絶望と成長の連鎖。感情移入不可避の引き込まれる作品です。
『東京喰種』は石田スイ先生のデビュー作。
舞台は東京、人の肉を食べることでしか生きられない怪物「喰種」が存在する世界のお話です。
彼ら喰種は人の姿を持ちながら、人を襲い、屠り、その血肉を食らうことで食欲を満たしてきました。
そんな存在を全く知らない主人公の金木は、ある出会いをきっかけにそれを知り、そして自分自身もその身を喰種へと変えられてしまうのです。
もともと人であったというのに、人を食らうことでしか生きられなくなる。
これは作中でも登場する表現ですが、金木はカフカの『変身』のように、唐突にその在り方を変えられ、絶望を強いられてしまいました。
ただの人間から、化け物に。
この漫画は、そんな絶望と孤独の底に叩き落され、理不尽に侵され尽くす金木の「悲劇」を生きる物語なのです。
劇的な展開こそありませんが、私たちにも不意に、唐突に、理不尽に、その身が絶望に飲まれることがあります。
絶望が絶望を呼び、やっと掴んだ希望を踏みにじられる…そんな苦渋に満ちた世界の「美しさ」が、この漫画では繊細なタッチでありありと描かれているのです。
一度読めばあなたもきっと虜になる。
そう、私は確信しています。