怒り / Rage

怒り / Rage

2010年に国内の映画賞を総ナメにした大ヒット作「悪人」の原作者吉田修一と監督李相日が6年振りにタッグを組み、音楽に坂本龍一を加え、実力派のオールスターキャストで挑んだ感動のヒューマンミステリー。八王子の平静な住宅街で残忍な夫婦殺人事件が起こる。一年後のある日、千葉と東京と沖縄に素性の知れない3人の男が現れ、それぞれに重厚な人間ドラマが展開する。愛した人は、殺人犯なのか?2016年9月全国公開。

redfreesia82のレビュー・評価・感想

怒り / Rage
9

「怒り」という感情の複雑さ

この作品は2016年に公開された映画である。
「怒り」とは人間がもつ感情のうちの一つであるが、人は一体どういった時にこの「怒り」という感情を抱くのだろうか。
それは誰かに対して向けられた「怒り」かもしれないし、自分自身に向けられる「怒り」かもしれない。
作品の中でも登場人物はこの「怒り」という感情に翻弄されていく。
信じていた者に裏切られた悲しさから生じる「怒り」、自分を信じて着いてきた人を疑ってしまった自分自身の不甲斐なさに対する「怒り」、うまくいかない状況の中で誰かから向けられた優しささえも見下されているように感じるといった卑屈さから生じる「怒り」。
紐解いていくと、「怒り」という感情はただ単に「気に入らないから腹がたつ」といった単純なケースは少ないのかもしれない。
「悲しさ」「後悔」「劣等感」といった様々な感情が絡み合って生まれるものが「怒り」ではないだろうか。
作品の中でも、登場人物は怒りを表現する際に泣き叫んだり、膝から崩れ落ちたり、笑いだしたり、様々な表情を見せながら「怒り」を露わにしていく。
この作品では「怒り」という感情の複雑さや、些細なことから相手を疑ってしまったり、「怒り」と向き合うことを放棄して堕ちていく人間の弱さが描かれている。
その様子を見て他人事と捉える人はおそらく少ないだろう。自分の心の中にも存在する弱さや愚かさがくすぶられるのではないだろうか。