悪の定義の難しさを描いた漫画
この『東京喰種』という漫画は、私たち人間に大きな疑問を打ち付けるものだ。私たち人間は生きるために動物や植物、様々な生命を喰らっている。私たちは生きるだけで、他の生命を喰らっていかなければならない。その点に関して皆さんは悪を感じるだろうか。今の状態では皆さんNOと答えるだろう。
しかし皆さんが喰らわれる側になった時、自分たちを喰らう側のことをどう思うだろう。悪だと感じるだろう。敵だと感じるだろう。倒そうと考えるだろう。しかしその捕食者も我々と同じく生きるために必要なだけだ。だから捕食者も自分を倒そうとする被食者達を悪とみなすだろう。ここで問題が生じる。被食者も捕食者も悪である状況が生まれるのだ。果たして悪とはなんなのだろうかという疑問を考えることをこの漫画は読者に強制する。悪を定義付けできる生物である人間の読者に「お前は本当に正義であるのか?」という問いを強制する。そこがこの漫画のスタート地点でありテーマだと私は考える。
主人公は普通の人間と、喰種という人間を食う化け物のハーフになってしまう。人間からしたら悪である喰種、喰種からしたら悪である人間の2つの面を持ってしまった主人公は、悪とは、正義とはについて葛藤しながらも成長していく。我々読者も共に成長することができるだろう。いつかこの世界に人間と同等レベルの生物が誕生した際の思考法の会得のために一読してはどうだろうかと思う。