ありふれた、だからこそ胸に刺さる優しいラブコメディ
インパクトの強いタイトルから少々敬遠されがちで間口が狭くなっている印象のアニメ。タイトルで損をしているのではとの声もよく耳にします。実際あらすじとしてざっくり説明すると、SFチックな要素を盛り込んだハーレム色の強いラブコメ、という身も蓋もないことになりかねないのですが、それらの要素はあくまでエッセンス。メインは思春期の少年少女のありふれた、だけどその時の本人にとってはどんな事よりも重たい問題を主人公を中心とした他人との触れ合いの中で氷解させていく温かなストーリー。どのキャラクターの問題にも、直接戦うでもなく、逃げるのでもなく、うまく躱しながら丁寧に折り合いをつけていくような、穏やかで優しい解決を用意してくれています。また、ストーリーも画面も音もすべてが洗練された印象を受けるのがアニメ作品として素敵なところ。心情に寄り添うような舞台設定や、苦しさよりも温かさを強く感じられる尺の使い方、声優さんたちの丁寧で感情豊かなお芝居など、挙げれば切りがありません。年代性別問わず何かを感じ取れる作品だと思います。ただしひとつだけ難点を上げるとすれば、あらゆる点においてリアリティが強い為に、大きな時代の変化などによって過去の作品になってしまった時にどれだけ魅力が残るのかが不明瞭なところ。視聴できる環境にある方にはなるべく早く見てほしい作品です。