乙嫁語り(森薫)のネタバレ解説・考察まとめ

『乙嫁語り』とは森薫によって描かれ、2008年10月から『fellows!!』で連載された、中央アジア、カスピ海周辺の地域が舞台の漫画作品である。作者の長編漫画第2作目。19世紀後半の中央アジア、カスピ海周辺を舞台にイギリスからの旅行者「ヘンリー・スミス」が出会う人たちの物語。古語である「乙嫁」を「美しいお嬢さん」ととらえ、第1の乙嫁「アミル」、第2の乙嫁「タラス」、第3の乙嫁「ライラとレイリ」、第4の乙嫁「アニス」、第5の乙嫁「パリア」とそれぞれの話が進んでいく。

エイホン家の近所に住む少女。
家族は父、母のみ。アミルのこの土地に来て初めての友達。
正義感が強くはっきりものを言う性格であり、そのせいで何人もの相手に結婚を断られている。また人見知りをする性格でもあり、気のある人にも素っ気ない対応をしてしまうこともある。
見事な細工のパンを焼き上げることができ、手先は不器用ではないのだが、刺繍だけはいらいらしてうまくいかないので不得意。刺繍よりも体を動かすようなことの方が、性に合っているようである。
長い髪と、おしゃれな刺繍のはいった洋服を着ているが、ほとんど手伝ってもらっていたらしい。

ウマル

左がウマル。右側にはパリヤがいる。じれったい二人。

パリヤの縁談の相手。
物心つかないうちから、病弱な母と死別している。その後は、隊商宿を昔していた父と二人暮らし。
そのせいで女性は元気な方がいいと、パリヤのことは最初から気になっていた。
そろばんが使うことができ、崩壊した町の建て直しをするため材料を揃えるために商談に連れて行っている。
将来は水車のある隊商宿を経営したいと思っている。

共通して登場する人物

ヘンリー・スミス

手前がスミス。奥にいるのはタラス。

この物語の主人公で、彼の旅先にて出会う乙嫁達の物語が展開されるという、狂言回しの役割をしている。
出身はイギリスでありイギリス人。ブロンドの髪と眼鏡をかけている。
性格は押しに弱くお人好しだが、とっさの機転でアミル達の危機を救うこともあった。
紋章入りの金の懐中時計を結納金代わりに贈る、子守専用のメイドが家にいるなど、実家はかなり裕福。兄が長男であるため、実家を継ぐことはないので、自身は好きなことをさせてもらっていると言っている。異国の風習文化に興味があり旅を続けながら、出会った人たちのことを手帳にメモをしている。
第2の乙嫁タラスに恋心を通わせ婚約をしたが、土地の風習や独特の親子関係から引き離される。

アリ

一番左がアリ。その右隣から隣はカルクク、アミル、パリヤ。

アンカラまでのスミスの通訳兼案内人である。
口が達者で世渡り上手。
結婚の結納金をためるために、高級を目当てにスミスの案内役をかってでる。しかし結婚するような相手はいない。相手にこだわりがないので、「誰でもいい」とその姿勢は楽観的。当初、スミスとは面識はなく、スミスはアリを探して一悶着を起こしてしまう。
お人好しなスミスに、呆れることもしばしばある。

『乙嫁語り』の用語

結婚

ライラとレイリの花嫁姿

この時代の人たちの平均寿命は50歳ほどであり、結婚適齢期は15歳から16歳ほどである。アミルは20歳で結婚したので、相当な行き遅れと言える。
結婚は本人達の自由な恋愛などできるはずもなく、特に遊牧民族であれば他の部族などに声をかけて適度な相手を見極め、早いうちに結婚をさせるのである。なぜなら婚期が遅れると子供を何人も産むことができないからである。
男家族は結納金の他、山羊や牛馬などを引き連れ、時には楽団を雇い嫁になる女性の家まで家族、親戚総出で向かうのである。そのお金は莫大なもので、一人結婚させるだけで大変な散財であった。
一方女性家族の方は、迎え入れる準備をする。あらかじめ男家族からもらっておいた山羊などをさばいて、お祝いに来てもらったお客さんのための料理を大量に作って待っておくのである。

子供

兄弟が多く、一人の女性がたくさん子供を産むことは良いとされている。
なぜなら今の医学ほど進んでいない世の中であるから、せっかく生まれてきた赤ちゃんの死亡率が相当高かったと言えるからであり、生まれてきた赤ちゃんは母親が刺繍やらお守りやらを沢山つけて元気に育つように完全武装だった。

布支度

刺繍された布とカルククの姪であるティレケ

女性は結婚適齢期の前から、布支度という仕事をし始める。
布支度というのは、結婚の時に持参する日常的に使うものを作るだけでなく刺繍を施す作業でる。これの出来により嫁の善し悪しが決まるので、母親は嫁に行った先で娘が恥をかかないように一生懸命教えるのである。
櫛入れのような小さいものから、シーツのような大物までその種類は様々であり100種類ほどある。その中でも際だって絢爛豪華に仕上げないといけないのは、自分が着る花嫁衣装だ。これで近所の人にいい嫁が来たかどうかの判別をつけられる。
また刺繍にはお守りの意味もあり、生まれてくる子供のために魔除けの刺繍を入れることもある。

女性の仕事

アミルは半遊牧民族であったので馬に乗り弓を使うことができるし、ライラとレイリは素潜りをして魚や貝を捕り、たまにはガラスを拾って市場へ持って行き家計の足しにしている描写がある。
そのほかにもこの土地の女性は自分の作った刺繍のされた雑貨を売って家計の足しにしたり、育児、家事の他に家畜の世話など仕事は山のようにあり、休む暇はない。
それでも家の中の長は父親であり、父親が駄目と言ったものは誰がなんと言おうと駄目なのだ。

『乙嫁語り』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

民族間の違い

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