庵野秀明監督らしいエヴァンゲリオン
公開から20年以上が経ち、何度もこの作品を見返していますが、見る度に感想や考察の変わる映画はこの作品くらいかもしれません。
「自分はここに居てもいいんだ!」と心の底から納得できたシンジに、友人達からの「おめでとう」につつまれ、祝福ムードだったテレビシリーズのラストとは別のエンディングを迎えるエヴァンゲリオンのストーリー、というコンセプトの作品です。
テレビシリーズの暖かなエンディングとは一変、明らかに雲行きの怪しい冒頭からスタートし、
各々の抱える深い理由でエヴァに乗れないシンジやアスカ、投入された戦略自衛隊によって虐殺されるNERV職員達、シンジを救うために自らを犠牲にするミサト、恐ろしいことを企んで実行しようとするゲンドウ…。
劇中のシンジと同じように「もういやだもういやだもういやだ」と連呼したくなるような鬱すぎる展開の嵐です。
しかし、それが庵野秀明監督の、旧劇場版エヴァンゲリオンの魅力でもあるのです。
終始暗い雰囲気ながら、そんな空気を吹き飛ばすかのように活躍するのが、弐号機に乗って覚醒したアスカです。
不気味なエヴァシリーズが9体もの軍勢で攻めてくるのを相手に、たった1人で果敢に立ち向かうのですが、その戦闘シーンはロボットアニメのセオリーとも言える、ロボット同士の重量感溢れる熱い戦いで、きっと制作された方々はノリノリで描かれたのだろうなぁというのが伝わってきます。
しかし、そこは庵野秀明監督。
アスカ覚醒からの敗北、そして絶望への突き落としっぷりはとてつもなく、メンタルの弱い人だとどん底から這い上がるのにものすごい時間と体力が必要になると思います。私もそうでした。
作品の最後のアスカのセリフ「気持ち悪い」は有名ですが、これは当初予定されていたセリフではなく、アスカの声優を務められた宮村優子さんの案でこうなったそうです。
確かに「気持ち悪い」と納得するラストの台詞ですので、ぜひ最後までご覧下さい。もちろん、褒め言葉です。