胸に刺さる名セリフと表現
人間を食料としている人種「喰種(グール)」が存在する東京で平凡な高校生活を送っている主人公が、行きつけの喫茶店である女性と出会い、その出会いをキッカケに事件に巻き込まれ、人間である主人公は半分喰種になってしまいます。それまで送っていた平凡な日常が、苦悩と苦痛の非日常へと一変し、非日常の中でこれまで見えなかった喰種の世界を知り、喰種と人間の間で、双方の現実と向き合い共存の道を探し、成長を描く漫画です。どちらにも存在する生きるための「正義」があり、両者の気持ちがわかる立場として、苦悩する主人公の心境表現が時に痛々しいのですが、反面、弱肉強食がリアルに描かれていて、読み進めていく内に、「誰が正しい?」「何が間違っている?」という気持ちになり、最後まで読み終えた時には、自分以外の「生き物」に感謝や優しさを持てる内容になっています。特に主人公を含む、作中で登場するキャラクターが発するセリフが奥深く印象的で、中でも「この世のすべての不利益は当人の能力不足」、このセリフには胸を打たれました。自分にふりかかって来る不条理は、生きていると大なり小なり必ず感じるもので、その都度、「どっちが悪い?」「誰が悪い?」「自分が悪い?」と悪者を探して、自分を正当化していたのですが、このセリフに出会って、周りが悪いのではなく問題は自分にあると考え方を変えて以降、不思議なのですが、人を責めるより気持ちが楽になりました。上記以外にも、考えさせられる名セリフや言葉選びが秀逸だなと感じる表現が多々あって、読んでいて飽きない作品となっています。