気軽に、やってみる。
三浦しをんの小説「神去(かむさり)なあなあ日常」を原作としている本作品。
「ウォーターボーイズ」や「スウィング・ガールズ」など、あまり日の目を見ない部活やカルチャーにスポットを当てることを得意とする矢口史靖監督がメガホンを取りました。
大学受験に失敗、夢が無い・今が良ければハッピーのダメダメな男子高校生・勇気がひょんなことから林業を学ぶことになり、様々な紆余曲折を経て、“山の男”へと成長していく物語です。
映画冒頭、林業の仕事を学ぶべく研修先へ行く勇気ですが、人の多い東京の街を他人とぶつからずにスムーズに歩き、スマートフォンで音楽を聞きながら向かうシーンは今どきの若者としては当たり前の動きです。ですが、研修も終わり東京へ帰ってきた勇気は、東京の人の多さ、まっすぐ歩けないつらさ、以前は気にならなかった肩と肩がぶつかっても謝らない人たちの冷たさを痛感します。家に帰ろうと歩いていたときどこからか木のいい匂いがしてきて勇気は自分がいるところはここじゃないと思い、村へと帰り物語は終わります。
今が良ければ、楽しければOKな勇気でしたが、林業は短期間の仕事ではありません。手作業で木の苗を植え、良い木が育つように間伐したりと何人もの人が何百年もかけ、こなしていく仕事です。勇気は自分の子供、孫のことまで考えたことがなかったのでそのようなことを棟梁が言われ、将来について真剣に考えるようになったシーンが印象的です。
林業だけでなく、農業や漁業などは人材不足が大きな課題です。IT技術を用いて、若者を取り込もうと努力しています。
この映画は若者には特に響く映画だと思います。夢ややりたいことも特に無い、でも社会に出るのは怖いと考えているのなら、「何でも興味を持ったものはやってみる!」と力をくれる作品です。実際、主人公の勇気も林業の紹介の冊子の表紙を飾っていた女性に会いたくて村に行ったくらいです。そして、現在働いている若い社会人にも響くのではないでしょうか?やりたいことも無い、楽しくもなく、淡々と過ごす日々を少し見直してみる、新たな経験をしてみる、そんな人の背中を押してくれる作品となっています。