実際の事件を元に作成された重厚なサスペンス映画
ストーリー序盤、同じ時間軸で物語に関わるそれぞれの登場人物や彼らを取り巻く環境を、頭で整理するのに少し苦労する。
ただ登場人物の表情や言動、人間関係を読み解く中で浮かび上がるそれぞれのキャラクターの個性には次第に引き込まれ、あくまで自然体でこの作品の世界観にハマることができる。
叙述的に進むストーリーの中「犯人は一体誰なんだ」というほのかな不安と期待を一種のじれったさと共に感じながら味わうのは新鮮であり、物語に引き込まれる心地よさに包まれる作品との一体感は、同時にこの映画を観終わることで喪失感さえ想起させた程である。
実話をもとに作成された為ストーリーは重厚。作品全体の雰囲気は終始暗くじっとりとした物だが、作中でそれぞれのキャラクターが見せる人間性やリアルな立ち居振る舞いによってスムーズな感情移入が出来たことは、この作品に没入するに至る大きな要因であることに間違いない。
犯人は殺人を犯したまま整形で顔まで変えて逃亡している凶悪犯。それが身近に潜んでいるかもしれないという恐怖心が終盤でのテンポのよい展開とともに増加していき、見終わった後も心地いいリアルな質感を持って体感できるので面白い。
サスペンスではあるがグロテスクな描写も序盤の一部だけであり、全般的にほぼ謎解きの要素が占めるためゴア表現が苦手な人も安心できる。そのためサスペンス好きだけにとどまらず全ての映画好きにオススメできる極上の邦画だと評すことができる。