難しい魔術用語も美麗イラストで読みやすく
世に大きな広がりを見せる『Fate』の世界。その原初の物語ともいえる『Fate/Zero』にて、ライダーのマスターを務めたウェイバー・ベルベットが、本作の主人公である。
『Zero』のウェイバーといえば未熟で青臭いイメージが強いが、本作ではその数年後の姿が描かれている。聖杯戦争にて大きく成長した彼はさらに経験を得て、魔導協会の総本山:時計塔の「ロード」の座に納まっている。ロードとは時計塔の各部門を治める12人の頂点である。
エルメロイとはご存知の通り、『Zero』でも登場したライダーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトその人である。彼の抜けた穴を埋め合わせる形でロードを、次期当主であるライネス・エルメロイ・アーチボルトに脅され半ば強制的に継ぐこととなった、というところから話が始まる。
小説、アニメにもなっている本作品のマンガ版の魅力は、なんといっても複雑な魔術知識を絵画のようなイラストで分かりやすく読めるという点だろう。本作の推理において重要な核をなす魔導知識だが、小説もアニメもちんぷんかんぷんでついていけなかった人も少なくないのではないだろうか。
『ロード・エルメロイII世』が語る深い魔導知識は実際の魔術を規範にしているため、読みごたえは抜群だ。漫画にしては文字が多いイメージではあるが、小説よりは格段に読みやすく、アニメでは聞き逃した部分や語られなかったエピソードも楽しめる。まだ読んでいない人はぜひ手に取って欲しい逸品である。