、およそ人間の所業とは思えない、凄惨な事件を嬉々として語る麻薬中毒の死刑囚がそこに居ます。
その死刑囚の話から事件の全貌を探る取材が始まるのですが…。

事件の内容もさることながら、リリーフランキー演じる【先生】と言われる首謀者が本当にえげつないです。
会社の命令を無視して、家庭も顧みず、仕事もせずにそんな事件の取材にのめり込んでいく記者の姿にも言葉を失います。
ただの事件のノンフィクション映画というだけでなく、それを取り巻く人間模様や、事件とは無関係なはずの記者がどんどん引きずりこまれていく様は観ていてなんとも言えない気持ちになりました。

笑えないし、泣けない。けれど怖いもの見たさに観てしまう。そんなディープな映画です。