ロード・エルメロイII世の事件簿 / The Case Files of Lord El-Melloi II

ロード・エルメロイII世の事件簿 / The Case Files of Lord El-Melloi II

『ロード・エルメロイII世の事件簿』とは、TYPE-MOON作のビジュアルノベルゲーム『Fate/stay night』シリーズのスピンアウト小説である。
過酷にして熾烈な第四次聖杯戦争を生き延びたウェイバー・ベルベットは、ロード・エルメロイII世と名を変えて時計塔の講師となっていた。魔術師たちの総本山である時計塔は権謀術数のるつぼでもあり、陰謀、策略、不可思議な事件には事欠かない。エルメロイII世もまたそれらに次々と巻き込まれ、内弟子のグレイや自身の教室の生徒たちと共に解決していく。

ロード・エルメロイII世の事件簿 / The Case Files of Lord El-Melloi IIのレビュー・評価・感想

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ロード・エルメロイII世の事件簿 / The Case Files of Lord El-Melloi II
9

難しい魔術用語も美麗イラストで読みやすく

世に大きな広がりを見せる『Fate』の世界。その原初の物語ともいえる『Fate/Zero』にて、ライダーのマスターを務めたウェイバー・ベルベットが、本作の主人公である。

『Zero』のウェイバーといえば未熟で青臭いイメージが強いが、本作ではその数年後の姿が描かれている。聖杯戦争にて大きく成長した彼はさらに経験を得て、魔導協会の総本山:時計塔の「ロード」の座に納まっている。ロードとは時計塔の各部門を治める12人の頂点である。
エルメロイとはご存知の通り、『Zero』でも登場したライダーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトその人である。彼の抜けた穴を埋め合わせる形でロードを、次期当主であるライネス・エルメロイ・アーチボルトに脅され半ば強制的に継ぐこととなった、というところから話が始まる。

小説、アニメにもなっている本作品のマンガ版の魅力は、なんといっても複雑な魔術知識を絵画のようなイラストで分かりやすく読めるという点だろう。本作の推理において重要な核をなす魔導知識だが、小説もアニメもちんぷんかんぷんでついていけなかった人も少なくないのではないだろうか。
『ロード・エルメロイII世』が語る深い魔導知識は実際の魔術を規範にしているため、読みごたえは抜群だ。漫画にしては文字が多いイメージではあるが、小説よりは格段に読みやすく、アニメでは聞き逃した部分や語られなかったエピソードも楽しめる。まだ読んでいない人はぜひ手に取って欲しい逸品である。

ロード・エルメロイII世の事件簿 / The Case Files of Lord El-Melloi II
10

これが魔術世界のミステリーだ!

2019年に放送された「ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-」は『Fate/stay night』のスピンオフ作品で、三田誠原作の魔術師であるロード・エルメロイII世が主人公のミステリー作品です。Fate/ZEROという作品に登場したウェイバーが苦悩しつつも、成長した姿が描かれています。
全十三話で構成され、前半は三田誠監修のオリジナルストーリー、後半は原作である魔眼蒐集列車のエピソードをアニメ化しています。
この作品の見どころとして、まず初めに作画が美麗であることが挙がります。背景は細かなところまでしっかりと描き込まれており、キャラクターはまるで実在しているかのように生き生きと描かれています。
次に主題歌や劇中の音楽を担当している梶浦由記さんが奏でるミュージックがとても素晴らしく、作風にマッチしている点が挙がります。
物悲しくも力強く、そして引き込まれる音楽は映像と相まって何倍も作品を洗練させています。
最後に、主人公であるロード・エルメロイを担当している声優 浪川大輔さんについてです。彼は大人となったロード・エルメロイと少年時代であるウェイバーの両方を担当していますが、全く声質の違う演技を見事に使い分けています。本当に同じ方が担当しているのかと思うほど別人であり、その演技は脱帽としか言い表せません。
スピンオフ作品ですが、この作品単体でも十二分に楽しめると思います。是非、一度ご覧になってみては如何でしょうか?