高橋留美子作品の中でも唯一の戦国御伽草子
自分の出自にコンプレックスを持ち、孤独だった主人公、犬夜叉が、現代からタイムスリップしてきた少女、日暮かごめと出会い、成長していく物語です。
この作品の描写で面白いのは、主人公の犬夜叉、犬夜叉の兄、殺生丸、そして犬夜叉の宿敵にあたる奈落、3人の物語が対比して描かれているところです。
物語の鍵を握るのは、手に入れたものの願いを叶えてくれるという「四魂の玉」という宝玉。
犬夜叉は物語の幕開け時は、この四魂の玉を手に入れて、本物の妖怪になりたいと願っていました。しかし、かごめを始めとした信頼できる仲間たちと出会い、宿敵奈落との戦いを続けていく中で、犬夜叉は、逆にありのままの自分を受け入れていくようになります。
それに対して、奈落は出自こそ特殊なものの、犬夜叉と同じ半妖。しかし、四魂の玉の入手に固執し、自分が最強の存在となるために汚い手段を厭いません。そんな彼は、真に心を許せる友達も仲間もおらず、ずっと孤独なままでした。
また、犬夜叉の兄で、完全な妖怪である殺生丸は、妖怪であることを誇りにし、人間を価値のない存在として見下す冷酷無慈悲な性格でしたが、物語が進むにつれて、彼は人間の少女りんと関わりを持つようになります。また、奈落の分身である風使い、神楽との接触も重ねていくうちに、殺生丸は次第に、他者への慈悲や悲しみといった感情を覚えていきます。
この三人の男性キャラクターたちの成長物語がとても上手に描かれている作品だと思います。
また、るーみっくわーるどの特徴でもあるラブコメも外せない魅力の一つです。
犬夜叉とかごめ、そして犬夜叉の元恋人の桔梗との三角関係の行方や、かごめに横恋慕する鋼牙、共に旅をする仲間から恋仲になっていく弥勒と珊瑚…彼らの恋が、奈落との戦いの中でより盛り上がっていく描写が、他のるーみっく作品にはない展開なので、是非、一度読んでみてほしいです。