信じることの難しさ
豪華な俳優陣としても話題となった映画「怒り」。
渡辺謙、松山ケンイチ、宮崎あおい、妻夫木聡、綾野剛、森山未來、広瀬すず、佐久本宝。各世代の演技派の俳優、女優陣が魅せたそれぞれの役が素晴らしかったのは言うまでもないが、やはりこの映画のおもしろさの一番の理由は、脚本にあると思う。
自分の信じた人が、自分の愛した人が殺人犯かもしれない。それでもその人を信じ続けられるか。そんな重い問いを、終始自分に向けられているような気がする。
それぞれが愛した人の真実を知ったあとで、宮崎あおい演じる槙愛子と、妻夫木聡演じる藤田優馬が涙を流すシーンは、この映画の中で最も心に響くものがあった。彼らは相手を信じきることができなかったことに、申し訳なさと悔しさと後悔の涙を流したのだ。相手の全てを知らないと信じきることもできない自分への怒りもあったのかもしれない。一方で信じるべきではなかった人を信じてしまった若い男女も描かれている。広瀬すず演じる小宮山泉と、佐久本宝演じる知念辰哉である。映画を通して、信じるということへの難しさを、観ている者に訴えかけられた気がした。それでも自分が愛した人を信じれる人になりたいと思ったし、後悔の涙を流すようなことにはなりたくないと思った。重たい内容ではあったが、脚本が素晴らしく、その脚本を体現した俳優、女優陣の演技も素晴らしかった。