天気の子

『天気の子』とは、2019年7月19日に公開された日本のアニメーション映画。
『君の名は。』や『言の葉の庭』で知られる新海誠が監督・脚本を務めた。
本作は、家出して東京にやって来た高校生の森島帆高が、天気を自在に操れる「100%の晴れ女」である天野陽菜と出会い行動を共にしていく、一風変わったジュブナイル物語である。また作中には前作『君の名は。』のキャラクターが登場している。
日本での興行収入は141億円を超え、2019年に公開された映画では『アナと雪の女王2』を抑え、興行収入ランキング1位を記録している。
また、新海誠による書き下ろし小説『天気の子』が公開前日の7月18日に出版され、最終的には65万部を売り上げ2019年の年間ベストセラー文庫本でも1位を記録した。
主人公の森島帆高(もりしまほだか)の声に醍醐虎汰朗が、ヒロインの天野陽菜(あまのひな)の声に森七菜が起用されており、脇を固めるキャスト陣も小栗旬や本田翼など豪華である。
本作で使用されている27曲の劇伴と5曲の主題歌を担当したのは国民的ロックバンド・RADWIMPS。
なお、本作は第43回日本アカデミー賞で「最優秀アニメーション作品賞」と「最優秀音楽賞」を受賞している。

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天気の子
10

今を生きる若者が選択する未来とは

新海誠監督は、「天気の子」で今を生きる若者たちの姿を鮮やかに描きだしてくれた。
主人公の穂高(声・醍醐小太郎)は、家出した先の東京で、陽菜(声・森七菜)という少女に出会う。彼女は雨の空に祈ることで、空を晴れにすることができる不思議な能力を持っていた。
前半は穂高たちが陽菜の空を晴らす能力を使って花火大会や結婚式の当日を晴れにして、謝礼をもらう姿が明るく描かれる。中盤以降は晴れをもたらした代償として陽菜が空に連れ去られそうになったり、家出少年の穂高が警察に追われたりと急展開を迎える。
この作品を観る大人は、穂高の気持ちに正直ついていけないかもしれない。彼は作中でも危険人物として扱われているし、自分の大切なもののためなら人に銃を向けてしまうような危うさを持っている。
しかし彼は、ちゃんと彼なりに未来を選択している。高校生の頃を思い起こしてほしい。誰もが穂高のように向こう見ずで、好きな人のためならなんでも乗り越えられたのではないか。何かを願ってもそんなことはありえないとか、諦めようとか、大人になってから向き合わなければならない感情とは無縁なのだ。彼は全力で今を生きている。
そして穂高が生きている「今」というのは、紛れもなく我々が生きている現代の日本だ。日本は年々貧しい国になり、子どもの数はどんどん減っていく。こんな狂った社会の中で生きていかなければならない子どもたちが、どんな未来を選択するのか。
この映画では、子どもたちにとっての、そして今を生きる私たちのための、ひとつの解が示されている。生き方に迷っている人にこそ観てほしい作品だ。