英国王のスピーチ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

幼い頃から吃音というコンプレックスを抱え、人前に出ることが苦手だった英国王ジョージ6世。言語療法士のライオネルは独自の練習法で彼に自信をつけさせていく。コンプレックスを克服し王として成長していくジョージ6世の姿と、ライオネルとの身分を超えた友情を、史実に基づいて描いた歴史ドラマ。
第83回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞の4部門を受賞。監督はトム・フーパー。

本作で描かれているのは第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時代である。世界恐慌により国民は貧困に苦しみ、ドイツではヒトラーが頭角を現し始める。そんな時代に演説で人々の心を掴んだのが、ジョージ6世の父であるジョージ5世だ。
ラジオの普及も相まって、国王の言葉が重要な意味を持ち始めた時代に、英国史上最も内気な王、ジョージ6世は生まれた。王家に生まれたが故に背負わなければならない運命と、それを受け入れ、立ち向かい成長していく姿が感動のスピーチを生み出したのだ。
『英国王のスピーチ』の名言・名セリフ
「すてきな吃音、幸せになれそう。」

この作品は様々な側面を持っている。大戦の勃発する時代の歴史ドラマであり、一人の人間の成長物語であり、身分を超えた友情の物語でもある。そしてもう一つ忘れてはいけないのが、ジョージ6世とエリザベス妃の愛の物語だ。
王位を継ぐこととなったジョージ6世は、「王としてやっていく自信がない」と妻の前で思わず泣き崩れる。そんな夫に妻は、プロポーズを2回も断ったのは王族の暮らしが嫌だったからだと打ち明ける。そしてそれでも受けたのは「すてきな吃音、幸せになれそう」と思ったからだと話すのだ。夫のすべてを愛し、支えていこうという妻の深い愛情を感じられる一言である。
見どころ

本作の見どころはなんといってもラストのスピーチである。それまでの主人公の苦しみ、努力、そして冒頭の何も話せなかったスピーチを思い出すと、彼を応援したくなる。
不安定な時代に生きる国民たちは、霧の中の道しるべとして王の言葉に懸命に耳を傾ける。弱気だった王は、家族に支えられ、友に支えられ、国民のために語り掛ける。その姿、言葉のひとつひとつが胸に刺さる。言葉の力というものを感じられる素晴らしいシーンだ。
『英国王のスピーチ』のエピソード・逸話

自らも吃音症である脚本家のデヴィッド・サイドラーは、この物語を30年以上前から企画していた。しかしジョージ6世の妻であるエリザベス妃が「自分の存命中は公にしたくない」と訴え、この物語が世に出ることはなかった。
ライオネルの孫マークは、遺品の整理中に祖父とジョージ6世との往復書簡を大量に見つける。撮影に取り掛かる直前だった製作スタッフはこの資料を手に入れ、より真実に近い物語にするため脚本を修正した。
こうして長い年月をかけて作られたこの作品は数々の賞を受賞し、サイドラーはアカデミー賞脚本賞を受賞。73歳での受賞は最年長記録となった。
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