これAIが主題なんですよね?
大人気シリーズの三作目にあたりますが、残念ながら観賞に堪える内容ではありません。
いくつか問題点が挙げられますが、第一に目につくのは薄っぺらいキャラクター造形でしょう。
相変わらず、主人公キリトの言動には内面的な成長が見られません。
「デスゲームの死線をくぐり抜けて……」とか、「俺には守るべき人が……」とか、その繰り返しでしかない。
新たに登場する悪役剣士、ライオスやウンベールに関しても、もはや判で押したようなキャラクターに留まってしまっています。
もちろん、上記のような問題点は今作に始まったものではありません。
前二作でもキャラクターは十分に類型的でした。
それでも観賞に堪えられたのは、情報技術の時代に即した、魅力あふれる世界観がそこにあったからです。
そして本作でも、その世界観は健在といえるでしょう。
にもかかわらず、このアシリゼーション編で粗ばかりが目立ってしまうのはなぜなのか。
決定的な理由は、おそらく今作が「AI」、人工知能をテーマに掲げている点にあるでしょう。
すなわち、本来であれば、このアシリゼーション編こそもっとも人間味のあるキャラクターを登場させなければならなかった。
ユージオ然り、アリス然り、人工フラクトライトを「魂」=「内面」のある存在として描かなければならなかったわけです。
それに失敗すれば、物語はそのテーマ性もろとも瓦解することになってしまうはず。
今作に「魂」はあるのでしょうか。
制作スタッフは扱っているテーマに対し、もっと自覚的であるべきです。