生きてるだけで、愛。

生きてるだけで、愛。のレビュー・評価・感想

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生きてるだけで、愛。
9

人生を見つめ直す映画

過眠症や鬱を題材にした恋愛映画。
健康な人には理解されない寧子の言動が繰り広げられるが、最後の別れのシーン、「あんたが別れたかったら、別れてもいいけど。あたしはさ、あたしとは別れられないんだよね、一生」「いいなぁ津奈木。あたしと別れられて、いいなぁ」と、自分自身との葛藤を含んだセリフ。精神病の人だから思うことではなく、誰にでも持っている小さな悩みを代弁したような言葉に感じました。
「あたし」は「あたし」と一生別れられない。自分自身を受け入れ、自分自身と生きていく。簡単のようで難しい事だと思いましたが、タイトルの通り『生きてるだけで、愛。』は、生きているだけでその問題を解決する事ができるし、もしできそうになくても、ほんの一瞬自分や他人と分かり合える時がくる。その一瞬のために、これからも生きていく、と、伝えたい想いが溢れた映画、恋愛映画のように思えて自分と向き合うための映画だと思いました。
また、病気でも健康でも関係なく、人生を見つめ直すべきとき、おすすめの映画です。
趣里の迫真の演技にも注目。有名人だからとか2世だからとか全く感じさせない、この仕事でご飯食べていくといったプロ意識を感じさせられる映画となっていました。

生きてるだけで、愛。
8

彼氏にもわかってもらえない

菅田将暉の津奈木役がちょっと意外だったというか、もっとこう明るい感じの役が多いのかなと思っていたのでこういう菅田くんもよかったです。
ああいう精神的に不安定な人と3年も一緒にいたのは包容力があったんだと思います。
でも、私としてはもう少し津奈木に感情あらわにしてほしいというか、寧子の不安もちょっとわかりました。
なんか、喧嘩し合うカップルってあんまり良くない傾向なのかもだけど、何もいってくれないと自分のこと見てくれてない気もします。
彼氏にまでわかってもらえないなんて、悲しいですよね。
寧子の前に現れた津奈木の元カノが結局、なんだったのかよくわかりませんでしたが、彼女を立ち直らせようと頑張ってくれる人がいたのに、うまくいかないところとか共感できます。
こんないい人がいたのにとか周りが勝手に言ってるだけで、本人にとっては違うことってあるよねと思いました。
見ていると、彼女の精神的不安定さに引き込まれそうになります。
ちょっと見ているのがつらい作品でした。
でも、それがリアルだと思います。津奈木が最後に言った一緒にいる理由はとてもいい理由でした。
それをうまく伝えられたら、寧子も変わってたのかなと思いました。

生きてるだけで、愛。
10

こんなに素敵な作品に出会えたことを神に感謝せざるを得ない

寧子と津奈木が走るシーンは、チワワちゃんと同じような爽快感があった。何となくふわふわ足が浮いてて、どこに存在してるか分からないし、存在していい場所もなさそう。でも光しか感じなかった。あなたは生きてるだけでいいって言われるような作品はあるけど、私は生きてるだけでいいって自分自身が思う作品はあまりないような気がする。良かった。
料理しようと思ったんだけど、何もかもうまくいかなくて暴れてる寧子を津奈木が押さえつけるように抱きしめるシーン、あそこに全ての「生きているだけで、愛」が詰まっている。間違いなくそう。

自分が"見抜かれる"感じがして周りとの距離感がわからない、突き詰めて行けば、私と私の距離感さえわからない、そういう苦しみが自分自身の過去を回想させながら痛いほどに伝わってきて、至る所で気づけば泣いていた。

早く観るべきだった、今年イチかもしれない。こんなに素敵な作品に出会えたことを神に感謝せざるを得ない。
映像の美しさ。鬱のリアルさ。
とてもよかった。
菅田さんじゃなきゃ、もっと重い話にきっと見えてると思う。
自分が脱ぎ捨てて落としたものを拾ってくれる人がいる事の有難さ。趣里の演技がすんばらしい。物語だけど、生きてる いまの映画だった。暗い話だけど救われるし、ただ重くてつらいだけじゃない。役者さんみんなすばらしいから時間が早く感じた。